今年は良馬場で行われて良かったと思わずにはいられない
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
台風12号がゆっくりと日本列島を通過し、小倉と札幌はその影響により、日曜日は芝・ダートとも
道悪で行われていたが、新潟は土日とも終日、芝・ダートとも
良馬場だった。
四国地方から日本海に移動する進路予想を見ていて、新潟も
道悪になるとばかり思っていたので意外な展開。ただ、予想を難しくさせたであろう、
「道悪」というひとつの要素がなくなったからといって、今年の
新潟2歳Sの難解さが一気に解消されるわけでもなかった。
キャリアの浅い
若駒がズラリと並び、03年、05年、06年、07年、09年に続いて今年も
フルゲートの18頭立て。難解でないことを期待するほうが無茶な話かもしれない。
それでも、このコースで行われるようになった過去9年を振り返ると、
勝ち馬9頭中8頭は1~4番人気なので、ファンの皆さんの
慧眼ぶりには感服するばかり。その一方、
近5年すべてで10番人気以下が連対しているように、やはり
ひと筋縄では行かないレースの顔も見え隠れする。
今年は、
新潟2歳Sと同じ舞台の新馬戦で5馬身差の圧勝を演じた
ジャスタウェイが1.7倍の断然1番人気。新潟芝外回りの1600mで行われるようになった02年以降の
新潟2歳Sにおいて、
単勝オッズで1倍台の馬が現れたのは初めてだったから、
ジャスタウェイに対する期待度はかなり高かったと言える。
レースはどうか。
ジャスタウェイ&
福永騎手はジワッとゲートを出て、中団より少し後ろ目のポジションで追走。直線に向いて馬群を捌いて外から進出し、メンバー中最速の上がり
32秒6を計時して
レコードに0秒1差の
1分33秒9で走り抜けた。③着以下を5馬身ちぎったレースぶりなどは、
新馬戦とよく似ている。
堂々としたレース運び、パフォーマンスは単勝1倍台の1番人気に見合うものだったと思う。ただ、
勝ったモンストールがそれ以上に強かった。
モンストールは
ジャスタウェイよりひとつ前のポジションにつけ、直線で馬場の中央から早めに抜け出して
タイレコードの
1分33秒8で走破。上がり
32秒7(メンバー中2位)を計時して
ジャスタウェイの追撃を3/4馬身差で振り切ったのだから、間違いなく
実力で本命馬をねじ伏せた内容と言えるだろう。
なお今回、
1分33秒9以内で走破したのも、上がり
32秒7以内を計時したのも、
モンストールと
ジャスタウェイだけ。その他の16頭は走破時計が1分34秒7以下、上がりは33秒2以下で、その数字からも、
モンストールとジャスタウェイの実力が抜けていたことがわかる。
01年に新潟競馬場が新装されて以降、新潟芝外回り1600mにおいて、
1分33秒9以内で走破し、なおかつ上がりが
32秒7以内で連対を果たしたのは、以下の8例しかない。
| レース名 |
馬名 |
走破時計 |
上がり |
| 05年関屋記念①着 |
サイドワインダー |
1.32.3 |
32.6 |
| 07年月岡温泉特別②着 |
カゼノコウテイ |
1.33.8 |
32.4 |
| 08年関屋記念①着 |
マルカシェンク |
1.32.8 |
32.3 |
| 08年関屋記念②着 |
リザーブカード |
1.33.0 |
32.6 |
| 09年関屋記念①着 |
スマイルジャック |
1.32.7 |
32.5 |
| 09年関屋記念②着 |
ヒカルオオゾラ |
1.32.9 |
32.7 |
| 10年関屋記念②着 |
セイクリッドバレー |
1.33.0 |
32.1 |
| 10年月岡温泉特別②着 |
オルトリンデ |
1.33.5 |
32.7 |
当然と言えば当然かもしれないが、
すべて古馬によるもので、重賞実績馬ばかり。
スマイルジャックは
安田記念で2年連続③着となった古馬でもトップクラスのマイラーである。
このように、古馬でも限られた実力馬しか記録できていない条件を、デビューして今回がわずか2戦目の2歳馬の
モンストールと
ジャスタウェイが、しかも
開催最終週という馬場状況の中で記録したのだから、これは手放しで
高評価してもいいのではないだろうか。
過去9年の③着以内馬の中からは、
マイネルレコルト(04年
朝日杯FS①着)、
セイウンワンダー(08年
朝日杯FS①着)、
ショウナンパントル(04年
阪神JF①着)といったG1勝ち馬が出ているが、
モンストールとジャスタウェイについては、2歳G1に限らず、もっとも長いスパンで注目する価値がありそう。
というわけで、4番人気以内の馬が勝利し、10番人気以下の連対はなかったものの、9番人気の
クイーンアルタミラが③着に食い込むという結果は、例年の
新潟2歳Sらしい結末だったと言える一方、
上位2頭のパフォーマンスは例年以上だったと思える。
「道悪」については、難解さを増幅させる一要素としてしか捉えていなかった。また、今週の馬券は読みづらい天候に
翻弄された感じもあるが(笑)、今回の
モンストールと
ジャスタウェイのパフォーマンスを目の当たりにした後から言えば、
「今年の新潟2歳Sは良馬場で行われて良かった」と思わずにはいられない。