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「強い4歳世代」のトップグループに、エイシンアポロンが戻ってきた
文/編集部(T)

昼過ぎには上がったが、前日から降り続けていた雨の影響で、今回は不良馬場での開催。出走17頭中重賞勝ち馬が10頭と、なかなかの好メンバーが揃ったことで、1番人気のエイシンアポロンの単勝オッズが4.1倍ということが示すように、混戦模様となった。

レースを制したのは、そのエイシンアポロンだった。道中は中団やや後方、馬群の外から進め、残り300mで各馬が横一線となり、どの馬が抜け出してもおかしくない状況。そこから、外を通って力強く伸び、粘り込みをはかるアプリコットフィズをアタマ差交わした。

不良馬場にもかかわらず大外から差し切ったレースぶりは、なかなか強い内容だったといえそう。今回はその勝因と、エイシンアポロンの今後の可能性について、レース後の田辺騎手のコメントから探ってみたい。

そのコメントとは、以下のようなものだった。

「前走は1年ぶりでしたが、自分でもびっくりするくらい走ってくれましたし、叩いた今回はチャンスがあると思っていました。不良馬場でしたが、これまでにも道悪の経験はありましたし、よくこなしてくれたと思います。

内枠は引きたくないな、と思っていましたが、外枠で自分のペースで進められたのは狙い通りでした。距離はこなせますし、能力も高い馬ですから、今後も楽しみです」


この中で、今回の勝因に関するキーワードとして、「道悪」「外枠」をピックアップしたい。

まずは「道悪」。これはエイシンアポロンのこれまでの成績を見れば一目瞭然で、今回も含めて芝の良馬場は[0.2.0.4]道悪は[3.2.0.2]

デイリー杯2歳S朝日杯FSで②着しているので、良馬場でも問題はなさそうだが、G1を除くと芝の道悪は[3.2.0.0]で、道悪がプラスに働いたことは間違いないだろう。

それにしても、近年はかなり馬場が整備されているにもかかわらず、これまで出走したレースの中で道悪の方が多い(良馬場6レース、道悪7レース)というのは、かなり珍しいかもしれない。

本馬の名前にとられている「アポロン」とはギリシャ神話の太陽神のことだが、エイシンアポロン自身は道悪得意というのは面白い。「嵐を呼ぶ男」ならぬ「雨を呼ぶ男」といったところだろうか?

東京芝の重賞が不良馬場で開催されたのは今年のダービー以来だが、秋開催では01年京王杯2歳S以来約10年ぶり(ちなみに、秋開催で重馬場以上とすると03年のジャパンC以来)となる。そういう意味でも、今回の雨は文字通り“季節外れの恵みの雨”となった。

次は「外枠」。このレースでもほとんどの馬が直線で外を回したように、この日の東京は内が極端に伸びない馬場だった。

前走の毎日王冠は最内枠からの発走で、内を突いた直線では前の馬を捌くのが遅れる場面があった。勝ったダークシャドウから0秒1差の僅差だっただけに、前走が初騎乗だった田辺騎手も“外をスムーズに回せていたら……”という思いを抱いたのかもしれない。

また、今回は前半800m通過が47秒5で、馬場を考えると決して遅いペースではなかったが、エイシンアポロンの直後にいたゴールスキーが行きたがる素振りを見せているのとは対照的に、道中の折り合いもスムーズに見えた。

折り合いに不安のある馬が外枠を引くと、前に馬を置くことができずに掛かり気味になることがしばしばあるが、エイシンアポロンについてはそういった不安を田辺騎手が感じていなかったのだろう。

そのあたりは、「叩いた今回はチャンス」というコメントともリンクする。気性が良い馬は休み明けだと“臨戦態勢”が整っておらず、案外な結果に終わることもあるが、そういった馬が叩いてピリッとしてくると、一変することがある。

田辺騎手「距離はこなせる」と言っているが、弥生賞で勝ったヴィクトワールピサから半馬身差の②着しているように、折り合うことができれば距離はまだまだ保ちそうだ。

そうなると、気になる次走は今回と同距離のマイルチャンピオンシップか、距離を延ばしてジャパンCでも面白そう。父は現役時代に芝ダートを問わず活躍し、昨年は北米リーディングサイアーに輝いたジャイアンツコーズウェイということを考えると、ダートでの走りも見てみたい気もする。

「強い」といわれる4歳世代だが、2歳時からG1戦線で活躍してきたエイシンアポロンが、このレースの結果を受けて、ようやくトップグループに戻ってきたと考えて良さそうだ。どの舞台になるかはともかく、真価を発揮するのはこれからだろう。