ブリッツェンは「まんまじゃない逃げ切り」もできそうだ
文/編集部(M)、写真/森鷹史
逃げ馬がそのまま押し切ると、とかく
「まんまと逃げ切り!」と言われがちだが、中には決して
「まんまと」逃げ切ったわけではないものもある。
淀みないペースで引っ張り、後続の馬たちになし崩し的に脚を使わせ、スタミナを利して押し切るレースがそれで、これは芝でもダートでも時々見られる。
逃げ切りで連勝を収め、重賞初挑戦でタイトルを手中にした
ブリッツェンは、前走(
武庫川S)のレースぶりに関しては
「まんまと押し切った」という感じだった。
同レースは13頭立てで、ハナを奪った
ブリッツェンは
36秒6-49秒1-61秒4というスローペースに落とし、そのまま押し切った。レースの上がり3Fは33秒6で、
2番手に付けた馬が
②着、
3番手に付けた馬が
③着に入り、中団以降の馬たちに出番のないレースだった。
阪神競馬場に外回りコースができたのが2006年12月で、それ以降、
芝1600mでの準OP戦は
13回行われているが、前半のラップは今年の
武庫川Sがいちばん遅い。
【阪神芝外1600m(1600万)の前半ラップ】
| レース名 |
ラップ |
| 07年GホイップT |
45秒7-57秒4 |
| 09年ストークS |
46秒4-57秒8 |
| 10年ストークS |
46秒4-58秒2 |
| 10年尼崎S |
46秒6-58秒5 |
| 08年GホイップT |
46秒7-58秒7 |
| 10年武庫川S |
47秒0-59秒1 |
| 07年道頓堀S |
47秒3-59秒3 |
| 09年武庫川S |
47秒6-59秒6 |
| 06年GホイップT |
47秒6-59秒8 |
| 10年西宮S |
47秒9-60秒3 |
| 09年GホイップT |
48秒3-60秒4 |
| 08年武庫川S |
49秒2-60秒9 |
| 11年武庫川S |
49秒1-61秒4 |
1000m通過が
61秒0を超えたのは今年の
武庫川Sだけだ。
このコースでの
重賞は
23回行われているが、前半の1000mの通過が
61秒0を超えたのは
3レースだけで、それは08年&09年の
チューリップ賞と昨年の
阪神JF。
古馬の重賞では記録されていないばかりか、3歳馬の
アーリントンCでもそのような例はない。
ブリッツェンは、今回のレースでは、
前回のようにはいかないだろうと思われた。
その予想通りに、
ブリッツェンはハナを取ったものの他馬にも来られ、
前走のようなスローペースに落とすことはできなかった。
それでも先頭を守りきって4コーナーを回ると、直線に入っても脚を伸ばし、
ライブコンサートや
キョウエイストーム、
スマートステージの追い込みを凌ぎきってみせた。
走破時計の
1分33秒3は、前走の
武庫川Sのそれ(1分35秒0)より
1秒7も速かった。マイル戦での走破タイムが1分33~34秒台の時は[0.3.0.5]という成績だったので、
ブリッツェン自身が
成長力を見せたと言える結果だった。
では、今回のレースラップは、
阪神芝外1600mの重賞としてはどれほどのものだったのか。牝馬限定を除く重賞(10レース)で、1000m通過の速い順で並べてみよう。
【阪神芝外1600m(牝馬限定以外の重賞)の前半ラップ】
| レース名 |
ラップ |
| 07年マイラーズC |
46秒6-58秒2 |
| 08年アーリントンC |
46秒7-58秒4 |
| 10年マイラーズC |
46秒8-58秒6 |
| 08年マイラーズC |
47秒2-58秒8 |
| 07年アーリントンC |
47秒0-58秒9 |
| 11年アーリントンC |
47秒3-59秒1 |
| 09年アーリントンC |
46秒8-59秒2 |
| 11年ダービー卿CT |
47秒6-59秒4 |
| 10年アーリントンC |
48秒4-59秒6 |
| 09年マイラーズC |
48秒3-60秒2 |
今回の
ダービー卿CTは
10レース中8番目で、ラップ自体は今年の
アーリントンCより遅い。重賞レースとしては、今回のレースは、
「淀みない流れで後続に脚を使わせて押し切った」とまでは言えないものだろう。
ただ、次走以降のことも想定して話を続けると、
ブリッツェンは、将来、
後続に脚を使わせて押し切る競馬もできるようになるのではないか、という
予感もしている。というのも、決して
スタミナがない血統ではないからだ。
父スペシャルウィーク×
母父カーリアンという配合は、ご存知
ブエナビスタと同じ。同じくスタミナ型ノーザンダンサー系を母父に持つ同産駒としては、
シーザリオ(
母父サドラーズウェルズ)もいる。
同じ牡駒の先行型マイラーとしては
ファイアーフロート(母父タバスコキャット)がいて、同馬はいわゆる
「淀みない流れで引っ張って踏ん張るタイプ」だ。
ブリッツェンは
ブエナビスタと同じく
ニジンスキーのクロス(4×3)を持っているのだから、血統的には
「踏ん張る競馬」も大いにできそうだ。
今後は、
「まんまじゃない逃げ切り」を見てみたいものだ。そんなレースを連発されても驚かないように、こちらはその
成長力にきちんと付いていくようにしないといけませんね。