ダンチヒ系の奮闘ぶりは大いに評価したくなる
文/編集部(W)、写真/森鷹史
頭荒れだった
ニュージーランドTと言えば、03年と02年。前者は
エイシンツルギザン(7番人気①着)が
サクラバクシンオー産駒初の芝1600m重賞制覇ということで印象深かったし、後者は
タイキリオン(11番人気①着)の
走破時計が1分32秒1と高速だったこともあって衝撃的だった。
インパクトの大きさで、その2レースの上をいくのが07年。芝で未勝利だった
トーホウレーサー(11番人気①着)が好位から押し切り、シンガリ人気(16番人気)だったマイネルフォーグが②着、③着にも8番人気と人気薄の
ワールドハンターが食い込み、
3連単で490万4740円という超高額配当が飛び出したのだった。
その07年は3連単で②着の
マイネルフォーグが
ヌケだったような記憶があるが、
トーホウレーサーは①着で買っていた。というのは、その前年の
京成杯AH(同じ中山芝1600m重賞)において、10番人気だった同じ
ダンチヒ系の
ステキシンスケクンが逃げ切り勝ちしていたのを憶えていたからである。
「ニュージーランドTはダンチヒ系が頭荒れを演出する」のではなく、
「中山芝1600m重賞はダンチヒ系が頭荒れを演出する」ものだと思っていた。ところが、舞台を阪神芝外1600mに移して行われた今年の
ニュージーランドTでも、
ダンチヒ系の頭荒れが起きることとなった。
勝ったのは12番人気の伏兵
エイシンオスマン(父
ロックオブジブラルタル)。12番人気というのは勝ち馬の中で、前述の
タイキリオン、
トーホウレーサーを抜き、レース史上もっとも低い人気だった。
レースは、外からハナを奪った
リキサンマックスが後続を離して逃げる展開。ただ、見た目の印象(?)ほどペースは速くなく1000m通過は
59秒9。これを離れた2番手で追走していた
エイシンオスマンは
スローペース、さらにそこから離れていた3番手以下は、超がつく
スローペースだったと言える。
その流れの中、残り2Fを過ぎてから先頭に踊り出た
エイシンオスマンは、そのまま脚色が衰えることなく
坂を駆け上がり、猛然と迫る後続の追撃を振り切って先頭で
ゴールイン。
幸騎手のペース判断、位置取り、仕掛けのタイミング……すべてが
絶妙に思えたが、
1馬身1/4差をつけての完勝は馬の力があってのものだろう。
エイシンオスマンは
2010年ブリーズアップセールにおいて、
3150万円(税込)という最高価格で落札されていた馬で、ポテンシャルを秘めていたということだろう。それにしても、
ブリーズアップセールで最高価格で落札された馬には2008年の
セイウンワンダー(
2730万円・税込)もいて、よく走る。
一方、上位人気グループは1番人気の
グランプリボスが僅差の③着に食い込んだものの、2番人気の
ダノンシャーク、3番人気の
ラトルスネーク、4番人気の
リアルインパクトは
スローペースもあり、
差し届かず⑦着、⑩着、⑪着に敗れることとなった。
グランプリボスは1800mだった前走の
スプリングSから1F短縮され、
「G1を制したマイルなら」と期待されての1番人気だったように思うが、
スローペースだったせいか道中は終始
掛かり気味。それでも、上位人気グループの中で、唯一、上位争いに加わったのは、さすが
2歳王者という印象を受けた。
ちなみに、現3歳世代の
重賞は日曜日の
桜花賞までを含め、27レース行われたが、7番人気以下で③着以内に入ったのはのべ20頭。そのうち、
サンデー系が6頭で1位、
ダンチヒ系が5頭で2位だった。7番人気以下で③着以内に入った
ダンチヒ系は以下の通り。
新潟2歳S
マイネルラクリマ父
チーフベアハート10番人気②着
京成杯
プレイ父
ロックオブジブラルタル7番人気③着
アーリントンC
キョウエイバサラ父
Aussie Rules11番人気②着
弥生賞
プレイ父
ロックオブジブラルタル7番人気②着
ニュージーランドT
エイシンオスマン父
ロックオブジブラルタル12番人気①着
大所帯の
サンデー系と比べれば、
ノーザンダンサー系の一派で、頭数もそれほど多くない
ダンチヒ系。それがこれだけ
重賞で
穴を演出しているのだから、
ニュージーランドTの
エイシンオスマンをはじめ、
現3歳世代の重賞戦線におけるダンチヒ系の奮闘ぶりは大いに評価したくなる。
賞金を加算し、5月8日に行われる
NHKマイルCの優先出走権も手に入れた
エイシンオスマン。次は
G1の大舞台に挑むことになるだろうが、実は、
ダンチヒ系は第2回(97年)以降の
NHKマイルCで馬券圏内が一度もない。
これは
向かい風が強いかと思いきや、記念すべき第1回(96年)の
NHKマイルCでは
タイキフォーチュンが勝利した中、②着
ツクバシンフォニー、③着
ゼネラリスト。
デインヒル産駒のダンチヒ系2頭が
セットで馬券圏内に入っていたりもする。
「15年の時を経て、いよいよダンチヒ系のお目覚めじゃ!」などと戦国武将風に声を上げたところで、耳を傾けてくれる人はいないかもしれませんが(笑)、
NHKマイルCでも
エイシンオスマンをはじめとする
ダンチヒ系を気にしておきたいと思っている次第です。