エーシンヴァーゴウの成長力には温かい気持ちが芽生えてくる!?
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
最近、3歳になった
娘と
バズルで遊んでいると、度々驚かされる。その
パズルとは60ピースで、大人から見れば簡単なものだが、
娘は1ピース1ピースの位置をしっかりと憶えていて、こちらが間違った位置にはめ込もうとすると、
「そっちじゃないよ、こっち!」と怒られることも珍しくない。
娘は競馬風に言えば一番仔なので、3歳児の記憶力がどのくらいのものなのか、他の子供と比較ができないのだが、これがけっこう侮れなかったりする。そんな
娘の成長ぶりを微笑ましく眺めている
親バカで恐縮ですが(笑)、
エーシンヴァーゴウについても同じような感情が湧き起こってきている。
エーシンヴァーゴウは今年4月に戦線復帰してからこれで
①①①③①着。
準OP(オラシオンS)→
OP特別(ルミエールS)→
G3(アイビスサマーダッシュ)で3連勝を飾って重賞ウイナーの仲間入り。
アイビスサマーダッシュでは、
カルストンライトオの
レコードに0秒1差まで迫る
53秒8の好時計で駆け抜けた。
前走の
北九州記念では敗れたが、牝馬で55.5kgを背負い、前半3F32秒4という超ハイペースを掛かり気味に先行して押し切れなかったもの。そんな中、自己ベストの
1分7秒3で走破して0秒1差なら負けて強し。
今回の
セントウルSでは、前走で先着された
トウカイミステリー、
エーシンリジル、昨年の覇者
ダッシャーゴーゴー、今春の
高松宮記念②着馬
サンカルロ、香港馬の
ラッキーナイン、
グリーンバーディーなど、さすが
スプリンターズSの前哨戦といった感じで強敵が犇いていた。
レースは前半3F34秒1で、これは過去10年でも2番目に遅いもの。ゆったりしたペースだった中、
エーシンヴァーゴウは逃げた
テイエムオオタカの直後につけ、直線では一旦馬群に飲み込まれそうになりながら、そこから盛り返して押し切り。内から伸びてきた
ラッキーナインをねじ伏せ、外から迫った
ダッシャーゴーゴーを振り切って勝利を収めた。
②着の
ラッキーナインは
59kg、③着の
ダッシャーゴーゴーは
58kgを背負い、いずれも
休み明け。
ダッシャーゴーゴーは道中で掛かってもいたし、2頭とも次走の
スプリンターズSを目標にした仕上げだったと思われるが、それでも、
エーシンヴァーゴウはそれまで
③②⑬⑪着だった急坂コースで勝ち切ってみせた。
つい数ヵ月前までは、いち条件馬に過ぎなかった
エーシンヴァーゴウ。それが、重賞で好内容のパフォーマンスを披露し、得意とは言えなかった条件をも克服し、ついには
サマースプリントシリーズ制覇を手土産に
大舞台の主役候補にまで上り詰めた。
同年代の
娘を持つ父親という立場から言わせていただくと、
この成長力にはなぜか温かい気持ちが芽生えてくる。まあ、人間の3歳児とサラブレッドの4歳馬を
「同年代」で括るのはムチャな話かもしれませんけど(笑)。
また、その鞍上が今年大ブレイク中で、関東騎手リーディングで首位争いを演じている
田辺騎手というのだから、
本番でもコンビ継続なら、今春、
キンシャサノキセキが電撃引退し、王者不在となった感のあるスプリント戦線でその座を狙うモノとしては、これほど
フレッシュなチャレンジャーもいない。
サマースプリントシリーズの王者は、その後の
G1において、
サンアディユの
07年スプリンターズS②着が最高着順で、優勝を成し遂げた馬は出ていない。また、昨年の
サマースプリントシリーズで優勝した
ワンカラットを含め、ファルブラヴ産駒はG1で
[0.1.0.21]と苦戦傾向にある。
順風満帆な
エーシンヴァーゴウだが、頂点に上り詰めるまでには乗り越えなければならない
高いハードルが待ち構えている。それでも、道中で掛かり気味となり、
田辺騎手がなだめつつ追走しているレースぶりなどにはまだ
良化の余地を残している印象であり、
その成長曲線から言えば、決して乗り越えられないものではないはず。
エーシンヴァーゴウはこの後、順調なら
スプリンターズSに向かうだろうが、果たしてそこでどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。なんとなく、
幼稚園の学芸会で初舞台を踏む娘を見守るような心境です(笑)。
それにしても、今年の
サマースプリントシリーズを振り返ると、
函館スプリントSと
キーンランドCは
カレンチャン、
北九州記念は
トウカイミステリー、
アイビスサマーダッシュと
セントウルSは
エーシンヴァーゴウが勝利を収め、
牝馬が完全制圧。
過去の
サマースプリントシリーズを振り返っても、王者に輝いたのは06年
シーイズトウショウ、07年
サンアディユ、08&09年
カノヤザクラ、10年
ワンカラット、そして今年の
エーシンヴァーゴウで、みんな
牝馬である。
勝たなければ優勝できない状況の中、それを成し遂げた
エーシンヴァーゴウは王者に相応しいと思うが、改めて、この
サマースプリントシリーズでの牝馬の強さを思い知らされた感じ。
33歳のオッサンの記憶力でも、さすがにそのことは毎年思い出しますが(笑)、来年もきっちり意識しておいたほうが良さそうだ。