連対馬の2頭は、線ではなく、点で評価すべき馬なのだろう
文/編集部(M)、写真/森鷹史
サラブレッドは
よく分からない面があるけど、その反面、
非常に忠実な面もある。前走で
掲示板外に敗れていた
2頭が
好走歴のあるコースに戻り、優勝争いを繰り広げたゴール前を見て、ふとそんなことを思った。
新潟記念は、過去傾向的には
前走で好走している馬の方が信頼しやすい面があった。86年以降の過去25回を振り返ると、そのうち22回で
前走が③着以内だった馬が連対圏に入っていて、例外の3回でも前走④~⑤着という馬が1頭は連対していた。
暑い夏はある程度の好調さが重要、という結果が残されていたのだが、今年はこれを覆したことになる。
前走で⑥着以下に敗れていた2頭が
ワンツーフィニッシュを飾るのは、86年以降の
新潟記念で初めてのことだった。
「なんでそんなことが起こったかな~」と思う人もいるだろう。近走が人気薄だった
サンライズベガはまだしも、
ナリタクリスタルは近2走が
1&4番人気で
⑬⑥着だったので、「どうして前回に来てくれなかったのよ」と複雑な思いを抱いた人も少なくないのではないか。
ただ、
ナリタクリスタルは今年の
中京記念を制した時が前走(
小倉大賞典)
⑦着からの一変で、昨年の
新潟記念も前走(
小倉記念)
④着からの巻き返しだった。
2戦続けて掲示板外に敗れていたのは今回が初めてだったので、その点を不安に感じていたけれど、この馬にとっての凡走は
1回も2回も変わらないことだったのかもしれない。それよりも、
流れさえ合って気持ちが切れなければいつ好走しても不思議ない。そういう馬なのだろう。
サンライズベガは、以前は連続して好走を続ける堅実派だったが、OPクラス入りしてからは
前走から一変するケースが増えている。今年、
小倉大賞典で優勝した時は、前走(
AJCC)
⑪着からの巻き返しだった。
その
小倉大賞典を除くと、
サンライズベガはOPクラスで[0.1.4.10]という成績を残していて、③着以内の5戦中3戦が
新潟芝外2000mだった。つまり、今回の激走も、「
得意コースにお帰りなさい」だったということだ。
ナリタクリスタルは
新潟記念を連覇して、これで
新潟芝外2000mは
2戦2勝となった。
サンライズベガはこのコースで
[0.2.2.0]。それぞれの戦績を流れで見れば
「いつ好走するか分からない」ということになるのだろうが、コース別の点をつなぎ合わせて見れば
「いつも好走している」ということになる。この2頭は、
線ではなく、点で評価を下すべき馬なのだろう。
いや、しかし、もしかしたら
「線ではなく点で評価すべき」なのは、
ナリタクリスタルと
サンライズベガに限った話ではないのかもしれない。例えば③着に入った
セイクリッドバレーは、今春の
新潟大賞典で優勝していて、
新潟芝外2000mは
[2.1.1.0]という成績になった。この馬もこのコースでは崩れていない。
一方、
タッチーミーノットは1番人気で
④着に敗れたが、同馬は春の
新潟大賞典でも1番人気に推されながら
⑥着止まりとなっている。4番人気で⑩着に敗れた
ヤマニンキングリーも、小回りコースでの実績が多いタイプで、その傾向通りの着順となってしまった。
重賞での好走歴があるこれらの馬たちは、実力差がそれほどあるとは思えない。力の差が僅差であるからこそ、
得意コースと不得意コースで好走&凡走を繰り返しているのだろう。それらの
点を見極めて、
いい時にそっと寄り添う。その術を身に付けている人が
「馬券上手」なのだろう。
優勝した
ナリタクリスタルは
トップハンデの57.5kgを克服してのもので、
新潟記念で
トップハンデ馬が
①着となったのは、98年の
オフサイドトラップ(58kg)以来のことになる。過去10年の
新潟記念では
トップハンデ馬が連対圏に入っていなかったので、私自身は
ナリタクリスタルの評価を下げてしまったのだが、それは関係のないことだった。
ナリタクリスタルは
線ではなく、
過去の歴史でもなく、あくまで
点を見定めて評価してくべきなのだろう。これからも
根気よく辛抱強く付き合っていくべきなのでしょうね。