輸送の経験が勝敗を分ける一因になった?
文/編集部(T)、写真/川井博
もはや何回聞いたか分からない
「今年の4歳馬は強い」というフレーズ。
カンパニーが8歳でG1を2勝して、
「高齢馬が強い」と言われていたのはわずか1年と少し前のことで、その頃から比べると、
隔世の感さえある。
このレースで1番人気に推された
ラフォルジュルネも、小倉の芝で500万~準OPを
3連勝した
4歳牝馬だった。
しかし、このレースは、「やっぱりここでも4歳馬が強かった」とはならなかった。
ラフォルジュルネは
⑮着に敗れ、他にも4歳馬は
3頭が出走していたが、
シンメイフジの④着が最高着順だった。
逆に、
①着の
ナリタクリスタルは
5歳、
②着シャドウゲイトは
9歳、
③着アンノルーチェは
6歳で、ベテラン勢が底力を発揮する結果となった。
人間の肉体的なピークは
20歳前後で、それ以降は徐々に衰えていくと言われる。しかし、野球やサッカーをはじめ、
30代の選手が活躍するスポーツも多い。ゴルフや騎手の世界では、30代はまだまだ中堅と言えるだろう。
活躍を続けるベテラン選手に対しては、しばしば
「年齢を重ねても活躍できるのは、肉体を経験でカバーしているからだ」という論評がされる。確かに、個人差はあっても、どんな人間でもいつか肉体は衰えるもので、
経験がそれをカバーする面があるのは間違いないだろう。
なぜこんな話をしたかというと、今回のレースの結果には、
“輸送の経験”が関わっていたのではないか、と思ったから。
今年の
中京記念は
1週遅れでの開催となったが、勝った
ナリタクリスタル、1番人気の
ラフォルジュルネも含め、出走馬の多くは
小倉から一度トレセンに戻っている。
長時間の輸送が原因で起こる“輸送熱”という症状があるが、そこまで重症にはならなくても、
輸送は競走馬の肉体と精神に大きな負担を与える。
ラフォルジュルネは、先述の3連勝時に
栗東~小倉の往復を
3回こなしてはいるが、もっとも出走間隔が短くても
中2週だった。
2週連続での栗東~小倉の輸送は、
4歳牝馬にとって負担が大きかったのかもしれない。
それに対して
ナリタクリスタルは、昨年は
中京、
小倉、
新潟、
中山と、輸送を繰り返しながら戦績を重ね、中京開催の
小倉大賞典で②着、小倉で
準OP勝ち、
新潟記念①着と、好成績を残してきた。
ナリタクリスタルは
道悪での好走歴もあって、さまざまな
経験値が他馬に比べて一枚上だったのではないだろうか。
トップハンデの58kgを背負って②着に入った
シャドウゲイトは、
小倉競馬場に滞在して調整を続けていた。同馬は、道悪での
シンガポールのG1を制しているほどで、雨で重くなった馬場状態もお手のものだった。
「亀の甲より年の功」ということわざがある。年長者の経験には大きな価値がある、という意味だが、
経験は時として肉体をカバーするだけでなく、それ以上の働きをすることもあると、改めて思い知らされたレースとなった。