実績馬をまとめて下し、アイアムアクトレスが“ダート王座”に
文/編集部(T)、写真/川井博
「現在、サッカーの日本代表は世界一の座にいる」と聞くと、「何言ってんだ?」と思う人もいれば、「へえ、すごいね」と思う人もいるだろう。中には、「ああ、あのネタね」と思う人もいるかもしれない。
ネタばらしをすると、
ボクシングのチャンピオン形式で「非公式サッカー世界チャンピオン」を決めるイギリスのウェブサイト(http://www.ufwc.co.uk)があるのだが、そこで
日本代表が昨年10月からチャンピオンの座をキープしている、という話。ただ、この“チャンピオン”は、信憑性は不明だが、なんと1872年から逆算して決められている、由緒正しい(?)ものだ。
日本代表がチャンピオンになった経緯を簡単に説明すると、こうなる。昨年のワールドカップ開幕の時点で「世界チャンピオン」だった
オランダが、決勝で
スペインに敗れてその座を譲り、
スペインは昨年9月の親善試合で
アルゼンチンに敗れた。そして、
日本は
アルゼンチンに10月の親善試合で勝ったため、チャンピオンの座についた、というわけだ。
その後、
日本は負けていない(ボクシングと同じく、引き分けで王座は移動しない)ため、現在も
日本がチャンピオンということになる。
日本は6月7日に
チェコと対戦するが、ここで負けなければ、さらに王座が継続することになる。
なぜこんな話をしたかというと、
ユニコーンSを勝利した
アイアムアクトレスは、このレースで現時点でのダートOPと交流重賞勝ち馬をまとめて負かし、
“現時点でのダートチャンピオン”となったからだ。(もちろん3歳限定のチャンピオン)
昨年、中央で2歳のダートOPは開催されなかった。2歳の交流重賞を勝ったのは
リアライズノユメ(
エーデルワイス賞、
兵庫ジュニアグランプリ)、
カネマサコンコルド(
北海道2歳優駿)、
ビッグロマンス(
全日本2歳優駿)の3頭で、このうち、
リアライズノユメと
カネマサコンコルドは
全日本2歳優駿で
ビッグロマンスに敗れている。
一方、明け3歳以降のダートOPと交流重賞勝ち馬を見ると、
ラヴィアンクレール(
ヒヤシンスS)、
グレープブランデー(
いぶき賞)、
エーシンブラン(
兵庫チャンピオンシップ)、
アイアムアクトレス(
昇竜S)の4頭がいる。このうち、
ラヴィアンクレールは
兵庫チャンピオンシップで
エーシンブランの③着に敗れている。
そして、
ビッグロマンス、
グレープブランデー、
アイアムアクトレス、
エーシンブランと、“暫定チャンピオン”が集ったこのレースで勝った
アイアムアクトレスが、
晴れてチャンピオンに輝いた、というわけだ(
グレープブランデーは②着、
エーシンブランは⑨着、
ビッグロマンスは⑬着)。
競馬はコース、距離など、さまざまな条件があるので、サッカーほど簡単に勝ち負けを決められるものではないし、ここまでは半分冗談だが、牡馬をまとめて下した
アイアムアクトレスの勝ちっぷりもまた、
チャンピオンにふさわしいものだった。
レース内容を見ると、前半800mは46秒4で、05年以降では2番目に速いペースを先行して、②着以下の上位馬は差し馬が占める展開を押し切った。出走メンバーのこれまでの戦績を考えると、その価値はさらに高まるだろう。
アイアムアクトレスはこれまでダート1400mで3戦3勝という成績を残していたが、200mの距離延長も克服して、
ダートで無敗の4連勝となった。
では今後、
アイアムアクトレスは“チャンピオン”としてどんな競馬を見せてくれるだろうか。
ユニコーンSは、96年
シンコウウインディ、97年
タイキシャトル、98年
ウイングアロー、99年
ゴールドティアラ、00年
アグネスデジタル、03年
ユートピア、05年
カネヒキリと、今年で16回目となる歴史の中で、
7頭のG1馬を出している。
「出世レース」であることは、
アイアムアクトレスにとって心強い。
また、
アグネスタキオン牝馬が中央のダート重賞に出走したのは、意外にもこのレースが初めて。付け加えると、
アイアムアクトレスが制した
昇竜Sは、
アグネスタキオン牝馬による初めてのダートOP勝ちだった。
今後はさらに距離を延ばしていくのか、これまで通り短距離~マイルで戦績を積んでいくのか。
阪神牝馬Sを制した全姉
アイアムカミノマゴは1600m以上に距離の壁を感じさせる馬だったが、
アグネスタキオン牝馬に立ちはだかっていた
「ダートの壁」をいくつも崩してきた妹は、まだまだ壁を破っていけそうな感じもする。
いっそのこと、
牝馬によるJRAダートG1初勝利の期待もかけたくなるが、個人的には、先述した
“現3歳世代のダートチャンピオン”の行方にも注目したいと思っている(笑)。