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上位を独占した「裏函」調整馬が、その威力を見せつけた
文/編集部(T)、写真/川井博


自分が担当している「トレセンうらばなし」の8月18日の更新で、辻三蔵氏に「裏函(うらはこ)」の話を書いていただいた。

詳しくはそちらを読んでいただくとして、「裏函」を簡単に説明すると、札幌開催中にトレセンのような役割を果たす函館競馬場のこと。開催中で「表」の札幌に対して、「裏」の函館、というわけだ。

「裏函」のメリットはいくつかあるといわれているが、その中でも代表的なものは、調教コースが芝とダートしかない札幌と違い、函館にはそれに加えて、トレセンと同じウッドチップの調教コースがあること。そのため、脚に負担がかかりやすいといわれているダートと違い、トレセンと同じようなメニューで調教をすることが可能となる。

また、函館は気候的にも札幌より過ごしやすく、距離的には札幌に近いため、本州のトレセンから札幌に輸送されてくる馬に対しては輸送距離の面で有利になる。

ここまで書いたところで、何が言いたいかはだいたいおわかりだろう。今回のキーンランドCで上位を占めた3頭は、すべて「裏函」で調整された馬だったのだ。

①着のカレンチャン、③着のパドトロワは前走も函館だったので、引き続き函館に滞在して調整された形。②着のビービーガルダン安田記念⑮着の後休養を挟み、早めに函館入りしてここに備えていた。

今回のメンバーで、最終追い切りを函館で行った馬は、上位3頭を除くとケイアイアストン(7番人気④着)、ショウナンカザン(13番人気⑤着)、オリオンスターズ(12番人気⑥着)、ジョーカプチーノ(2番人気⑨着)、マヤノツルギ(14番人気⑬着)、シャウトライン(11番人気⑮着)がいる。結果的に①~⑥着を「裏函」組が占めた形だ。

①着のカレンチャンは1番人気、②着のビービーガルダンは6番人気、③着のパドトロワは4番人気だったので、「裏函」で調整された中から2番人気のジョーカプチーノを加え、人気上位の4頭をボックスで買えば、的中できる馬券だったわけだ。

この4頭の中で、北海道の洋芝で勝ち星がなかったのはジョーカプチーノのみだったので、洋芝実績にも注目すれば3頭すべてをピックアップするのも可能だった……というのは、そもそもこのレースの馬券を外した自分としては、欲張りすぎだろうか(笑)。

函館競馬場は、1回札幌の開催が終わるまで競走馬の滞在が可能となっているため、「裏函」の恩恵にあずかれるのは9月4、5日の開催が最後となる。あと1週間だが、競馬新聞の調教欄は忘れずにチェックしておきましょう!

話をカレンチャンに移すと、スタートから5頭程度が先行した中で、カレンチャンはその一角の外目を追走し、直線入り口で早めに先頭に立つと、そのまま後続の追撃を凌ぎきった。

前半3ハロンは33秒0と、かなり速いペースとなった中を、正攻法で押し切ったカレンチャンのレースぶりは、さすがの強さといったところだろうか。これで重賞3連勝、函館スプリントSに続いてサマースプリントシリーズで連勝を飾り、20ポイントでトップに立った。

函館スプリントSのレースインプレッションでも書いたが、サマースプリントシリーズが創設された06年以降の6回で、前走で函館スプリントSを制した馬はキーンランドC[2.1.3.0]と、すべて馬券圏内に入っている

その理由として考えられるのは、サマースプリントシリーズを優勝したら、オーナーには4000万円、厩舎関係者には1000万円が贈られる。陣営にとって、このシリーズはかなり「美味しい」と思われるし、ファンが思っている以上にモチベーションに大きく影響するのではないだろうか

ファンにとってはどの馬が優勝したとか、そういったことは興味が薄いかもしれないが、馬券作戦には有効になりそう。9月11日に開催される最終戦のセントウルSに、優勝の可能性を残す馬たちが出てきたら、狙ってみるのも良いかもしれませんね。