ファルブラヴ産駒のアイムユアーズにとって、おあつらえ向きの舞台だった?
文/編集部(T)、写真/森鷹史
馬券が当たったわけではないので偉そうなことは言えないが、レース前から
アイムユアーズは気になっていた馬だった。なぜかというと、
「ファルブラヴ牝馬だから」。これに尽きる。
すでによく知られていることではあるが、
ファルブラヴ産駒は
『①牝馬がよく走る』。
ファルブラヴ産駒はこのレースが行われた11月5日までで
OPは13勝で、いずれも牝馬が勝っている。
レース前に持っていた認識はその程度だったが、今回の結果を受けて
ファルブラヴ産駒について調べると、それ以外にも
特徴の多い種牡馬だということが分かった。
まず、
『②短距離に強い』。前述したOPでの
13勝のうち、11勝が1400m以下でのものとなっている。
さらに、
『③芝に強い』ことも特徴のひとつ。
ファルブラヴ産駒はこの日までに
1000万以上で30勝している(ちなみに、このうち
24勝が牝馬)が、この
すべてが芝のレースだ。
そして、
『④良馬場に強い』こと。前述の1000万以上で挙げた
30勝のうち、28勝が良馬場でのものとなっている(残る2勝は稍重と重で1勝ずつ)。
実はこのレースは、
①牝馬限定戦で、
②③芝の短距離(芝1400m)のレースで、
④良馬場での開催と、
アイムユアーズにとっておあつらえ向きの条件が揃っていたのだ。
この日の京都競馬場の天候は、記録によると11時23分から
小雨となっている。レースのスタートが15時45分だから、4時間以上雨が降り続いていたことになる。コースはそれなりに湿っていたはずだが、それでも
良馬場で持ちこたえていた。
今回は
アイムユアーズにとって好条件が揃い、天気の神様の後押しも受けていた。そう考えると、
単勝8番人気は人気がなさ過ぎたか、とさえ思えてくる。
そこで冒頭の話に戻ると、そこまで好条件が揃っていたのに
なぜ当たらなかったか、ということになる(実際には買い目には入っていたが、3連単の頭で買っていなかった)。
その理由は、
アイムユアーズは過去の
ファンタジーSの勝ち馬の傾向にあまり合わなかったから。それは、前走が
函館2歳Sで②着していたにもかかわらず、評価があまり上がらなかった理由のひとつでもあると思われる。
まず、鞍上の
メンディザバル騎手は、08年のワールドスーパージョッキーズシリーズで優勝しているが、先週までに日本で
[0.5.3.16](複勝率33.3%)と、好走歴はあるがまだ勝っていなかった(この勝利が
日本での初勝利となる)。
また、美浦・手塚厩舎所属の
アイムユアーズは、今回が
函館2歳S②着以来約
3ヶ月ぶり(中12週)となったが、過去15回の
ファンタジーSで、
休み明けの馬は[0.2.4.13]、
関東馬は[0.3.3.22]と、いずれの条件でも勝っていなかった。
ただ、このうち
休み明けについては、
ファルブラヴ産駒の傾向と照らし合わせると、少し話は変わってくる。
ファルブラヴ産駒のOPでの13勝のうち、
10勝が中4週以上でのもので、
間隔を空けた方が合うタイプと思われる。特に、
OPで半年以内の休み明けだと[2.3.2.6](複勝率53.8%)と、かなり高い確率で好走していた。
これまでの話を総合すると、今回は
ファルブラヴ産駒の特徴が、過去の
ファンタジーSの傾向を凌駕した面が大きかった、ということになるだろうか。
一方で、
アイムユアーズはこのレースで、これまでの
ファルブラヴ産駒になかった面も見せた。
これまで、
ファルブラヴ産駒は
ある程度前に行って押し切るレースをする馬が多いような印象だった。その証拠に、これまでのOPでの13勝のうち、このレースと直線1000mを除くと、すべて
4角5番手以内から押し切っている。
しかし、今回の
アイムユアーズは
4角10番手から差し切っている。鋭い差し脚を武器にする
ファルブラヴ産駒はこれまであまりおらず、その点では
ファルブラヴ産駒の良さを保ちながら、これまでG1で勝っていないという“壁”を打ち破る可能性も感じさせる。
なお、今回の勝ちタイムは1分21秒3。先述したように湿った馬場でありながら昨年より1秒0速く、
01年以降で4番目の好タイムだった。
過去にこのレースを勝った馬には
スイープトウショウ、
ラインクラフト、
アストンマーチャンなどがいるが、
アイムユアーズは偉大な先輩に続く活躍をすることができるか。
ファルブラヴ産駒として初のG1勝ちに向けて、視界が大きく開ける勝利となったのは間違いないところだろう。