2歳女王に強力なライバルが誕生したのは間違いなさそう
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
シンザン記念の優勝馬は
クラシックを勝てない、などという話がある。
02年には36回目にしてついに、
タニノギムレットが
日本ダービーを制したものの、それから立て続けに
クラシックホースが誕生したかといえば、そんなことにはならなかった。昨年こそ②着
オルフェーヴルが
三冠を、そして③着
マルセリーナが
桜花賞を制したが、これは
「優勝馬」ではなく
「出走馬」である。
そこでふと、もし
シンザン記念が2000mだったら、と思ったのだが。98年まで
シンザン記念と同じ1600mで行われていた同時期の
京成杯。99年から2000mになり、なにかが変わったかといえば、勝ち馬に関して言えば、その状況は
シンザン記念とさして変わりない。
せっかく
皐月賞と同コース、同距離にしたにも関わらず、その
皐月賞を制した馬はなし。
クラシックで言えば10年の
日本ダービーを制した
エイシンフラッシュ1頭、
シンザン記念の
タニノギムレット1頭と似たようなものだ。
ただ、今年の
シンザン記念出走馬を見て、そんな流れがなにか変わりそうな雰囲気を感じ取った人もいたのではなかろうか。
「牝馬が勝てば」。ざっとメンバーを見渡して、成績に大きな
傷がついていない馬、
壁に当たっていない馬といえば、牡馬では2戦して②①着の
ピュアソウルくらいに思えた。
対して2頭参戦した牝馬、
サンシャインは前走1番人気で新馬勝ち。そして
ジェンティルドンナは2戦とも1番人気で②①着。
クラシック第一弾の
桜花賞が同距離・1600mということや、過去10年で③着以内に入った牝馬2頭・
ダイワスカーレットと
マルセリーナがともに
桜花賞馬になっていることからも、今年も牝馬2頭の走りによっては……という
シンザン記念だった。
果たして
「シンザン」記念が、そんな
「牝馬のクラシック登竜門」的な位置づけで良いのか、その役割は同じ京都1600mでも
エルフィンSじゃないか、という話は別にして。今年の
シンザン記念を制したのは、そんな牝馬の1頭・
ジェンティルドンナだった。
前記の通り、過去2戦とも1番人気で②①着。初戦は雨の
不良馬場、まるでダート戦のような時計のかかる厳しいコンディションだった上、4コーナー手前で外に振られる
不利もあった中で、直線よく脚を伸ばして②着。続く前走は一転、レースの上がりが34秒4と速かったが、道中3~4番手から前が開くのを待ってスパッと突き抜け3馬身半差。8枠16番から内に入り、馬群で我慢する形も経験させていた。
そして今回。
勝ち時計1分34秒3は特筆するほど速いわけでもないが、このレース過去10年の中では
一昨年と並んで2番目のタイム。
ジェンティルドンナは
新馬戦が
不良馬場の
1分41秒0、そして前走もスローで
1分36秒7だったが、いとも簡単に2秒4も時計を詰めてきた。そして、直線は
シゲルアセロラと
プレミアムブルーの間を突いて一気の伸び。前走の経験もしっかり活かしての快勝劇となった。
全姉・
ドナウブルーは昨年、1番人気で⑤着に敗れると、その後は賞金加算も優先出走権獲得もならず、
牝馬三冠は結局不出走。しかし
ジェンティルドンナは、これでなんの不安もなく
クラシックへ駒を進められる。
このレースで③着だった
マルセリーナは
桜花賞馬に。②着だった
ダイワスカーレットは
桜花賞、
秋華賞の
2冠に加え、
エリザベス女王杯、さらには
有馬記念まで。さて、勝利を手にした
ジェンティルドンナは?
そんな単純な話でもなかろうが、
2歳女王・ジョワドヴィーヴルに強力なライバルが誕生したのは間違いなさそう。さて、この2頭。
同馬主でもあり、直接対決は本番で、ということになるのかどうか。いずれにしても、
桜花賞が楽しみになってきた。