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空前の珍記録だが、レースぶりは非の打ち所がないものだった
文/石田敏徳、写真/川井博

ダービーも終わって新たなドラフトがたけなわとなっていくこの季節。昨年の桜花賞のときにサラブレ本誌のインプレでも書いたけど、アパパネ我がPOGの所有馬だった。

我が家の地デジ化アパパネが稼いでくれた“チョコレート”によって果たされた。BDレコーダーも買っていただいた。ホント、足を向けては寝られない大恩がある馬なのである。まあ、その反動が出たのか、現3歳世代のPOG成績はズタボロでしたが。

で、そのアパパネが単勝オッズ2.2倍と断然の1番人気に支持された安田記念。実はヴィクトリアマイルの後、「次走は安田記念の予定」と聞いたときから、アパパネは蹴飛ばして買おうと心に決めていた。

ブエナビスタと壮絶な死闘を演じたヴィクトリアマイルは、個人的には今年のベストバウトレースだと思っているが、それだけに中2週の間隔で挑む安田記念では、その反動が出てもおかしくないと睨んだからである。

安田記念の前まででは、通算成績は12戦7勝、このうち実に6戦5勝というG1成績が示すように“ここ一番に強いオンナ”アパパネだが、前哨戦はソコソコ→本番で完全燃焼というのがこれまでのパターン。

本番の次にもうひとつ本番が控えていたというケースは、「桜花賞(①着)→オークス(①着)」「秋華賞(①着)→エリザベス女王杯(③着)」がそれにあたると思われるけれど、前者のレース間隔は中5週で、中3週の後者では着順を落としている。

1回目の本番(ヴィクトリアマイル)で、同じ3歳牝馬が相手だった秋華賞よりはるかにタフなレースをしたうえに、中2週の間隔で2回目の本番を迎える今回は、まさに絶好の蹴飛ばし頃と考えたわけだった。

ちなみに、レース後の蛯名正義騎手によると、「今日は牡馬に負けたというより、中2週のローテーションに負けたという感じ。レースを終えて引き上げてくるときには、フラフラになって歩いていたからね」とのこと。やっぱりというべきか、激闘の疲労が抜けきっていなかったのだろう。

こうして、アパパネを買わないという方針は早々に決まっていたものの、混戦の霧に包まれて久しい日本のマイル界。じゃあ、何を買うのかという方針のほうはサッパリ定まらないまま迎えたレースでは、「どんぐりの背比べ状態の日本馬を買うぐらいなら」と考えて、香港ビューティーフラッシュを買ってみたのだが、ううむ、3歳馬に勝たれるとは、「その手があったか!」という感じ。“既成勢力は買わない”という方針自体は合っていたので、微妙に悔しい。

とはいえリアルインパクトは、やっぱり買いづらいところですよね。なにしろこれまでに挙げた勝ち鞍新馬戦の1勝のみという1勝馬。古馬のG1を1勝馬が制したのは、84年のグレード制導入以降では初という空前の珍記録で、今後もいつお目にかかれるか分からない。

しかし、緩みなく流れたペースの好位追走から早めに抜け出し、後続の追撃を封じたレースぶりは非の打ち所がないものだった。

レース後、堀宣行調教師「この春3戦目というフレッシュな状態でレースを迎えられたことに加え、古馬との斤量差(牡セン馬とは4キロ差、牝馬とは2キロ差)も大きかったと思います」勝因を分析していたが、ゲートの中でチャカついて出遅れてしまった前走の経験を踏まえ、この中間はゲート練習を積んでレースに臨んだこと、また、それを実らせて好スタートを決め、スムーズに流れに乗った戸崎圭太騎手好騎乗も見逃せない。

そのスタートに示されているような、3歳馬ならではの吸収力と上昇力を発揮して古馬の壁を突き破ったということなのか、あるいは3歳の1勝馬に易々と突き破られてしまうほど、古馬の壁が薄かったのかという疑問の答えについては、もう少し様子を見る必要がありそうだが、いずれにしても、このリアルインパクトが一度も先着できていない(直接対戦成績は0勝4敗)のだから、グランプリボスが相当な力を秘めていることは確かだろう。

気の早い話だが、秋のマイル戦線「アパパネVS3歳馬」という図式のもとに進行することになりそうだ。