シルポートの作ったハイペースが、マイネルラクリマにとって最適のペースだった?
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
自分の周りでは、東西の
金杯は
有馬記念と並んでサイン馬券が幅を利かせるレースとなる。普段は
「血統が……」、
「コース適性が……」と言っている友人が、このレースでは
「今年のメンバーで“金”に関係する馬はいる?」などと言ってくるから面白い。
残念ながら今年の
京都金杯には
ステイゴールド産駒や
ゴールドアリュール産駒が出走していなかった(そして、面倒だったのであまり深く考える気もなかった)ので、つれない返事を返すと、にわかサイン馬券師の友人は
「真面目に予想するよ……」というメールをレース前に返してきた。
それはともかく、今年の
京都金杯は“展開”が大きくものを言うレースとなった。
今回は昨年の勝ち馬で、前走の
阪神Cで逃げられなかった
シルポートが
逃げ宣言をしていたこともあり、
それなりのペースで進むことは戦前に予想できた。
しかし、実際は
“それなり”では済まなかった。今年も
シルポートがハナに立ったが、昨年の
京都金杯は
前半3ハロンが47秒4だったのに対し、今年は
45秒7。実に
1秒7も速かったのだ。
当然ながら、レースの結果もハイペースの影響を受けた。①~⑤着馬の
4コーナーでの位置取りを昨年と比較すると、以下のようになる。
| 着順 |
11年 |
12年 |
| ①着 |
1 |
6 |
| ②着 |
2 |
15 |
| ③着 |
3 |
9 |
| ④着 |
5 |
7 |
| ⑤着 |
5 |
12 |
これを見ても分かるように、いわゆる
“前と後ろが入れ替わる”レースとなり、
シルポートは⑮着馬から7馬身離されたシンガリの⑯着に敗れ、道中で好位にいた馬たちも軒並み馬群に沈んだ。
そんな中、
マイネルラクリマは好位のすぐ後ろを追走し、4角6番手から外を回して残り200mで抜け出して、後続の追撃を寄せつけずに勝ち切った。
後方にいた馬が有利な流れで、外を回して押し切ったレースぶりは、なかなか
強い内容といえるのではないだろうか。
マイネルラクリマは、これで
京都芝で2戦2勝。これだけ見ると
“京都が得意”ということだけに目が行ってしまいそうだが、もう一度成績を振り返ると、
コーナーが2つのコースは[3.1.3.1](唯一の着外は
NHKマイルCの⑥着)、
3つ以上のコースが[0.1.0.3]という特徴も見えてくる。
レース後に鞍上の
松岡騎手は
「スタミナがある馬」といった趣旨のコメントを残している。そうなると今回のように、
直線の長いコースで早めに抜け出し、後続の脚を封じる競馬が合っているのでは?という仮説も成り立つだろう。
実際のところ、京都芝の重賞で
マイネルラクリマに出走権があるレースは、1200mのレースを除いてすべて外回りで開催されるので、
「マイネルラクリマは京都が得意」とだけ考えてしまっても問題ないとは思う。しかし、他に
コーナーが2つで直線が長いコース(たとえば東京芝1600mの
安田記念とか……)に
マイネルラクリマが出走してきた時に、狙ってみても面白そうだ。
一方、
マイネルラクリマとは逆に、1番人気で⑤着に敗れた
サダムパテックは、この
ハイペースが合わなかった可能性がある。OPで連対した3レース(
東京スポーツ杯2歳S①着、
弥生賞①着、
皐月賞②着)は、いずれも
1000m通過が60秒以上で遅めのペースだった。
今回の
サダムパテックは、道中は後方に位置して直線で脚を伸ばしたが、差し切るまでには至らなかった。これまではスローの差し脚勝負で結果を残してきた
サダムパテックにとって、このペースは速すぎたか。もう少しゆったり流れる条件なら、巻き返す可能性は十分だろう。
結果的に、今回は
シルポートが作ったハイペースが
マイネルラクリマにとって最適なペースとなり、
サダムパテックにとっては苦しい流れになった、ということなのではないだろうか。
マイネルラクリマの鞍上を務めた松岡騎手は、昨年の
中山金杯(
コスモファントム騎乗)に続き、これで東西の
金杯を連覇となった。昨年と同じ好スタートとなったが、昨年はケガなどもあって、勝ち星がなかなか伸びなかった。残念ながら続く京都12レースで落馬し、骨折の疑いもあるとのことだが、早期に復帰し、今年こそ
幸先のいいスタートとなってほしい。
ちなみに先述の友人は、「今年は
辰年だから、大久保『
龍』厩舎の
ダノンシャーク(2番人気②着)を軸にして、バッチリ当てた」らしい。「結局サイン馬券かよ!」というツッコミをグッと飲み込みつつ、こちらも
幸先のいいスタートで、何よりです(笑)。