来年は世界に羽ばたいて、私たちに元気を与え続けてほしい
文/安福良直、写真/川井博
終わってみれば、
オルフェーヴルの
ワンマンショーだった。
皐月賞以降、この馬の強さには
驚愕するばかりだったが、今回は
それまで以上の強さを見せつけられた。
レース前は、
最強牝馬か
三冠馬か、いやいや他にG1馬が7頭もいるぞ、と豪華なメンバーに目移りしたものだ。特に、
有馬記念は実績馬が復活するケースが目立つだけに、
二強と言われていても実際はだれが来てもおかしくないぞ、と思っていた。
いや、レース前はというより、レースが始まってから2周目の3コーナーにさしかかるまでは、本当にだれが来てもおかしくなさそうな展開だった。スローペースで逃げる
アーネストリーを先頭に、どの馬も息をひそめて抜け出す
チャンスをうかがうようなレース運び。
歴戦の古馬たちにとって、もっとも力が発揮できる展開と言える。
そうなると、いちばん苦しいのは若い
オルフェーヴルのはずだった。実際、レース序盤は折り合いを欠くような仕草を見せていたし、
池添騎手が必死になだめてどうにか落ち着いたが、位置取りはかなり後ろ。内から追い上げるスペースはなく、外から行くのは
コースロスが大きすぎる。
あの
ディープインパクトでさえ、古馬との初対戦となった
有馬記念では
ハーツクライに苦杯をなめているが、展開としてはそのときと同じような感じ。
古馬たちの術中にまんまとはまったか、そう思わされた。
しかし、だ。そこからの
オルフェーヴルの
強さはどうだ。
コースロスもなんのその、外から先頭集団にとりつくと、直線では堂々と抜け出して、粘る
エイシンフラッシュ以下を難なくねじ伏せてしまった。
オルフェーヴルの
推定上がり3ハロンは33秒3だが、切れたというよりも、力で押さえ込んでしまった感じ。
ピンチに見えたはずなのに、終わってみれば
ピンチだったようにも思わせない。②着
エイシンフラッシュとの差は4分の3馬身だが、実際の力の差はその
5倍くらいあるのかもと思わせるほどの強さだ。
これで
年度代表馬の座を確実のものとした感のある
オルフェーヴル。見ていて第一に感じるのは、その
元気さだ。レースぶりはつねに
パワフルで、ゴーサインが出てからゴールに飛び込むまではなんの
不安もなく見ていられるが、それ以外の時間は
ありあまるパワーを抑えるのに必死で、ひょっとしたら
騎手を振り落としてしまうのではないかと思えるほど危なっかしい。実際、
菊花賞のあとは
池添騎手を落としていたし…。
歴代の
三冠馬と比べると、完璧な強さを見せた
シンボリルドルフや
ディープインパクトよりも、他を圧倒するパワーで駆け抜けた
ミスターシービーや
ナリタブライアンに近いタイプだろう。馬体は決して大きくなく、今回もメンバー中2番目の軽量馬だが、
そんなことを感じさせない力強さがオルフェーヴルにはある。
一方、敗れ去った歴戦の古馬の面々については、言うべきことが少ない。
②着
エイシンフラッシュはレース運びの上手さを見せてくれたが、勝つためには何かが足りない感じだし、③着
トゥザグローリーは
ナイスネイチャの3年連続③着の記録にリーチがかかってしまった。そして
ブエナビスタには、
「お疲れさまでした」のひと言だけを送りたい。今日はいつもの戦う
ブエナビスタでなかったようで残念。
今年は震災があって多くの人が傷ついたが、
オルフェーヴルの力強い走りには、人々を前向きにさせる明るさとパワーがある。今年の走りには
「ありがとう」と言いたいし、来年は世界に羽ばたいて、ぜひ見ている私たちに
元気を与え続けてください。