「九州男児」の結びつきの強さが、エピセアロームを初重賞の頂に導いた!?
文/編集部(T)、写真/川井博
今年の
小倉2歳Sを制した
エピセアロームは、栗東・
石坂正厩舎所属、
浜中俊騎手騎乗。
「そういえば……」と思い、ふたりのプロフィールを見て納得した。
石坂師は
佐賀県出身、
浜中騎手は
福岡県出身で、
「九州コンビ」での重賞制覇だったのだ。
7月20日更新の「トレセンうらばなし」で中川秀一氏に書いていただいたが、
小倉開催となると人一倍燃える関係者がいる。もっとも有名なところで、現役なら
橋口師(宮崎県出身)、引退された調教師なら
北橋元調教師、
瀬戸口元調教師(ともに鹿児島県出身)などだ。
ローカル開催の競馬場に行くと、ご当地生まれの騎手や調教師の横断幕をよく見かけるが、
小倉競馬場は特にそれが多いように感じる。
自分も幼い頃から九州に10年ほど住んでいた(出身は関西)が、
九州生まれ、九州育ちの人間の仲間意識は非常に強いと感じたことがしばしばある。九州の人間の結びつきは、それ以外の地方の人間が思っている以上に強いのだ(それでいて、よそ者に冷たいというわけではない)。
そういったことは、やはり成績にも影響を及ぼすのだろうか。例として、今回の
小倉2歳Sを制した
石坂師、
浜中騎手(ちなみにこのコンビは、今年の
小倉記念も
イタリアンレッドで制している)の成績を見てみた。
浜中騎手は、今週日曜までの
小倉における成績が[77.77.68.500](勝率10.7%、連対率21.3%)。競馬場別の成績では、20回以上騎乗機会のあった競馬場としては
勝率、連対率ともに最高の成績を残している。
また、
浜中騎手は騎乗機会のあった08年以降の
小倉2歳Sで、08年
デグラーティアが①着、09年
パリスドールは④着、10年
ブラウンワイルドが①着、そして今年の
エピセアロームが①着。
4回の騎乗機会のうち3勝を挙げている。
一方の
石坂師は、
小倉で[56.46.46.310](勝率12.2%、連対率22.2%)。好成績ではあるものの、他の競馬場に比べて小倉の成績が飛び抜けて良いわけではない。しかし、小倉競馬場での
重賞に限ると[3.0.1.3]で、勝率と連対率は41.8%、複勝率は57.1%という成績を残している。
さらに、小倉で
石坂師の管理馬に
浜中騎手が乗ってきた時は
[9.6.0.12](勝率33.3%、連対率55.6%)と、特に好成績。これを見る限り、やはり
九州男児は小倉で強く、しかもその結びつきは強いように思えてくる。
これに加えて、サッカーなどでも、ホームチームが
地元の声援を受けて格上のチームを倒す、といったことがしばしばあるが、
地元の声援が力になる面もあるだろう。関係者の出身地はJRAのホームページなどで簡単に調べられるため、
「ご当地馬券術」は思っている以上に有効かもしれない。
今週で小倉は開催が終わるため、
九州男児を狙い打つ馬券術は年末の開催まで待たなければならないが、
この考え方は小倉以外のローカルでも有効になる可能性はあるだろう。
年末の小倉開催、そして今後のローカル開催では、ご当地の出身者を忘れずにチェックしておこうと、今回の結果を受けて心に決めた。
そんな
九州男児ふたりに導かれ、重賞初制覇を飾った
エピセアロームだが、こちらもまた強い勝ち方だったといえそう。
勝ち時計の1分8秒8は、90年以降の
小倉2歳Sとしては04年
コスモヴァレンチ(1分8秒2)、06年
アストンマーチャン(1分8秒4)、10年
ブラウンワイルド(1分8秒7)に次ぐタイム。この3レースはすべて良馬場での開催だったので、
稍重で開催された今回は、
さらに評価を上げても良いのではないだろうか。
今回のペースを見ると、
前半3ハロンが33秒4、後半が35秒4と、かなり前がかりとなった。そのため、4角先頭の
キンシツーストンが⑪着、2番手の
カシノラピスが⑬着に敗れたが、そんな中を
3角過ぎから早めに仕掛け、4角4番手から残り200mで先頭に立って押し切ったレースぶりも、かなり強い勝ち方だったといえる。
また、
未勝利勝ちは京都芝1600mで、ある程度の距離延長にも対応できそうなのも強みだろう。
ダイワメジャー産駒に
初重賞制覇をもたらした
九州男児ふたりが、来年のクラシックで大輪の花を咲かせることができるだろうか。
生まれは違うが、
“九州で育った男児”として、楽しみに見守りたいと思います。