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55kgで勝利したことで、G1への視界も良好に
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也

トレイルブレイザービートブラックという2頭については、個人的に強い思い入れがある。

2頭は昨年の菊花賞にともに出走し、ビートブラック③着トレイルブレイザー⑧着という結果になっているが、読者のみなさんの中には覚えている人もいるだろう。この2頭のうち穴ぐさ💨だったのは、トレイルブレイザーの方だった。13番人気という低評価を覆して③着に激走したビートブラックは、穴ぐさ💨ではなかった。

穴ぐさ💨の指名でトレイルブレイザーと迷っていたのは、他ならぬビートブラックだったので、当時のことは鮮明に覚えている。2頭はともに前走で古馬相手の1000万特別を勝ち上がり、スタミナ豊富な印象だった。

結果的に、穴ぐさ💨をビートブラックではなく、トレイルブレイザーにしたのは、血統に安心感を覚えたからだった。

トレイルブレイザーは祖母の父がニジンスキーで、これは誰が見てもスタミナがありそう。一方のビートブラックは、父ミスキャストの母がノースフライトで、彼女のマイル戦での切れ味を目の当たりにしてきた人間としては、菊花賞の3000mで「ふーちゃん」の存在がどうにも気になってしまったのだ。結果的には、それがアダとなったわけだ。

菊花賞のパドックで、トレイルブレイザーが周回する映像を見た時、血の気が引いたことをよく覚えている。テンションが高く、イレ込んでいるようだった。レースまでに落ち着いてくれと祈ったが、レースでも掛かる面が見られ、直線で伸びを欠いた…。

自分としては、トレイルブレイザー菊花賞⑧着に敗れたのは、イレ込みがあったからで、実力はこんなものではないと思っていた。地力の高さは、ビートブラックともそれほど差がないはずと信じていたから、古馬になってからそれを証明するようなレースが訪れないかと待っていた。

2頭は菊花賞の後は、昨年の宝塚記念で一緒に走っていて、その時はトレイルブレイザーが先着している(トレイルブレイザーが⑧着、ビートブラックが⑪着)。ただ、掲示板外のレースだったので、実力を出し切ってのものかは定かではない。今回のアルゼンチン共和国杯は、その時以来となる一緒のレースで、どちらが先着するか、レース前から非常に楽しみだった。

結果的にはトレイルブレイザーが快勝し、ビートブラックには1秒0の差を付けたわけだが、この差については2kgの斤量差(トレイルブレイザーが55kg、ビートブラックが57kg)に加えて、枠順の違い(トレイルブレイザーが6枠11番、ビートブラックが8枠18番)が影響した面もあったのだろう。

それでも、前走の京都大賞典オウケンブルースリに先着したビートブラックに続いて、今回のレースではトレイルブレイザーが同馬を退け、先頭でゴールを駆け抜けたので、菊花賞から1年の時を経て、なんだかホッとした気分になった。トレイルブレイザービートブラックは、やっぱり強い馬なんですよ。

まあ、ただ、トレイルブレイザーの強さを私が強調してみたところで、「そんなことは知ってます」という人が多いのも事実だろう。なにせ今回のトレイルブレイザー3番人気だった。前走の準OP戦で②着に敗れ、格上挑戦の形だったが、その実力は多くの人が見抜いていたということだろう。

過去のアルゼンチン共和国杯では、前走で準OPクラス以下のレースを走っていた馬が馬券圏内に入るケースが多く、これを考えればトレイルブレイザーの好走は驚くべきことではないのかもしれないが、勝利したことについては高く評価すべきだと思っている。

00年以降、前走で準OPクラス以下のレースを走り、アルゼンチン共和国杯を制した馬は4頭いて、そのうち3頭はその後のG1レースで連対圏に入っている。02年のサンライズジェガーは翌年の天皇賞・春②着となり、07年のアドマイヤジュピタは翌年の天皇賞・春を制覇、08年のスクリーンヒーローは連勝でジャパンCを勝利している。

サンライズジェガーアドマイヤジュピタスクリーンヒーローの3頭は、アルゼンチン共和国杯勝利時の斤量が53~54kgだったが、今回のトレイルブレイザー55kg。それでいて②着以下に1馬身以上の差を付けて勝ったのだから、今後に期待を膨らませないほうがおかしいだろう。さらなる飛躍を期待したい。

それにしても、最近の重賞競走は堅い決着が多いが、これはどういうことだろうか。今回のアルゼンチン共和国杯は③着に8番人気のカワキタコマンドが入ったことで3連複は万馬券になったが、それでも配当は1万810円。3連複配当が1万5000円を超えたのは、8月以降の平地重賞では4レースしかない(1万6610円のレパードS、2万7830円のローズS、2万5610円のスプリンターズS、2万2790円の天皇賞・秋)。

今年の1~7月の平地重賞では、71レース中23レースで3連複配当が1万5000円を超えていて、その出現率は32.4%。8月以降は、34レース行われて4レースだけなので、出現率が11.8%に激減している

今年の平地ハンデ重賞を切り取ってみても、1~7月のレースでの3連複平均配当は4万7620円だが、8月以降のレースでは8820円。……穴党受難の時代がやってきているのだろうか?