ワールドエースはダービー馬になれる資質を十分に持っている
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
「ワールドエースはダービー馬の資質を持っている」と言うと、
「確かに」と同意していただける方もかなり多いだろう。一方で、
「まだ早すぎないか?」と言う方もいるかもしれない。
ただ、今回の
ワールドエースの勝ちっぷりを見れば、それが
荒唐無稽な話ではないということには、ほとんどの方が同意してくれるのではないだろうか。
レースは
アルキメデスがハナを切り、
1000m通過は61秒7のスローペースとなった。
それを
ワールドエースは中団馬群のいちばん後ろに位置取り、4角手前で大外を通って徐々に進出。そのままの勢いで並ぶ間もなく差し切り、連れて差し込んだ②着の
ヒストリカルに1馬身半差をつけ、最後は手綱を抑える余裕を見せた。
ワールドエースは昨年12月の新馬戦で快勝。しかし、前走の
若駒Sでは
5頭立てで
1000m通過が65秒4の超スローペースということもあって、4角シンガリの5番手からメンバー1位の上がり33秒6の脚は使ったが、②着が精一杯だった。
若駒Sで差し切っていれば、同じレースで5馬身差の圧勝を飾った父
ディープインパクトと同じように、クラシック戦線での
人気と
期待が爆発していた可能性もあった。
しかし敗れたことで、
「そこまで強いのか?」という疑念が湧いたのは事実だろう。その証拠に、今回の
単勝オッズは2.1倍。初めての重賞挑戦ではあったが、
若駒S前の期待感を考えれば、意外なほど人気がなかった(それでも抜けた1番人気ですが)。
ここで、これまでの
ワールドエースの戦績を振り返ると、98年の
ダービー馬で、同年にこのレースを制した
スペシャルウィークのそれとよく似ていることを思い出す。
スペシャルウィークは新馬戦で圧倒的な人気を背負って①着の後、明け3歳緒戦の
白梅賞で地方馬
アサヒクリークによもやの敗戦。しかし、続く
きさらぎ賞で
ワールドエースと同じように
格上挑戦を敢行し、後に
ダービーでも②着する
ボールドエンペラーに3馬身半差をつけて圧勝した。
2戦目で負けたシチュエーションは違うが、この2頭はここまではよく似ている。
また、近年の
ダービー馬は
新馬、未勝利勝ちの後に条件戦やOP特別などで取りこぼしているケースが多い。昨年の
ダービー馬オルフェーヴルは
芙蓉S②着、10年の
エイシンフラッシュは
萩S③着、08年
ディープスカイは
500万②着、07年
ウオッカは
黄菊賞で②着に敗れている。
敗因はいろいろあるだろうが、これはいずれも芝1600~1800mのレースで、芝2400mの
ダービーとは少し条件が違う。
『俺(私)が目指すのはダービー。条件違いのレースで本気は出せない』と馬が思っているかどうかは別にして、条件が合わなかった可能性はあるだろう。
ここで冒頭の
「ダービー馬になる資質」に戻ろう。近年の傾向を見ても、
ダービーで勝つためには、
“負けても良い(勝ってもデメリットがある)ところでは無理をせず、勝つべきレースできっちりと勝つ”ということも重要なのではないだろうか。
そう考えると、
ワールドエースの戦績は、
ダービーを勝つためには理想的とさえ思えてくる。前述の
若駒Sは芝2000mではあったが、5頭立てでかなり変則的な条件だった。
池江師は
若駒Sのレース後に
「仕掛けて前に行っていれば勝てたかもしれないが、それではこの馬の将来にプラスにならない」といった趣旨のコメントをしている。
その言葉通り、前走で控えたことも奏功してか、今回の
ワールドエースはスローペースでも後方でガッチリ折り合って直線で突き抜けた。今回は
賞金を加算しなければならないレースだったが、きっちりとこれをクリアし、
クラシック戦線の主役を演じる権利も得た。
このままの勢いで、近年の
ダービー馬や
スペシャルウィークのような足跡を、
ワールドエースが歩む可能性も十分あるだろう。
共同通信杯に出走予定の
ディープブリランテなど、同世代の
ディープインパクト産駒との対決が楽しみになった。
その
ディープインパクト産駒は今回3頭が出走して、その3頭が馬券圏内を独占。
ディープインパクト産駒が重賞でワンツースリーを飾るのはこれが初めてとなる。
ワールドエースの母
マンデラはドイツ産で、重賞勝ちこそないが、
独オークスで③着、仏米の重賞でも③着に入っている。
京成杯の速攻レースインプレッションでも書いたが、
“ディープインパクトは海外で活躍した牝馬と好相性”という傾向も、やはり健在だった。
ドイツ牝系ということで言えば、
阪神JFを勝った
ジョワドヴィーヴルの牝系もドイツにルーツを持つ。今年のクラシック戦線は、
ドイツ牝系を持つ
ディープインパクト産駒が席巻する……かもしれない?