ロードカナロアは、近年の芝スプリント路線のトレンドを持っている
文/編集部(M)、写真/森鷹史
「来年はG1で走っている馬」。レース前に
福永騎手がそう話していた
ロードカナロアが、重賞ウイナーたちを軽く退けて
京阪杯を制した。後続に1馬身半の差を付けてゴールし、
福永騎手がその素質を高く買っていることをまざまざと証明する形になった。
前走の
京洛Sは外目の枠(7枠14番)で、外を回しての快勝だったので、今回は
内枠(2枠3番)がポイントになるのではないかと感じていた。
母父ストームキャットということもあり、揉まれた時に嫌気を差すこともあるんじゃないかと思っていたのだ。
思っていた、というか、好配当が出ることを望んでいたので、
そうなってほしいなあと願っていたのが実情なんですが(笑)、
ロードカナロアは内枠もまったく問題にしなかった。それどころか、内で脚を溜めて抜け出てきたのだから、むしろ
内枠の利点を活かす走りであったと言える。
いったいどこまで強くなるんだろう。レース直後はそう感じたが、レースタイムなどを見ていたら、
「う~ん…」と唸る部分も出てきてしまった。
前走の
京洛Sは、道悪だったこともあってかペースが上がらず、勝ち時計は
1分8秒0(稍重)だった。古馬のOPクラスのレースとしては
楽な流れだったと感じさせられたが、今回の
京阪杯も、
京洛S同様のペースになり、勝ち時計は
1分8秒1(良)だった。
ふたつのレースのラップを比較すると、
京洛Sが
34秒6-46秒0-57秒0-68秒0で、
京阪杯は
34秒6-45秒7-56秒7-68秒1。ラップのズレが
0秒3しかなく、とてもよく似ている。今回の
京阪杯は良馬場だったので、それを考えれば、
京洛S以上に楽な流れだったとも言えるかもしれない。
もちろんペースは
逃げ&先行馬が作り出すものなので、差し脚質の
ロードカナロアの能力を否定するものではないが、
「厳しい展開になった時にどうなのか?」という疑問だけは解消されずに残されてしまった。次走以降のレースで予想をする際は、そのこととレースの
展開読みがカギになってくるのではないだろうか。
ロードカナロアは
母父がストームキャットであることを前記したが、父が
キングカメハメハなので、血統内に
ノーザンダンサーのクロスをいっぱい持っていることになる。
キングカメハメハ自身が
「ノーザンダンサーの4×4」というクロスを持っているので、
ロードカナロアには
「ノーザンダンサーの5×5×4」というクロスがあるのだ。
血統好きの方の中にはすでにピンと来ている人がいるかもしれないが、この
ノーザンダンサーのクロスというのは、
近年の芝スプリント路線のトレンドと言える。
「ノーザンダンサーの5×5」というクロスを持つ
カレンチャンが
スプリンターズSを制したのは記憶に新しいところだし、09年にスプリントG1を連勝した
ローレルゲレイロは
「4×5」、
スリープレスナイトは
「5×3」、
ダッシャーゴーゴーは
「4×5」という
ノーザンダンサーのクロスを持っている。
クロスをいっぱい持っていればそれだけ強力というわけでもないのだろうが、
ロードカナロアの血筋を見ると、
勢いのある時はどこまでも強くなるという気がしてくるのも事実だ。
さらに言えば、
ロードカナロアは祖母サラトガデューの父が
リボー系のCormorantで、これも
近年の芝スプリント路線のトレンドに乗っかっている。
今年、
高松宮記念を連覇した
キンシャサノキセキが
母父リボー系(Pleasant Colony)で、
スズカフェニックスや
ダッシャーゴーゴーも
母系にリボーの血を持ち、
サイレントウィットネスには父系に入っていた。
近5年(07年以降)の芝スプリントG1の勝ち馬は
8頭いるが(
ローレルゲレイロと
キンシャサノキセキが2勝ずつしている)、このうち、5代血統表内に
ノーザンダンサーのクロスを持つのが
アストンマーチャン(4×4)、
カレンチャン(5×5)、
スズカフェニックス(3×4)、
スリープレスナイト(5×3)、
ローレルゲレイロ(4×5)で、
リボー系を内包しているのが
キンシャサノキセキ(母父)、
スズカフェニックス(母母父)。どちらにも該当せずに優勝したのは
ファイングレインと
ウルトラファンタジーだけなので、かなりの確率で当てはまってると言うことができるだろう。
ロードカナロアは
ノーザンダンサーのクロスを持ち、
リボー系も内包している。このことを重視すれば、
「来年はG1で走っている」ではなく、
「来年はG1タイトルを手にしている」となっていても、まったく不思議ではないだろう。
私自身は、どんなに強い馬でも
アラを探したくなるタチなので、
ロードカナロアには早いところ
ハイペースのレースに難なく対応してもらいたい気持ちがある。そうすれば、アラを探す必要もなくなって、私自身が
楽になれると思うので(笑)。
数々のスプリント王者の名前を見ても分かる通り、
ノーザンダンサーのクロスや
リボーの血を持つ馬は、
厳しいレースになってこそ、その真価を発揮している。それを思えば、
ロードカナロアの今後がますます恐ろしくなるのが普通であろう。