G1級を証明、次は「G1の壁」を跳び越えられるかが目標!?
文/編集部(W)、写真/川井博
「G1に近いG2」と表現されることもある
札幌記念。G2に昇格した97年以降を振り返ってみると、
芝G1でひと桁人気で⑤着以内があった馬が14年中13年で馬券圏内に入っていたことからも、
格がモノを言いやすいレースであることが窺い知れる。
今年の出走メンバーを見渡すと、芝G1でひと桁人気で⑤着以内があるのは
レッドディザイア、
トーセンジョーダンの2頭。格を重視するなら、この2頭を中心に馬券を組み立てるのが
札幌記念の常道と言えた。
さらに踏み込めば、芝G1でひと桁人気で⑤着以内があった馬でも、
前走⑨着以内が[9.6.2.22](14年中12年で馬券圏内)、
前走⑩着以下が[0.1.2.11]となっていたので、
レッドディザイア(前走⑭着)よりも
トーセンジョーダン(前走⑨着)のほうが信頼性が高い存在と言え、1番人気に推されていたのも納得。
結果は、
トーセンジョーダンが好位から抜け出して1番人気で①着、
レッドディザイアはメンバー中最速の上がり(34秒0)を計時して差し込み2番人気で③着。その2頭に割って入ったのが、昨年の
札幌記念で
アーネストリー、
ロジユニヴァース、
ヒルノダムールという強敵に混じって③着に好走していた
アクシオン(5番人気)だった。
一方、8歳を迎えた今年、
目黒記念、
函館記念と重賞連勝中の
キングトップガンが3番人気に推されていた。
「夏は調子」、
「夏は勢い」といった格言も存在するだけに、目下の勢いが評価されての人気と思えたが、積極的に逃げを打つも粘りを欠いて
⑫着に失速してしまった。
スローペースで先行有利だった流れを考えると、やや負けすぎの印象も受けたが、
57kgの斤量、
10kgの馬体増、
不慣れな逃げの展開……敗因はいろいろ考えられる。ただいずれにしても、
「G1に近いG2」と言われる
札幌記念には、
勢いだけでは突破できない壁も存在するのだと、改めて感じさせられた。
終わってみれば、今年も例年の傾向通り、
格がモノを言うことになった。また、97年以降の勝ち馬を見ると、00年
ダイワカーリアン(当時7歳)以外の13頭は3~5歳で、5歳の
トーセンジョーダンが勝利したことにより、年齢面の傾向も例年通りだった。
出走していれば大本命視されていたであろう
アーネストリーが回避したことで
混戦模様となったが、
札幌記念はセオリー通りに攻めたほうが好結果に結びつくことが多いのでしょう。
それは来年に向けての
教訓にするとして、勝った
トーセンジョーダンは着差以上に強さを感じさせた。勝負所で反応が鈍かったのは
宝塚記念から2ヵ月ぶりで、完調手前であると思わせたが、直線で
レッドディザイアに並びかけられてからもうひと伸びし、内の
アクシオンをねじ伏せるように交わし去った。
レース後の勝利騎手インタビューで、
福永騎手が
「手応えは決して良くなかったんですけど、最後は地力の違いというか、抜かせないようなオーラがありましたね」と話していたが、
「なるほど確かに」と思えるゴール前での粘り強さ。あれが
G1級の底力というヤツなのかもしれない。
その
トーセンジョーダン、古馬になってから⑤①①①⑤①⑨①着という成績だが、7ヵ月ぶりだった昨夏の
五稜郭SとG1の2戦(
有馬記念、
宝塚記念)を除けば5戦5勝。その5勝の中にはG2の3勝が含まれていて、いよいよ
G1タイトル奪取の期待が高まってきた感じだ。
G2に昇格した97年以降の
札幌記念において、1~2番人気で勝利したのは
エアグルーヴ(★★)、
セイウンスカイ(★★)、
エアエミネム、
テイエムオーシャン(★★★)、
サクラプレジデント、
ファインモーション(★★)、
アドマイヤムーン(★★★)、
アーネストリー(★)で、馬名の後ろの
(★)はG1勝利数を意味する。
(★)が付かなかった
エアエミネム、
サクラプレジデントにしてもG1で②~③着があったので、
札幌記念を1~2番人気で制することはすなわち、
G1級であることの証明とも言える。
近親には同じグレイソヴリン系×ノーザンテーストという配合の
カンパニーがいて、同馬は8歳秋に
毎日王冠、
天皇賞・秋、
マイルCSと3連勝して引退の花道を飾った。どちらかと言えば遅咲きのタイプが多いクラフティワイフの一族だけに、
トーセンジョーダンについても長い目で見たい気もする。
ただ、G1初挑戦だった昨年の
有馬記念で、多くのG1馬に混じって0秒3差の⑤着と健闘しており、そうも言っていられないのが現実か。
フリースローラインからジャンプして豪快なダンクを決めていた
マイケル・ジョーダンを思うと、その名前から想像すればフワッと軽く跳び越えてしまいそうだが、今後は
「G1の壁」を跳び越えられるか。
トーセンジョーダンの秋に向けての目標が浮き彫りになった感もある札幌記念だった。