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鞍上の「愛の苦言」に応え、ミッキードリームは競馬界のマー君となる!?
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


今年の朝日チャレンジCを制したのは、和田騎手騎乗のミッキードリーム和田騎手はこの日の5RでJRA通算1万回騎乗を達成しており、メモリアルデーに嬉しい重賞勝ちとなった。

ミッキードリームはこれで1000万、準OPに続き3連勝で重賞初制覇となったが、今回のレースで、自分は二度驚かされた。それは、ミッキードリーム勝ちっぷりと、レース後の和田騎手コメントだ。

レースを振り返ると、道中は2番手につけたエーシンジーラインが、逃げたホクトスルタンを直線入口で早めに交わし、そのまま押し切りを図った。

これは鞍上の太宰騎手のファインプレーで、前半1000mが61秒1のスロー開幕週の馬場を考えれば、完全な勝ちパターンと言って良いはずだった。

しかし、道中は9頭立ての5番手から進み、ゴール寸前でエーシンジーラインをハナ差交わしたミッキードリームの末脚が、それを凌駕した。

ミッキードリームの上がり3ハロンのタイムは34秒4。これより速い上がりタイムを記録した馬は3頭いたが、いずれも届かなかった(サンライズマックス34秒1で⑤着レディアルバローザ34秒2で③着ダイシンプラン34秒2で⑦着同着)。

また、走破タイムは①~④着馬までが同タイムの1分59秒6で、出走馬のうち⑨着のホクトスルタンを除く8頭が、0秒2差の中にひしめく大接戦だった。

以上を踏まえると、ミッキードリーム&和田騎手の位置取り、仕掛けのタイミングを含め、いかに絶妙のレース運びだったかが分かる。

しかし、さらに驚いたのは、レース後に和田騎手が発したとされる「休み明けでまだ重かったし、この接戦は仕方ない。(3歳時の)骨折などもあったが、今は充実してきており、これからが本当に楽しみ」というコメントだった。

前半の1文だけを切り取ると、およそ勝った馬とは考えづらい内容だ。自分はすばらしい勝ち方だと思ったが、和田騎手はまだまだ満足していなかったのだ。

自分はこのコメントに、字面以上の深い意味を感じた。その理由は、ミッキードリームデビュー以来12戦すべての手綱和田騎手が取ってきているからだ。

プロ野球の野村克也元監督を思わせるほどの「勝っても苦言」だが、これは期待と愛情の裏返しか。“まだ満足できない、この馬はまだまだ上を目指せるはず”和田騎手が感じている証拠だろう。

デビューからすべてのレースの手綱を同じ騎手が取るパターンは、昔と比べると減りつつある。しかし、強みだけでなく、癖や弱点を把握しやすいことも含め、同じ騎手が手綱を取ることのメリットが大きいのは間違いのないところだろう。

和田騎手がデビュー以来手綱を取り続けた馬といえば、やはり真っ先に思い浮かぶのがテイエムオペラオーか。ミッキードリームが今後距離を延ばすのか、マイル路線を進むのかは分からないが、和田騎手はこの秋、そのテイエムオペラオー01年天皇賞・春以来となるG1勝利を果たすことができるだろうか。

楽天イーグルスで、勝っても勝っても当時の野村監督に苦言を呈され続けた、マー君こと田中将大選手は、今や日本を代表するピッチャーへと成長を遂げた。ミッキードリーム和田騎手「苦言」を克服し、期待通りに成長を遂げたら、G1勝ちも決して不可能ではないのではないだろうか。

ミッキードリーム自身は芝1800mで4勝、この日が芝2000mでの初勝利だったが、血統を見ると、祖母が名スプリンター・サクラバクシンオーの半妹で、近親にもマイル前後で活躍した馬が多い。これまでマイルで走ったことはないが、一度はマイルでの走りを見たい血統構成をしている。

逆に、今回2000mを克服したように、さらに距離を延ばして、秋の古馬三冠路線でG1馬たちとの対決を見たいという気持ちもある。

どちらにしても、今後が楽しみな存在が秋に向けて名乗りを上げたといえそうだ。