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規格外のダンス産駒クラレントの今後に期待が膨らむ勝利
文/編集部(W)、写真/森鷹史

「確かに、半兄のリディルは09年のデイリー杯2歳Sを制しているけど、あちらはお父さんがアグネスタキオンで、こちらはダンスインザダーク。2歳重賞で、新馬戦を勝ったばかりで、しかも休み明けともなると、突き抜けるのはさすがに厳しいような気も……」

レース前、クラレントに抱いていた印象を文章にすると、上記のように不安材料ばかりが思い浮かんできた。決して自分がネガティブな性格だからではない。あくまで冷静な目線で診断したつもりである。

まず、デイリー杯2歳S以前における2歳芝重賞成績を比較すると、アグネスタキオン産駒は[6.4.6.29](勝率13.3%、連対率22.2%、複勝率35.6%)、ダンスインザダーク産駒は[2.0.3.46](勝率&連対率3.9%、複勝率9.8%)

デイリー杯2歳Sだけで見ても、ダンスインザダーク産駒はファストタテヤマが01年に勝利しているが、他に好走した馬はなし。一方、アグネスタキオン産駒はキャプテントゥーレ(07年①着)、ホッコータキオン(08年②着)、リディル(09年①着)、ダノンパッション(09年③着)、レーヴディソール(10年①着)が好走し、4年連続で連対馬が出ている。

同じサンデー系の種牡馬であるアグネスタキオンとダンスインザダークだが、2歳芝重賞でどちらに分があるかと言えば一目瞭然だろう。

また、デイリー杯2歳S以前、キャリア1戦で重賞に挑んだダンスインザダーク産駒は[0.1.0.9](勝率0.0%、連対率&複勝率10.0%)という成績で、馬券圏内に入ったのは03年シンザン記念②着のマッキーマックスだけだった。

さらに、ダンスインザダーク産駒はダークシャドウを除くと、休み明けでの重賞で[0.7.6.84](勝率0.0%、連対率7.2%、複勝率13.4%)で、他に勝ち馬はいなかった。

新馬戦を勝ったばかりで、しかも3ヵ月ぶりだったクラレントに不安を抱いたのは、それらの成績を知っていたからである。

「ここは素直にダローネガから入るのが妥当。近年のデイリー杯2歳Sで好走が目立つ野路菊S組であり、早くもエピセアローム(小倉2歳S)という重賞勝ち馬を出すなど、好調ぶりが目を引くダイワメジャー産駒でもある」と判断したが、いやはや。

先行すると想定していたダローネガがまさかの出遅れ、しかもポツン最後方。ここで早くも馬券は諦めモードに入ったが、3~4コーナーで外目からポジションを上げ、手応えもまだ残っている(ように見えた)。直線での伸び脚も良く、地獄から天国に舞い戻った心境だった。

ところが、そのダローネガの内から急追してきたのがクラレント。生でレース映像を観ていた時はダローネガばかりを目で追っていたため、クラレントの動向はほとんど気にしていなかったが、レース後にVTRで見返してみると、手応え良く中団のインで脚を溜めている。

そして、直線では内を突くことを決めていたかのように、小牧騎手は迷うような素振りも見せず、クラレントを内へ導く。内からマコトリヴァーサルを追い抜き、前で競り合うゲンテンメイショウハガクレ、外から伸びて来ていたダローネガの間を縫うようにスルスルと抜け出して差し切り勝ち。

まるでアグネスタキオン産駒かと思うほどで、クラレントはダンスインザダーク産駒らしからぬ器用な立ち回りを見せ、先頭でゴールを駆け抜けていた。最初から最後まで、こちらがイメージしていたダンスインザダーク産駒像で括ることはできなかった。

前記したダークシャドウは休み明けでの芝重賞で2戦2勝(11年エプソムC11年毎日王冠)という馬で、ダンスインザダーク産駒の中では規格外という印象を持っているが、不安材料を一掃してデイリー杯2歳Sを制したクラレントにも同じことが言えるかもしれない。

ダンスインザダーク産駒のG1勝ちは菊花賞3勝(03年ザッツザプレンティ、04年デルタブルース、09年スリーロールス)、04年安田記念(ツルマルボーイ)で計4勝。一方、3歳春までのG1では[0.1.2.35](勝率0.0%、連対率2.6%、複勝率7.9%)で、連対圏内に入ったのは01年桜花賞②着のムーンライトタンゴしかいない。

リディルデイリー杯2歳Sを制したあと、骨折によって長期の戦線離脱を余儀なくされたが、弟クラレントにはぜひとも、上記した次なる鬼門データに挑戦してほしい。規格外のダンスインザダーク産駒クラレントの今後に期待が膨らむデイリー杯2歳Sだった。