自転車の乗り方と同じように、ストロングリターンは東京芝1400mの走り方を覚えていた!?
文/編集部(M)、写真/川井博
4年連続で馬連が万馬券決着となっていて、
荒れる傾向の強い京王杯SCだが、今年は馬券圏内が4番人気以内の馬で収まり、
堅い決着となった。
ただ、「4番人気以内の馬」と言ってもそれは4番人気(
ストロングリターン)、3番人気(
シルポート)、2番人気(
ジョーカプチーノ)で、
1番人気馬はまたも馬券圏外となった(1番人気の
サンカルロは⑨着)。これで
京王杯SCの1番人気は、
00年以降で[0.0.2.10]という成績だ。
00年以降の芝重賞で、1番人気馬がこれだけ連対圏に入れていないのは
京王杯SCだけになる。
06年からハンデ戦となった
CBC賞、
マーメイドS、
ラジオNIKKEI賞の3レースで、いずれも1番人気が連対圏に入れていないが、この中で1番人気の連外の最長記録は
CBC賞の
8年。
京王杯SCはこれを上回る
12年を記録している。
これだけ1番人気が信頼できないのは、「メインレースの考え方」にも記した通り、
東京芝1400mの特殊性にあると思う。
「メインレースの考え方」には、『97~99年には1番人気が3連勝をした』と記したが、その3頭は
タイキブリザード、
タイキシャトル、
グラスワンダーで、
タイキシャトルと
グラスワンダーは当時すでに
G1を2勝していて、
タイキブリザードは
G1での②着を3度記録していた(前年の
安田記念ではハナ差の②着)。
その3頭以前に1番人気で
京王杯SCを制した馬を振り返ると、86年以降では、94年の
スキーパラダイス、88年の
ダイナアクトレス、87年の
ニッポーテイオーの3頭が該当する。当時と今とでは、評価に多少の違いが生じるだろうが、
かなりの実力馬でもない限り、
このレースを1番人気で制するのは至難の業ということなのだろう。
「メインレースの考え方」では、
東京芝1400mで好走率の高いタイプを軸に据える方法を推奨したが、結果的に、今年もこれが当てはまる形となった。
優勝した
ストロングリターンは
[1.1.0.0](連対率100%)という成績で、②着の
シルポートは
[2.0.0.1](連対率66.7%)。ハナ+クビ差という大接戦でも、コース実績の良い馬が連対圏を占めたので、なんだか不思議な気持ちになった(同じく連対率100%だった
ガルボと
フィフスペトルは掲示板外に敗れたが…)。
シルポートは
芝1400mを走るのが
1年8ヶ月ぶりで、
ストロングリターンは2走前にこのコースの準OPで②着になっていたが、前走は
阪神芝外1800mで走っていた。2頭はいずれも
距離短縮での左回り替わりだったわけだが、そんな変化に動じる感じはまったくなく、レースを走りきった。
「自転車の乗り方は大人になっても忘れない」というのと一緒で、
「東京芝1400mの走り方はコース替わりでも忘れない」ということか?
戦前は、OPクラスで⑥④③⑥着の
ストロングリターンを上位人気に推して大丈夫なのだろうかと不安に感じたものだが、ファンのみなさんの評価の方が正しかったようですね。
ストロングリターンは3歳時の
ラジオNIKKEI賞で③着(2番人気)となっているが、その時は道中でスムーズさを欠いて差し届かなかったものだ。その
強さを覚えていて、後の重賞でも好評価をしている人が多いのかもしれない。
昨夏の
エプソムCでは0秒2差届かずの⑥着に敗れたが、今回、
G2勝利を挙げ、まさしく
『ストロング、リターン』といったところだろう。馬名の本来の意味は、
『強い返球(テニス用語)』らしいですけどね(笑)。
ストロングリターンは
東京芝1600mでも
[2.1.1.1]という成績を残していて、
安田記念が行われる
東京マイルの走り方も熟知している可能性がある。2走前には阪神芝外1800mでも勝ち鞍を挙げていて、マイル以上のスタミナが求められやすい
東京芝1600mのG1でも好走できる下地は調っていると言えるだろう。ポイントは、
シンボリクリスエス産駒が中央の芝G1で[0.1.2.26]とまだ勝ち馬が出ていないことか。
京王杯SCの勝ち馬は、00年以降だと昨年の
サンクスノート以外が次走に
安田記念に出走していて、05年の
アサクサデンエンが連勝で戴冠を果たしているものの、それ以外の9頭は馬券圏外に敗れている。
1番人気が不振の
京王杯SCを制した
ストロングリターンは、今度は、
京王杯SC勝ち馬が不振の安田記念に挑むわけだが……果たしてこのデータを
強い返球で覆すことはできるだろうか。