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今回のレースでの“妙”は、騎手にあった
文/編集部(M)、写真/米山邦雄

「終わってみれば○○だった」というのは競馬ではよくある話だが、今年の東京新聞杯は、「終わってみればニューイヤーSと同じ①~③着だった」

ニューイヤーSは、①着コスモセンサー②着ガルボ③着ヒットジャポットという着順で、今回の東京新聞杯は①着ガルボ②着コスモセンサー③着ヒットジャポット①着と②着が入れ替わっただけだった。ただ、大きく異なったのは、その人気配当だった。

ニューイヤーS①着(コスモセンサー)が1番人気②着(ガルボ)が3番人気③着(ヒットジャポット)が2番人気という堅い決着だったのに、今回は①着(ガルボ)が8番人気②着(コスモセンサー)が4番人気③着(ヒットジャポット)が7番人気で、いずれも人気を落としていた。そのため3連複の配当は、790円(ニューイヤーS)→9430円(東京新聞杯)で、10倍以上に膨れることになった。

それだけニューイヤーSが評価されていなかった、もしくは、他路線の馬に目が行ってしまった人が多かったということだろうが、今回については、前哨戦のレース評価云々よりも、ペースと枠順の差が大きかったように思う。

今回の東京新聞杯は戦前からペースが遅くなりそうだったが、その通りに前半の3Fは35秒1と遅く、上がり3Fは34秒2と速かった。逃げて最後まで粘ったコスモセンサー蛯名騎手が絶妙のペースを作ったと言えばそうなのだろうが、真ん中から外枠に入って差そうと考えていた馬&騎手にとっては、つらい流れだったことだろう。

過去の東京新聞杯と似たペースの年を探してみたら、一昨年に近かった。一昨年は前半3Fが34秒8で、上がり3Fが33秒9。その結果は、馬番4番以内で道中は4番手以内に付けた馬が①~③着を独占したのだった。

今回は先行して馬券に絡んだ馬が連対圏の2頭だけで、③~⑤着には差した馬が入ったわけだが、③~④着は2~4枠の馬だった。やはり序盤に馬群の内目を走れていたかどうかが重要だったように思う。

レースを予想する際は、前哨戦となったレースのレベルを測ることも重要だろうが、枠順どんなペースになりそうか、そして、芝の場合は馬場のどこを通った馬が伸びているか、それを加味することも大切だろう。

まあ、まさしく「言うは易く、行うは難し」ですね(苦笑)。でも、そのアプローチが遠回りのようでいて、いちばん堅実だと思うので、オススメしますし、自分自身も続けていって極めたいものです。

それにしても、今回のレースでの“妙”は、騎手にあったと思う。絶妙のペースを作った蛯名騎手もそうだし、そのコスモセンサーについて、ガルボ石橋脩騎手が騎乗したことがあり(アーリントンCも勝っている)、地力の高さを把握していた点が面白かった。

「自分が騎乗していたら…」と考えるのは、競馬ファンなら誰でもすることだと思うけれど、私はレース後、すぐに「自分がガルボに騎乗していたら、たぶん届かなかっただろうなあ」と感じていた。

それはコスモセンサーが東京では押し切って勝ったことがなかったからで、自分がガルボに騎乗していたら、最後に脚色が鈍るだろうと考えて呑気に乗っていたと思うからだ(実際にそうなると思ってレースを見ていた)。おそらく末脚が切れる馬の動向の方が気になり、「脚を余して」コスモセンサーの逃げ切りを許していたと思われる。

その意味では、コスモセンサーに騎乗経験のある石橋脩騎手ガルボ陣営(清水英厩舎)が騎乗依頼をしたのもポイントだったのだろうし、石橋脩騎手がその経験を存分に活かしたとも言えるのだろう。競馬はこういう“妙”もあるから面白いんですよね。

今回のレースを終えて、おそらく今年の安田記念は大混戦のまま突入するんだろうなあという感想を持った。前述したように、今回はペースと枠順が結果に大きな影響を与えたと思っているから、敗れた馬たちをこれで見限ることはできない。ただ、「次に信頼できるか?」と言われればそれも難しそうで、“難儀”という言葉だけが残っちゃったように思う。

ひとつだけはっきりとした光明が見えたのは、唯一の牝馬で④着まで差し込んだフミノイマージンだろう。2枠4番という枠順で、それほど距離ロスなく走れていたが、直線で他馬を捌くのに苦労していて、それでいて③着ヒットジャポットクビ差だった。

久しぶりのマイル戦にも対応できたと言えるし、冬場に行われる東京新聞杯では牝馬の成績が良くないから、④着でも上々だろう(馬券を買っていた人は残念でしたが…)。ヴィクトリアマイルへ向けて、楽しみな存在となるのは間違いなさそうだ。