ボレアスはペースや相手関係が問題ではなかったのだろう
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
くだらないことは先に書いておかないと読んでもらえないんじゃないかという気がするので、冒頭で記させていただきます。
しょーもない話がお嫌いな方は、
9段目からお読み下さい(笑)。
今回の
レパードS、やたらに
「た」が掲示板に多かったですよね。
①着ボレアス
②着
タカオノボル
③着
タナトス
④着
タガノロックオン
⑤着
タ゛ートムーア
②着争いはクビ+ハナ+アタマ差の大接戦だったわけですが、これはみんな頭文字が「
タ」の馬たちでした。
しかも、それだけじゃなかったんですよ。
騎手も
「た」だらけでした。
①着ボレアス(武豊騎手)
②着
タカオノボル(吉
田豊騎手)
③着
タナトス(柴
田善騎手)
④着
タガノロックオン(
田辺騎手)
⑤着
タ゛ートムーア(江
田照騎手)
馬名だけじゃなく、②~⑤着は「
田」ジョッキーばかりという。
タ田タ田タ田タ田ですよ(笑)。
すみません、成績表を見て気づいてしまったもので……単に
言いたかっただけでした(笑)。
レースは、そんな「タ」馬と「田」騎手たちの②着争いを後目に、1番人気に推された
ボレアスが
2馬身差で快勝したわけだが、レース後、ちょっと
違和感を覚えたことがあった。
1分52秒0という勝ち時計についてだ。
1分51秒台はもちろんのこと、ペースによっては
1分49秒台や
50秒台が出るのではないかと思っていて、道悪馬場(
稍重)にもなったから、当然、速い時計の決着になっていると思ったのだが、そうではなかった。これはどうしたことか?
序盤は
ファストワーカーと
タナトスがハナ争いを演じ、予想通りに速い流れで始まった。ただ、どうやらその勢いは、向こう正面に入ったところで
休止していたようだ。
前半3Fは
35秒3で、これは過去2年(
35秒4~
35秒7)よりも速い。ところが、1000m通過は、過去2年が
59秒7(09年)と
60秒5(10年)だったのに対して、今年は
62秒2。レースを見ていた時には気づかなかったが、向こう正面に入ってから急激に
ペースダウンをしていたのである。
このあたりは、逃げ争いを演じたのが
ベテラン(
中舘騎手・
ファストワーカー、
柴田善騎手・
タナトス)だったことも影響していたのではないか。老獪と言っては失礼かもしれないが、実に見事なペース配分だったように思う。キャリアの浅い3歳馬で、この
緩急をつけられた流れによって走りづらくなった馬も少なくなかったのではないか。
3番人気に推された
タガノロックオンが向こう正面で外を回りながら3番手まで進出したのは、緩んだペースを考慮してのことだろう。他にも前に詰める馬たちがいた。これも当然だと思う。だが、1番人気の
ボレアス&
武豊騎手は中団追走のままだった。
これには見ているこちらが「動かなくていいのか?」と思ったが、
武豊騎手は慌てず騒がず、
末脚の爆発力を最後の直線まで取っておいた。そして、実に見事な
切れ味を引き出した。
武豊騎手だから、ペースがどうなっているか、もちろん把握していただろう。それでも道中で動かなかったのは、
ボレアス自身に
信じ切れる武器があったからだろうし、ペースや相手関係が問題ではなかったのだろう。終わってみれば、今回のメンバーでは
役者が違ったという感じだった。
最後の直線での
ボレアスは、まさに父のように
「軽く飛んでいる」ようだった。
ディープインパクト産駒はこれが
ダート重賞初制覇。余談だが、同産駒は中央ダートでの成績が、ひと桁馬番で[11.3.7.34](勝率20.0%)、ふた桁馬番で[1.5.6.24](勝率2.8%)となっている(8月21日終了現在)。
ボレアス自身も3勝はすべて
馬番8番以内で記録していて、ふた桁馬番では②②④②③着と惜敗が続いている。
ユニコーンSと
ジャパンダートダービーで先着を許した
アイアムアクトレスと
グレープブランデーとは、今一度、
馬番8番以内で対決してほしいところだ。
昨年の
レパードSは、
父フジキセキ×
母父Awesome Again(
その父デピュティミニスター)という配合の
ミラクルレジェンドが制し、今年は
父ディープインパクト×
母父フレンチデピュティ(
その父デピュティミニスター)という配合の
ボレアスが優勝した。
今年はご丁寧に②着も同配合の
タカオノボル(
父ネオユニヴァース×
母父Touch Gold・
その父デピュティミニスター)で、
父サンデー系×
母父デピュティミニスター系という配合馬は来年の
レパードSでも要注意だろう。
ボレアスは
ディープインパクト産駒で、父と同じ勝負服だけに、父を引き合いにして話されることが多くなりそうだが、
父サンデー系×
母父デピュティミニスター系という配合面で言えば、同じ勝負服でも
カネヒキリ(
父フジキセキ×
母父デピュティミニスター)に近いとも言える。
ディープインパクトにしても、
カネヒキリにしても、ずいぶんと偉大な馬と比較されて語られることが多くなりそうな
ボレアスだが、それに負けないだけの活躍を見せる可能性も十分高いだろう。
稍重で
1分52秒0という時計だけを見れば、過去2年のこのレースに比べてレベルが高くないと言われても不思議ないところだが、
緩急を付けられた流れにも問題なく対応した、その事実を覚えておきたいものだ。この配合馬なら、今後、
時計はいくらでも詰められるだろう。