ふた組の兄弟姉妹が、その優秀さを証明したレース
文/編集部(T)、写真/森鷹史
私事で恐縮だが、今週土曜は弟の
結婚式に出席してきた。兄が弟の結婚式に出席するときは、嫁を連れて行くのが普通だが、独身の自分はもちろん一人での出席となった。
親戚の目も、何だか責めるような感じなのは、自分の気のせいだろうか(笑)。自分より先に弟が嫁をもらうというのは、なかなか複雑なもの。自分としても、先を越されたことに対する
焦りというものがないわけではない。
兄弟姉妹がともに優秀なことを
「賢兄賢弟」、「賢姉賢妹」などという言葉で表現する。自分の兄弟が
「賢兄賢弟」であるかどうかはこの際置いておいて(笑)、今回の
京都牝馬Sは
ふた組の兄弟と姉妹が、ともに優秀であることを証明するためにあったレースだったのかもしれない。
まず、ひと組目は勝ち馬の
ドナウブルー。全妹の
ジェンティルドンナは、ひと足先に昨年姉が⑤着に敗れた
シンザン記念で初重賞勝ちを達成していた。
ドナウブルー自身は2歳時にデビュー2連勝の後、前述したように昨年の緒戦となったこのコースの
シンザン記念で敗れ、そこから
重賞で④⑥⑤着、適鞍に戻った1000万でも③着と、
惜敗が続いた。
壁を突き破れそうで突き破れない姿は、まるで出口の見えないトンネルではなく、
光は見えているのになかなか出口にたどり着けないトンネルのようだった。
しかし、昨年最終戦となった
牝馬限定の1000万で、転機が訪れる。転機のきっかけとなったのは、
ふた組目の兄弟となるデムーロ騎手兄弟。
ドナウブルーに初騎乗となった兄の
ミルコ・デムーロ騎手は、それまでより少し前目の2番手につけさせ、4角で早めに先頭に立って押し切った。
そうこうしているうちに、全妹の
ジェンティルドンナが重賞勝ち。人間なら
焦りも出るところかもしれないが、幸い(?)馬はそんなことを知るよしもない。ようやく長いトンネルを抜けた
ドナウブルーの手綱をこのレースで受け継いだのは、
クリスチャン・デムーロ騎手。M・デムーロ騎手の弟だ。
距離が200m短縮された今回は、前走とは違って好位からの競馬となったが、兄がしたレースと同じような感じで、
ドナウブルー&
C.デムーロ騎手は4角で進出。前を割って直線入口で先頭に立って、内から迫った1番人気
ショウリュウムーン、外から迫った3番人気の
アスカトップレディの追撃を寄せつけずに、
重賞初制覇を飾った。
結果を見ると、
4角2番手からメンバー1位タイの上がり
34秒6でまとめられては、後続はなすすべもない。まさに
完勝というべき内容だった。
弱冠19歳の
C・デムーロ騎手にとっても、これが
重賞騎乗2回目での初勝利となった。好位で折り合いをつけて、4角でもスムーズに前を捌いて突き抜けたレースぶりは、19歳とは思えないほど落ち着き払ったもの。兄の
M・デムーロ騎手は重賞騎乗20回目での勝利だったので、この点では早くも
“兄越え”を果たしている。
01年に初来日を果たした兄は、来日3年目となる03年の
皐月賞(
ダイワメジャー)で初G1制覇を果たしている。昨年初来日を果たした弟が今年G1を勝つと、2年目でのG1勝ちとなるが、その点でも
“兄越え”なるか、注目していきたい。
ドナウブルー姉妹にとっても、次なる目標となるのは、姉妹どちらが先にG1勝ちを果たすか、という点。
ジェンティルドンナにとっては
ジョワドヴィーヴルなど、
ドナウブルーにとっては復活を期す
アパパネなどがライバルとなる感じだろうか。
ドナウブルーの視点で見ると、女王
ブエナビスタの引退で、
G1取りへのハードルが少しだけ下がったのは幸いだろう。自分は嫁取りでは弟に先を越されたが、
ドナウブルー姉妹のG1取りレースでは、できれば
姉のドナウブルーに頑張っていただきたい、と思っている(笑)。