「一見さん、お断り」という結末だった
文/編集部(M)
JRAの競馬場はコース改修がされると、必ずと言っていいほど
最後の直線距離が延びる。それによって「脚を温存しての末脚勝負」というレースが増えるわけだが、みんなが脚を溜めるレースをするので、展開自体は
凡庸になりがちになる。そんな情勢だからこそ、
中山競馬場の異彩ぶりが際立つのだろう。
今回の
京成杯AHは、前半3Fが同日の
セントウルS(34秒1)よりも速い
34秒0で流れ、
いつも通りの激流となった。開幕週だったが最後の直線で逆転劇が起こり、レースの上がり3Fは
35秒3とかかっていた。
今どき古馬のマイルのG2~G3で上がりが35秒台なんて珍しいと思うかもしれないが、00年以降に中山芝1600mで行われたこのレースでは、
10回中7回でレース上がりが35秒0以上かかっていた。
開幕週の芝マイル重賞と言えども、一瞬の切れ味よりもパワーを求められる。そんな傾向は、このレースにとっては
「例年通りのこと」だったのだ。
中山競馬場は、4大場の中で唯一
直線距離の長いコースが存在しない。だからこそ、のんびりしたレースを受け付けない気質(?)みたいなものがあり、
「一見さん、お断り」のような結果がもたらされることが多い。今回もそうだったと言えるだろう。
1番人気には前走の
関屋記念で②着に入った
エアラフォンが推され、同レースで勝ち鞍を収めた
レインボーペガサスが3番人気だった。連続好走を期待して当然だったと思われるが、この2頭には
中山での好走実績がなかった。そこに唯一の不安が感じられたわけだが、結果的には
連対圏に入ることを許されなかった。
優勝したのは中山芝で2勝を挙げていた
フィフスペトルで、②着の
アプリコットフィズは中山芝が[0.1.0.0]だった。その②着は中山芝1600mでの
フェアリーSで、
フィフスペトルは
朝日杯FS②着の実績があったので、
中山芝重賞での連対実績があった2頭がワンツーを飾ったことになる。
フィフスペトルと
アプリコットフィズの2頭以外に、今回のメンバーの中で中山芝重賞で③着以内に入ったことがあった馬は何がいたかと言うと、
フライングアップル(
スプリングS①着)、
マイネルファルケ(
ダービー卿CT②着が2回)、
マイネルフォーグ(
NZT②着)の3頭がいた。
ただ、それぞれの鞍上は
杉原騎手(
フライングアップル)、
武士沢騎手(
マイネルファルケ)、
丹内騎手(
マイネルフォーグ)で、この3騎手は中山芝1600mの重賞で③着以内に入ったことがなかった。
これに対して
フィフスペトルの
横山典騎手は、今回が中山芝1600m重賞で
8度目の優勝で、連対は11度目。
アプリコットフィズの
田中勝騎手は、90年と07年にこのレースで勝利を収めていて、今回が中山芝1600m重賞で
9度目の連対だった。
つまり、今回のレースで連対圏を占めたのは、
馬も
騎手も
中山芝1600m重賞で連対実績のあった2頭だったということだ。まあ、こういうことは終わってから気づくものですが……。
京成杯AH(97年以前は京王杯AH)において、前走を
関屋記念で走って連対圏に入った2頭が一緒に出走するのは、92年以来、実に19年ぶりのことだった。正直なところ、今年の2頭(
レインボーペガサス、
エアラフォン)であれば、中山での
京成杯AHでも首位争いができるのではないかと思ったのだが……
新潟の
関屋記念と
中山の
京成杯AHでは、
求められる適性がまったく違うということなのだろう。
関屋記念と
京成杯AHは、同じマイル重賞で連戦する馬も多いが、連続連対する馬は少なく、
連勝した馬は93年
マイスタージンガーまで遡る。もちろん当時の新潟競馬場は右回りだった。
このふたつのマイル重賞がリンクしづらいということは、裏を返せば、
マイスタージンガーのように連勝するのは偉大なことで、これは
表彰する機会を設けてもいいとさえ思う。
ちょうどいいことに、
関屋記念は夏に行われるが、
サマースプリントシリーズにも
サマー2000シリーズにも属さず、ちょっと浮いた存在になっているので、
関屋記念と
京成杯AHをつなぎ合わせて
「2戦だけのマイルシリーズ」を作ってみたらいいのではないか。もちろん、連勝を果たした馬にはボーナスも贈りましょう。
今年の
サマースプリントシリーズで
カレンチャンがチャンピオンになれなかったことを見ても、同シリーズやサマー2000シリーズで王者に輝くのは大変なことであるのだろうが、
関屋記念→
京成杯AHと
連勝を飾るのも相当に難易度が高いと思われる。来年はそのことを肝に銘じて予想をしたいと思いますし、もし
連勝する馬が現れたら、独自に表彰してその偉業を讃えたいほどですね。