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「伝説の末脚」を繰り出した、シルクフォーチュンの前途は洋々!
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也

目が覚めるような末脚とは、まさにこのプロキオンSシルクフォーチュンが見せたような末脚のことを言うのだろう。梅雨が明けたばかりのこの日の京都は、気温が40度近くまで上がったそうだが、観戦に行った人は「いいものを見た」という気分だったのではないだろうか。

道中はシンガリから追走したシルクフォーチュンは、4コーナーでも14番手と、普通に考えれば絶望的な位置にいた。自分がもし馬券を持っていたら、破り捨てる準備をしていたかもしれない(持っていませんでしたが)。

しかし、シルクフォーチュンは普通ではなかった。そこから馬群を割って一気に前を交わし、初重賞制覇となるゴールを駆け抜けたのだ。

同馬が記録した上がり3ハロンのタイムはメンバー1位の34秒9で、2位で②着に入ったダノンカモンのそれが36秒2だから、いかに鋭い末脚だったかが分かる。

「ダートでここまでの末脚は、なかなかないんじゃないか?」と思い、調べてみると、90年以降のダート重賞で、4コーナーで14番手以下にいた馬が勝ったのはわずか2回「伝説の追い込み」として有名な00年根岸Sブロードアピールと、00年フェブラリーSウイングアローだけだった。

上がり3ハロンタイムを見ると、ブロードアピールが34秒3、ウイングアローが35秒9だから、シルクフォーチュンの34秒9はブロードアピールに次ぐタイムとなる。

馬群を縫って抜け出してきたので、ブロードアピールが見せたような大外一気のインパクトには若干劣るかもしれないが、このレースも「伝説の追い込み」として語り継がれても良いのではないだろうか。

では、それほどの追い込みを生んだ要因は何だろうか。レースを振り返ると、単勝1.8倍の圧倒的な1番人気に推されたケイアイガーベラが少し押してハナを切り、2番人気のナムラタイタン、3番人気のダノンカモンは好位から進んだ。

レース後、ケイアイガーベラの鞍上秋山騎手「内で揉まれるよりはと思って前に行った」といった趣旨のコメントをしたようだ。確かに、同馬が1000万以上で勝ったレースはすべて馬番8番より外枠で、1000万以上で馬番6番より内枠だと⑩④⑮⑧③着と結果が残っていない。

1番人気、しかも今回は1枠2番と、これまで結果が残っていない内枠ということで、揉まれたくないという意識が働くのは自然なことだろう。しかしその結果、断然の1番人気をはじめとする人気どころが前に行ったことで、競馬が前がかりになった

レースの前半3ハロンは33秒9。01年以降の京都ダート1400mで開催された特別競走で、レースの前半3ハロンが33秒台だったレースは5レースしかなく、この5レースでは4角先頭にいた馬が[0.0.0.5]となっている。

ハナに立ったケイアイガーベラは、残り200mまでは気分良く逃げているように見えたが、そこから失速気味になって2頭に交わされた。その要因としては、このペースが大きかったのではないだろうか。

シルクフォーチュンに話を戻すと、昨秋のOP入り以降は今回と同じように追い込む競馬で⑦④⑨④⑥着と、あと一歩のレースを続けてきたが、OP6戦目での初重賞制覇となった。

01年以降のこのレースの勝ち馬のうち、このレースがダート重賞初勝利だった馬は02年スターリングローズ、05年ブルーコンコルド、06年メイショウバトラー、08年ヴァンクルタテヤマ、09年ランザローテ、そして昨年のケイアイガーベラがいる。

この馬たちのその後の成績を見ると、スターリングローズはJpn1のJBCスプリントを勝利するなど重賞5勝ブルーコンコルド東京大賞典などJpn1を7勝メイショウバトラー交流重賞を8勝ヴァンクルタテヤマ交流重賞を3勝。重賞を勝っていないランザローテ交流重賞②着ケイアイガーベラOPを2勝し、今年もこのレースで③着に入っている。

プロキオンS重賞初勝利を飾り、ダート重賞戦線で飛躍していく、いわば登竜門的な位置づけのこのレースを勝ったシルクフォーチュンは、これからどんなレースを見せてくれるだろうか。

個人的には、今年は東京で開催される南部杯か、大井開催のJBCスプリントで、この日のような鋭い末脚を見せてくれたら痛快だろうな、と思う。