勝つときは「強い!」とうならせる走りが100%できた感じ
文/安福良直、写真/森鷹史
レース前、というかトライアルの
ローズSが終わった段階で、この
秋華賞は
大波乱になると思っていた。
というのも、春のクラシック馬2頭が、
ローズSで見せ場も作れずに
完敗していたからだ。過去の同じような例と言えば、
ブラックエンブレムが勝った2008年や
ティコティコタックが勝った2000年がそう。どちらの年も上位人気馬は③着にも入れず、2000年は馬連が
3万円つき、2008年は3連単で
1000万馬券が飛び出した。
これらの例にならえば、今年ももちろん
大波乱。何が起きても驚かないぞと思っていたのだが、終わってみればすでに古馬重賞の
クイーンSを勝っていた
アヴェンチュラの
快勝劇。
今いちばん強い馬が勝った、ということだね。馬券も、
秋華賞としては堅い部類で収まっている。
今回は
アヴェンチュラ向きの展開というか、ハイペースで馬群もバラけ、道中で不利を受けることもなく
ノビノビ走ることができたのが何よりだったと思う。これが、
阪神ジュベナイルFのときのようにスローペースで我慢比べの展開になると空回りする
不安があったが、そうならなかったので
自分の走りに集中できたのだろう。
姉の
トールポピーもそうだったが、牝馬にしては馬体がたくましくて力強い走りをするから、
勝つときは「強い!」とうならせる走りができる。今回は
100%そんな走りができたので、人馬ともにとても気持ちの良い
勝利だったのではないだろうか。
ライバルのことを気にせずに、スッと先行させた
岩田騎手の騎乗もファインプレーだった。見る側も、馬券が外れてもこういうレースが見られれば
納得というか、実際外れましたけど…。
ところで、
アヴェンチュラのこの勝利で、
トールポピーとあわせて、
全姉妹で牝馬G1・3勝目。あとは
桜花賞を妹が勝てば
牝馬三冠制覇。母アドマイヤサンデー、父ジャングルポケットともに大きな目標ができたことになる。ちなみに、
アヴェンチュラの下は2歳も1歳もジャングルポケット産駒の牝馬だそうで、これは期待をかけたくなりますね。
さて、その
アヴェンチュラを最後まで追い詰めたのが、7番人気の伏兵
キョウワジャンヌ。7月にやっと
500万下を勝ち、
ローズS③着でこの舞台に間に合った上がり馬。最内枠だったけど包まれない展開になったのが良かったとはいえ、速い流れにもよく対応できて
好内容だった。
ハーツクライ産駒は、
ダービーの
ウインバリアシオンに続いて2頭目の
G1・②着。なかなか勝てないが、ハーツ自身の開花は4歳秋だったので、これからどんどん力をつけてくる馬が出るはず。
キョウワジャンヌもその1頭になりそうだ。
1番人気の
ホエールキャプチャは、春に続いて惜敗の③着。
安定感はこの世代ナンバーワンだが、②着以下に差をつけて勝ったことがない、という
爆発力のなさが泣き所なのだろうか。
マルセリーナ、
エリンコートの春のクラシック馬2頭も、これといった見せ場を作ることもなく凡走してしまった。
見せ場と言えば、シンガリ負けだったけど大逃げを打った
メモリアルイヤー。昔は、
大レースでひたすら逃げまくる馬がいて、
「テレビ馬」などと呼ばれていたものだが、その言葉を久しぶりに思い出すような大逃げ。それでも4コーナーまで先頭をキープしていたのだから立派ではある。
メモリアルイヤーは九州産で、前走は廃止問題で揺れる
荒尾競馬場の
霧島賞を勝っていた。今回の大逃げは
荒尾競馬の心意気の現れか。
メモリアルイヤーはその前も
北九州記念で果敢に逃げ争いをしていたし、結果が出ていなくても今後注目したい馬ではある。この
秋華賞では
アヴェンチュラの強さが際立ったが、
メモリアルイヤーと
荒尾競馬のことも、心の片隅に置いておこう。