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これで、主役候補としての地位を確立したと言ってもいいだろう
文/浅田知広、写真/森鷹史

ゴールした瞬間は「また福永騎手なのか!」と思った大阪杯。結果はハナ差でその福永騎手ダークシャドウではなく、藤田騎手ヒルノダムールに軍配が上がったが、なんにしても乗れているときというのは恐ろしい。そして、今年の4歳世代の力、勢いというのもまた恐ろしい。

先日「ワールドサラブレッドランキング」が発表され、日本馬の最上位は第4位・127ポンドナカヤマフェスタだった。セントライト記念優勝後はふた桁着順2回、という成績だったこの馬。まさかこんなランキングの上位に名前を出すようになるとは、あるいは宝塚記念を勝つことすら想像だにしていなかった人も少なくなかったのではないだろうか。しかし、宝塚記念を勝ち、凱旋門賞で②着。あっという間に超一流馬の仲間入りである。

そして、その凱旋門賞に出走し、⑦着に敗れていたのがヴィクトワールピサ「強い」と言われる現4歳世代で、確かに3歳春の主役ではあった。ただ、この経験を糧にしてさらに強くなったのかという、有馬記念ドバイワールドCの優勝だ。そんなタイミングでの「ワールドサラブレッドランキング」の発表で、失礼ながら、あれ、日本馬の最上位はナカヤマフェスタか、と。

もちろん、ヴィクトワールピサ快挙に沸いた直後のことだった、ということがいちばん。これに加え、そのヴィクトワールピサも含めた現4歳世代による昨秋以降の活躍があまりにも強烈だった、というのも非常に大きい。なんとめまぐるしい1年だったことか。

そんな4歳世代で、いわゆる「物差し」としての役割を果たしていた、いや、果たしかけていたのが、この大阪杯を制したヒルノダムールだったと思う。

クラシックは皐月賞②着、ダービー⑨着、菊花賞⑦着と、皐月賞好走こそあったものの、その後がちょっと物足りないかな、という成績。ただ、そういう馬でもその後のG2G3で相手が軽くなってあっさり勝つ、ということも例年なら少なからずあるものだ。

しかし、なにせ強いこの4歳世代鳴尾記念日経新春杯ルーラーシップの②着になり、前走・京都記念ではトゥザグローリーの③着。同じ世代のローズキングダムダノンシャンティといったG1馬に先着しているのだから悪くない、安定して走っているのだから悪くない。悪くはないが、レーティング算出の基準という、ちょっと地味な役回りを担いつつあった。

さて、そんなヒルノダムールがこれから主役候補の一角になれるのか、という大阪杯。同期のエイシンフラッシュダノンシャンティ、さらにはドリームジャーニーキャプテントゥーレとG1馬が揃い、相手が大幅に軽くなったわけでもないのだが、それでもファンの支持は1番人気だった。そして結果は、冒頭の「また福永騎手なのか!」という態勢もあった中、クビの上げ下げをなんとか制して待望の重賞勝ちだ。

過去4回の1番人気では[1.3.0.0]で勝ったのは未勝利戦。馬券の連軸には良くても、主役候補としては少し物足りない印象の成績だった。逆に言えば、「人気に応えて勝つ」という結果を残したこの大阪杯で、主役候補としての地位を確立したと言ってもいいだろう

あれこれ言えば、他の有力馬より軽い57キロだったとか、レコード決着で上がりが少々かかったのが良かったとか、外回りよりは直線の短いコースのほうが切れ味負けしなさそうだ(札幌記念のようにゲートが悪くなければ)とか。

しかし、本当に勝てない馬というのは、どんなメンバーや条件になっても②着、③着だったりするもの。「勝てる競馬」があることを証明しただけでもまったく違う。

ともかく、これで主役候補に躍り出たヒルノダムール。この勝利をきっかけに「候補」から一気に「主役」にまで駆け上がれるのか。この1年を見ていると、年末あたりには「そういえばヒルノダムールって春までは……」なんて思っていたりするのかもしれない。