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単純に前走成績を考えた、友人の勝ちだった
文/編集部(T)

レースが終わった後、学生時代の友人から「福島牝馬Sの馬単を的中させた」というメールが届いた。自分は外していたので、「なぜこの馬券を買えた?」と返信したところ、帰ってきた返事はひと言、「簡単だったよ」だった。

一瞬、「は?」と思い、配当を確認すると、①着のフミノイマージン9番人気、②着コスモネモシン5番人気で、馬単の配当は1万2480円になっていた。

この馬券が簡単とは、聞き捨てならない。さらに深く聞こうとメールを送り返したが、なかなか返事が来なかった。そこで、自分なりに「どこが簡単だったのか?」を推理してみることにした。

このレースは、出走馬16頭のすべての馬が前走の騎手から乗り替わりという、珍しいメンバー構成となった。コスモネモシンジュエルオブナイルオウケンサクラシンメイフジといった重賞勝ち馬を向こうに回し、1番人気に推されたのは、3走前の府中牝馬Sで③着はあるが、準OP勝ちのないスマートシルエットだった。

馬券を検討する上で参考となる要素は、非常に多い。確固たる予想スタイルが確立している人も多いだろうが、自分はレースによって重要だと感じたポイントを中心にして予想することにしている。そう言えば聞こえはいいが、言い換えると“気分次第”だ。

そういうスタイルなので、自分がこのレースを予想する上でまず目が行ったのは、「福島から新潟に場所を移して開催される」ことだった。そうなると、自然と新潟実績に注目したくなる。このコースで1戦1勝、それを含めて新潟芝で2戦2勝のスマートシルエットに目が行くのは自然の流れだった。

ただ、ここでひとつ言い訳をしておくと、そう考えたのは自分だけではなかったはずだ。実績的には少し劣るスマートシルエットが1番人気に推されたのは、「新潟開催」に目が行った人が多かったからだろう。

しかし、結果は16頭中13頭を占めた4歳馬を下し、5歳馬のフミノイマージンが勝利。②着コスモネモシン、③着ソウルフルヴォイスまで、新潟で勝利どころか出走経験すらない馬が上位に入線した。ちなみに、フミノイマージンコスモネモシンは、左回りでの勝ち鞍すらない

フミノイマージンは中団の内を追走し、直線に入ったところで馬群を割って抜け出すと、2馬身差をつけて快勝した。前崩れの展開になったとはいえ、メンバー中1位の上がり33秒3は素晴らしい切れ味で、次走以降にも十分に期待が持てる強さだったと言えるだろう。

鞍上の太宰騎手も、14年目で初の重賞制覇。先述したように出走メンバー全馬が乗り替わりだったが、フミノイマージン太宰騎手のコンビは、その中で唯一の勝ち星を挙げているコンビだった。

友人が「簡単だった」と言ってきたのは、そういった騎手のデータか、あるいは血統かといろいろ考えを巡らしてみたが、しばらく考えても答えが出そうになかったので、友人に答えを急かした。すると、またひと言、「前走成績が良かった馬を買っただけ」という返答が返ってきた。

ハッとして前走成績を見ると、フミノイマージン中山牝馬S②着コスモネモシン③着。今回のメンバーのうち、前走を重賞で走って馬券圏内に入っていたのはこの2頭しかいなかった。

恥ずかしながら、友人に言われるまで気づかなかった…。友人にしてみれば、この2頭が9番人気5番人気だったのが不思議にすら思えてくるほど、簡単な馬券だったのだろう。

最後のメールの「だけ」の後に、「なんでこんな簡単な馬券を買えなかったの?」と言っているような気がしたのは、気のせいだろうか。何にしても、このレースは単純に考えた友人の勝ちだったようだ。