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“コツコツ派”のヒラボクキングが、重賞2戦目で大躍進
文/編集部(T)、写真/森鷹史


昇級戦の馬が敗れると、「クラスの壁があった」「このクラスは厳しいか」というような言葉をよく聞く。連勝を重ねてトントン拍子に出世してきた馬が、クラスが上がったとたんにコロッと負けるというのは、よくある話だ。

もちろん、未勝利戦から準OPまでを連勝し、重賞初挑戦となった昨年のみやこSでも②着したトウショウフリーク(今回は3番人気に推されたが⑦着に敗れた)などのように、そんな壁をものともせずにトントン拍子に出世していく馬もいる(ちなみに、そんなトウショウフリークも、G1初挑戦となった昨年のジャパンCダートでは、ハナに立てなかったこともあってか⑮着に敗れている)。

話を戻すと、連勝を重ねてきた馬は人気になりやすいが、今回の平安Sを制したヒラボクキングトウショウフリークなどとは逆に、コツコツと戦績を積んでクラスに慣れながら出世していくタイプだった。

ヒラボクキングはこれまで掲示板を外したことがない安定感を誇るが、過去にクラス初挑戦となったレースは④②⑤⑤着と、すべて敗れている。昨秋に1000万と準OPを連勝しているが、これは準OPへの再昇級戦で、準OP初挑戦ではなかった。

ヒラボクキングにとって初重賞挑戦となった昨年のみやこSでは、勝ったエスポワールシチーから1秒0差をつけられて⑤着に敗れている。

「クラスの壁」という言葉があるということは、ヒラボクキングのような馬が「ああ、やっぱりクラスの壁か……」という言葉で片付けられやすい、という面の裏返しでもある。昇級戦で敗れた馬が、次走でガクッと人気を落とすということは、これまたよくあることだ。

今回、ヒラボクキングは10番人気に甘んじた。しかし、重賞2戦目過去4勝を挙げている得意の京都ダ1800mで、いわゆる“走り頃”だった、ということなのかもしれない。要するに「クラスの壁」ではなく、クラス慣れが必要なタイプだった、ということなのだろう。

レースを振り返ると、トウショウフリークが押してハナを主張し、ヒラボクキングは2番手、エスポワールシチーは3番手と、隊列はすんなりと固まった。

ヒラボクキングは3コーナー過ぎで前を捉えにかかり、直線入口で早くも先頭に立って、②着のエスポワールシチーの追撃を寄せつけずに1馬身半差をつけてゴールに飛び込んだ。

不良馬場ではあったが、勝ち時計の1分48秒190年以降の京都ダ1800mでは2位タイの好タイム。正攻法の競馬エスポワールシチーを完璧に封じたレースぶりは、単勝10番人気の馬とは思えないほど力強いものだった。

一方、圧倒的1番人気に推されたエスポワールシチーが、直線で前を行くヒラボクキングをなかなか捉えられない姿を見て、「ああ、やっぱり今年もか……」と思った方は多かったのではないだろうか。

今回のエスポワールシチーにとって、データ上で最大のネックといえば、00年以降の平安Sで1番人気馬が0勝ということだった。エスポワールシチー自身も09年の平安Sで1番人気に推されて②着に敗れており、これで1番人気で敗れるのは2度目となってしまった。

データをもとにして予想するとき、『過去5年で0勝』だったら、「たまたまでしょ」と片付けることもできそうだが、『過去12年で0勝』となると、さすがに自分は少し気になったが、皆さんはどうだっただろうか。

エスポワールシチーはすでに7歳で、全盛期の力にないという声もあるが、米遠征以降もG1では①着こそないものの③②④③着、G2、G3で①①②着と、安定して力を発揮している事実もある。

高齢馬の活躍が目立つ最近の傾向からすると、まだまだもうひと花、ふた花咲かせることも十分に可能なはず。スマートファルコントランセンドとの再戦に向けて、再浮上してくれることを期待したい。

スマートファルコントランセンドとの対戦が待つのは、ヒラボクキングも同じ。今回エスポワールシチーを破ったことで、この2頭とG1の舞台で戦う日がいずれやってくるだろう。

これまでの傾向からすると、G1での緒戦には疑問符がつくかもしれない(?)。しかし、もし負けたとしてもそこで見限ったりせず、次走以降も狙っていく価値は十分にあるのではないだろうか?