コースは変わっても、馬場の傾向だけは変わらなかった
文/編集部(M)
例年は
阪神競馬場で行われる
プロキオンSが
京都、
福島競馬場で行われる
七夕賞が
中山。今週の2重賞は、施行コースが変わることが注目点のひとつとなったが、個人的には
どんな展開になるかについて難しさを感じていた。
プロキオンSは
ケイアイガーベラの他に
トーホウオルビスや
アーリーロブストなどの先行型が揃っていたし、
七夕賞も
キャプテントゥーレの他に
エーシンジーラインがハナ候補として名前が挙がり、
コスモファントムや
シャドウゲイト、
マゼランなども先行しそうだったからだ。
ペースが予想していたものと異なれば、結果もガラリと変わってしまいそう。そのため、いろいろな
シミュレーションをして臨んだのだが、どちらのレースもスタート直後にすぐに隊列が決まってしまい、
拍子抜けした。
しかも、どちらも1番人気の馬がスッと先行できていたので、
「あ~、つまんないレースになっちゃいそうだなあ」というのが第一感だった。
もし、レースがスタートした後でも
馬券を買うことができるのだったら、
プロキオンSは
ケイアイガーベラからの馬券を、
七夕賞は
キャプテントゥーレからの馬券を
しこたま買い足したことだろう。
「こんな楽な形になって、連対を外すことなんて考えられん!」と鼻息を荒くしていたはずだ。
ブタの貯金箱も壊して、家中のお金をかき集めていたかもしれない。それでも的中しないっていうんですから……競馬は難しいというか、もう
ビックリです。
プロキオンSは
ケイアイガーベラが楽に逃げているように見えて、実はペースが速かったようなので、ゴール前であのような逆転劇が起こっても説明は付くと思う。だが、
七夕賞は前半の1000m通過が
61秒4というスローである。それでも
差し決着になるのだから、今回の結果はペースだけの問題でもあるまい。外差しになっていた
芝の状態も影響したのだろう。
昨年の七夕賞は、前半の1000m通過が
61秒0というスローだったが、やはり外から追い込みの競馬となった。その時に優勝した
ドモナラズは、今回、⑤着まで追い上げていた。掲示板内に入ったのは昨年の
七夕賞以来ということで、このレースに適性があるのだろう。
コースは変わっても、
最終的に変わらなかったのは馬場状態だったと言える。
七夕賞が
夏開催の最終週で行われる限り、
外差し決着になる公算が大きい。そう読むのが正しいのかもしれませんね。
その外差し決着を制したのは、
ハンデ52kgの
イタリアンレッドだった。鞍上の
中舘騎手曰く、「乗り難しいタイプ」とのことだが、スローペースを見越して向こう正面で中団まで上がったように見え(実際は
「持っていかれそうになった」とコメントしていた)、直線でも切れ味鋭く差し込んでいた(実際は
「内に刺さった」とコメントしていた)。
見た目と実際に
ギャップがあったとはいえ、それでも牡馬を一蹴したのだから力がある。今後の
サマー2000シリーズにも期待を抱かせる勝利だったと言えるだろう。
準OPでの勝利(
ムーンライトハンデ、阪神芝2000m)と今回は、ともに
急坂コースでの軽ハンデ(どちらもハンデ52kg)によるものだが、もともとは
夏の小倉で好成績を残してきた馬だ(
夏の小倉は4戦4勝)。平坦コースがマイナスになるはずもなく、斤量も55kgでの勝利経験があるので、ある程度までは切れ味に影響も出ないのではないか。
JRAで
サマーシリーズが始まって以来、
スプリントシリーズのチャンピオンはすべて
牝馬で、
「夏は牝馬」の代名詞となっているが、
2000シリーズのチャンピオンはいずれも
牡馬となっている。この傾向を覆し、
イタリアンレッドが
牝馬で初めての2000シリーズチャンピオンとなれるだろうか。
七夕賞を
牝馬が制したのは88年の
コーセイ以来、
23年ぶりの出来事だった。これに対して、
小倉記念は4年前(07年)に
サンレイジャスパーが優勝しているし、他のサマー2000シリーズ対象レースについても、
函館記念が98年(13年前)に
パルブライトが、
札幌記念は4年前(07年)に
フサイチパンドラが、
新潟記念は3年前(08年)に
アルコセニョーラがそれぞれ優勝を遂げている。
言ってみれば、
イタリアンレッドは、
牝馬にとって最難関とも言える重賞をクリアしたことになる。
牝馬初のタイトル(サマー2000チャンピオン)を手にしても、なんら不思議ではないだろう。