シルクフォーチュンの脚には、水かきならぬ砂かきが付いてるんじゃないか!?
文/編集部(M)、写真/米山邦男
芝と
ダートの違い、
マイル戦と
1400m戦の違いはあるものの、今回の
根岸Sでの
シルクフォーチュンの姿は、一昨年の
富士Sにおける
ダノンヨーヨーと被って見えた。
2頭は奇しくも同じ馬番(
5枠9番)で、スタート直後に後方に下がり、
大外を回って他馬をまとめて差し切っている。他馬とは
力の違いを見せつけるような競馬っぷりだったと言えるが、どちらも凄いのは、
先行馬が残る流れだったことだ。
ダノンヨーヨーが制した2010年の
富士Sは、②&③着に先行した
ライブコンサートと
ガルボが入線した。そして、今回の
根岸Sにおいても、先行した
トウショウカズンが
②着、逃げた
タイセイレジェンドが僅差の
④着。決して差し馬向きの流れではなかったことが賞賛に値すると思うのだ。
今回、
シルクフォーチュンが計時した上がり3Fは
34秒9で、これはもちろん
メンバー中最速。稍重から良馬場に移行した後の馬場状態だったとはいえ、
良馬場のダートで
34秒台の上がりを使うのだから、他の馬はたまったものじゃない。
これが
プロ野球の世界なら、相手チームの監督から
難癖をつけられてもおかしくないような気がする。ほら、調子の良いバッターの
バットに対して、違反じゃないのかと、審判に検査をさせることってあるじゃないですか。
あれって、
心理的動揺を誘うのが主な目的なんでしょうけど、
シルクフォーチュンの場合も、
「良馬場のダートで34秒台の上がりを使うなんて、脚に水かきならぬ砂かきが付いてるんじゃないか!?」と言われそうだと思うのだ。
ただ、たとえそれを言われたところで、
シルクフォーチュン自身は
「はあ?」という心境だろう。良馬場のダートで
34秒台の上がりを使ったのは、なにも今回が初めてではなく、過去に
6度も計時していたからだ。
「いつもと同じ脚ですけど、何か?」と聞き返してくるのがオチだろう。
良馬場で行われた
JRAダート重賞で、
34秒台の上がりで優勝したのは、
シルクフォーチュン自身の2011年
プロキオンS(34秒9で①着)以来になる。
シルクフォーチュン以外には何がいるか、調べてみたら、
「あの馬」が該当した。そう、
ブロードアピールだ。
ブロードアピールは東京ダートで2勝を挙げていて(2000年
根岸S、2002年
ガーネットS。いずれも1200m)、両レースとも
34秒3という上がりを計時している。いくら1200m戦とはいえ、良馬場のダートで
34秒台前半の上がりを使うのだから、これまた凄いものだ。
シルクフォーチュンの末脚は
ブロードアピール並みと言えるだろうが、今後はやはり
マイル戦でも同じような切れ味を見せられるかが焦点となるのだろう。
シルクフォーチュンが
34秒台の上がりを計時したのは、いずれも
1400m以下。
1600m以上の距離では、上がり3Fは
35秒2~39秒7となっている。
ダートで35秒台前半の上がりを使えば、それはもちろんかなり速いわけだが、
シルクフォーチュンはダート1600mでは
⑦着(2010年
武蔵野S)、
③着(2011年
南部杯)、
⑨着(2011年
武蔵野S)と連対圏まで届いてない。その3戦は重賞でスローペースでもないから、
脚が溜まりづらかったという面もあるのだろう。
今後の大目標は
フェブラリーSなのだろうが、距離が1F延びても切れる脚を使えるだろうか。今回の根岸Sは
過去最多体重(470kg)で、まだまだ成長している印象もあるだけに、どれだけ
伸びしろを見せられるか、注目したい。
ちなみに、
シルクフォーチュンは良馬場のダートで
34秒台の上がりを計時したことが
7度あるが、これを
枠順で分けると面白いことになっている。
ひと桁馬番だと4戦4勝で、
ふた桁馬番だと④⑥③着なのだ。
過去3度のダート1600m戦も、
③着となった昨年の
南部杯が
ひと桁馬番(馬番8番)で、
ふた桁馬番の2戦では
⑦⑨着に敗れている。
フェブラリーSでの
シルクフォーチュンは、
枠がどこになるかにも注目するといいだろう。
枠順と言えば、今回の
根岸Sでの
ダノンカモンは
内目の枠がアダとなってしまったようだ。
3枠5番という枠順で、中団で砂を被り、直線でも前を捌くのに苦労していた。
抜け出ると気を抜く面があるのかもしれないが、
スムーズに動く形の方が合うのかもしれない。昨年の
南部杯で
トランセンドに迫った内容(アタマ差
②着)を考えても、
フェブラリーSで巻き返す可能性は十分あると言えるだろう。