これぞG1・5勝馬のパフォーマンスだと思わせるもの
文/編集部(W)、写真/森鷹史
出走馬15頭のうち、今年に入って中央の
ダートOPか
交流重賞で勝ち星がある馬は
7頭、その条件で③着以内がある馬とすると
12頭になり、そこから漏れた
3頭については前走で
準OPを勝ったばかり。
実績馬、好調馬が揃った一戦というのが、出走馬を見渡した時の第一印象だった。
その中にあっても、他にG1馬は不在という組み合わせで、②着か③着があるのも
メイショウタメトモだけという状況においては、
エスポワールシチーの
G1・5勝という実績は群を抜いていた。
前日発売から人気の動きを見ていても、2~9番人気の馬は入れ替わりも見られたが、
エスポワールシチーの1番人気は不動だった。最終的にも1.6倍と断然の支持を集めたのも、
競馬ファンから
「ここでは実績、実力とも抜けている」と評価された結果だろう。
エスポワールシチーは、3歳時にダート転向すると破竹の
4連勝。4歳を迎えると、
フェブラリーSこそ④着に敗れたが、その後はG1・3勝を含めて
4連勝。5歳になってもその勢いは続き、
フェブラリーS、
かしわ記念を制して
G1・5連勝を達成した。
だが、5歳秋に渡米して
BCクラシックで⑩着に大敗すると、6歳を迎えた今年初戦の
名古屋大賞典で優勝し巻き返したものの、その後は
かしわ記念③着、
帝王賞②着、
南部杯④着と勝ち切れないレースが続いていた。
これが並みの馬であれば、
「G1でよく頑張っている」と高評価されそうなものだが、そこが
G1・5勝馬の
ツライところと言うべきか、
宿命というべきか、どうしても
全盛期と比較されてしまいがち。
同世代の
スマートファルコンはG1・4勝を含めて
7連勝中と、6歳秋にして充実期を迎えた感じだが、果たして、あの
無敵の強さを誇っていた頃の
エスポワールシチーは帰ってきてくれるのか。
ところが、そんな
心配性の外野をよそに、
強いエスポワールシチーは帰ってきた。
ハナを主張した内の
トウショウフリークを行かせて2番手に控え、直線でこれを交わして抜け出すとリードを広げてゴール。
道悪で前残りの決着になったとはいえ、
斤量58kgを背負って②着以下に0秒6差もつけたのだから、文句なしの完勝だろう。
90年以降、斤量58kg以上を背負って②着以下に0秒6差以上をつけてダート重賞を制したのは、
エスポワールシチーの父である
ゴールドアリュール(
03年アンタレスS)、それから
アドマイヤドン(
03年エルムS)、
マイネルセレクト(
04年ガーネットS)、
メイショウトウコン(
07年エルムS)でたったの4頭しかいなかった。
アドマイヤドンは
G1・7勝、
ゴールドアリュールは
G1・4勝を挙げていた馬で、
みやこSのエスポワールシチーのレースぶりは、これぞG1・5勝馬のパフォーマンスだと思わせるものだった。
それにしても、心の中では
『あしたのジョー』で言うところの
矢吹丈を叱咤激励する
丹下段平状態で、
「立て!! 立つんだエスポ!!」などときばって見ていたので、
「あっ、どうもご無沙汰してました。強いエスポワールシチーです」という感じのレースぶりにはちょっと脱力。だが、気持ちはすぐに期待へと変化した。
完全復活した
エスポワールシチー、
JBCクラシックでマッチレースを演じ、充実期を迎えた感のある
スマートファルコンと
トランセンド。この馬たちが
ジャパンCダートに集結して戦うことになったら……
『ONE PIECE』で言うところの
サンジ状態で、想像しただけで
鼻血が吹き出しそうである。
エスポワールシチー、
スマートファルコン、
トランセンドは同脚質でもあるので、いったいどの馬がハナを奪うのか。スタートからゴールまで、
一瞬たりとも目の離せないレースが展開されそうで、そんな楽しい想像を抱かせることにも繋がった、今回の
エスポワールシチーの勝利は喜ばしい限り。
また、
ゴルトブリッツは競走中に
心房細動を発症したようで、好位から後退して⑮着となってしまったが、その他の4歳馬は
トウショウフリークが②着、
ニホンピロアワーズが③着、
ヒラボクキングが⑤着で掲示板内に載ることとなった。
連勝は「5」で止まったが、並み居る強豪を相手に重賞初挑戦で連対圏内に食い込んだ
トウショウフリーク。デビューからの
連続馬券圏内入りを「13」に伸ばした
ニホンピロアワーズ。大外枠に入り、
トウショウフリークと同じく重賞初挑戦ながらも健闘を見せた
ヒラボクキング。
今回は若手の台頭も見られたし、ダートの重賞戦線はますます層が厚くなり、ますます盛り上がっていきそうだ。