フェイトフルウォーに成長力が認められてもいいはずだ
文/編集部(M)、写真/森鷹史
今年の
セントライト記念には
ダービー出走馬が5頭もいて(
ショウナンパルフェが出走していれば6頭だった)、これは90年以降のこのレースで
最多タイだった。
95年にも5頭が出走していたが、その時は5頭中4頭が
関東馬(シグナルライト、ホッカイルソー、オートマチック、マイネルガーベ)だった。これに対して、今年は5頭中4頭が
関西馬(
トーセンラー、
サダムパテック、
ベルシャザール、
ユニバーサルバンク)。出走17頭のうち
9頭が
関西馬だったが、これは90年以降の
セントライト記念で
最多のことでもあった。
二冠馬
オルフェーヴルが
神戸新聞杯に向かうから、
セントライト記念に他の実績馬たちが集まったのではないか?との声も聞かれたが、その真偽のほどは定かではない。ただ、いずれにしても、これだけ多くの実績馬が集まったことで、例年は台頭が目立っていた
上がり馬が今年は追いやられる結果になった。
前走を古馬相手の1000万クラスで走って好走していた馬が今年は
4頭いて、他にも500万を勝ち上がってきた馬がいたので、個人的にも期待していたのだが、一夏を越しても
大きな勢力図は春とあまり変わらないようだ。
菊花賞も、春に実績を残してきた馬たちの争いになるのかもしれない。
春と変化がないのであれば、
三冠馬の誕生がありそうと考えるのが普通だろうが、それに関してはまだ分からない気もしている。というのも、大きな勢力図は変わらないと記したものの、
上位陣の中での順位付けは変わるかもしれないと感じたからだ。
その理由のひとつは、今回の
セントライト記念で
下克上が起こったことにある。上位に入線したのはいずれもダービー出走馬ではあったが、優勝したのは
ダービーで
⑬着に敗れていた
フェイトフルウォーだった。同馬は今回の
ダービー出走馬の中でいちばん着順が悪かったのだが、
サダムパテックと
ベルシャザールの③着争いを後目に、
トーセンラーの追い上げも余裕を持って抑えて優勝した。
ついでに言えば、②着となった
トーセンラーは
ダービーで
⑪着に敗れていて、今回の
ダービー出走馬の中では2番目に着順が悪かった。この2頭が、しかも今回の
セントライト記念で1&2番人気に推された2頭(
サダムパテック、
ベルシャザール)を抑えてワンツーを飾ったのだから、
春の勢力図通りなのか?との考えが浮かんでもおかしなことではないだろう。
トーセンラーは過去の2勝を
京都芝外回りで記録していて、
中山コースは初めてだった。それを考えれば、今回は、中山での
京成杯を勝利していた
フェイトフルウォーに分があって仕方ないと言えるのだろうが、
サダムパテックと
ベルシャザールはともに
中山でのOP勝ちがあった。中山適性にそれほどの差がないと考えれば、
フェイトフルウォーに成長力が認められてもいいように思う。
フェイトフルウォーは
父ステイゴールド×母父メジロマックイーンで、ご存知の通りに
オルフェーヴルと同配合になる。同配合なら
フェイトフルウォーと同様に
オルフェーヴルにも成長力があって不思議ないわけだが、当然のことながら2頭には
違いもある。
父ステイゴールド×母父メジロマックイーン×母母父ノーザンダンサー系という点ではまったく一緒だが、
オルフェーヴルの母母父が
ノーザンテーストなのに対して、
フェイトフルウォーの母母父は
ニジンスキーだ。
ノーザンテーストと
ニジンスキーだから、血統だけで適性を語れば、より
長距離にマッチしそうなのは言わずもがなだろう。さらに加えるならば、
フェイトフルウォーは
リボーを持っている。持っていると言っても、4代母の父(Tom Rolfe)なので、どれほどの威力を発揮するのかは分からないけれど、
オルフェーヴルとは同配合と言えどもその
母系に違いがあるので、そこに逆転の期待をかけたいところなのではないか。
それにしても、
オルフェーヴルと
フェイトフルウォーは同配合なばかりでなく、
生まれ故郷も同じ(社台コーポレーション白老ファーム)で、これはなかなか珍しいことだろう。三冠制覇がかかる
菊花賞で、牧場の方はいったいどんな気持ちでレースを見つめるのだろうか。
フェイトフルウォーが
菊花賞参戦となれば、初の関西遠征になり、平坦コースを走るのも初めてとなる。一方の
オルフェーヴルは、過去に京都では2度走っていて(
シンザン記念・
②着、
きさらぎ賞・
③着)、3度目の正直で三冠制覇を目指すことになりそうだ。
オルフェーヴルは京都ではまだ勝ち鞍を挙げたことがないわけだが、
ステイゴールド産駒全体で見ても、同産駒は
京都芝の重賞で[1.1.3.33]という成績が残されている。勝ったのは牝駒の
ソリッドプラチナム(
マーメイドS)で、牡駒ではまだタイトルを手にした馬がいない。
フェイトフルウォー、
オルフェーヴルという2頭にとっては、
「敵は他産駒にあり」ということになるかもしれない。そうなると、彼の地で
きさらぎ賞を制覇している
トーセンラーは
不気味な存在と言えそうだ。前述したように、同馬は今回の
セントライト記念が初の中山コースながら②着。次走が
菊花賞なら、当然、得意コースでの上積みが見込めるだろう。