特殊なペースのクイーンCを制したヴィルシーナの今後は!?
文/編集部(W)、写真/川井博
ハナを主張しそうな馬が見当たらず、
スローペース濃厚というメンバー構成だったが、大方の予想通り、初めて逃げた
アラフネが引っ張った流れは1000m通過
62秒7で、4F目と5F目に
13秒1、
13秒0と13秒台のラップが刻まれた。
90年以降、
道悪や中山芝1600mで行われた03年も含め、道中のラップで13秒台を計時したのは00年の5F目(
13秒2)のみ。それが2回も記録されたとなれば、今年のペースがいかに
特殊だったかがお分かりいただけるのではないだろうか。
さらに言えば、90年以降でレース上がりが
34秒9以内だったのは06年(
34秒7)と09年(
34秒9)の2回で、今年は11秒5-11秒0-11秒4と11秒台のラップが並び、06年より0秒8も速い
33秒9だったのだから、このことからも今年の流れの
特殊性が感じ取れる。
そんな展開の一戦を制したのは、これまた珍しい1600m以下に出走経験がなかった
ヴィルシーナ。90年以降、1600m以下に出走経験がなくて優勝したのは00年
フューチャサンデー(中山ダ1800mで新馬勝ちして直行)のみだった。
ヴィルシーナは10~11頭立ての芝1800~2000mで戦ってきていたので、
多頭数のマイル戦で流れに乗れるかがポイントだと思っていたところ、
岩田騎手がスタートで軽く仕掛けただけですんなりと2番手に落ち着く。
前半3Fが36秒6と遅かったことも幸いした印象だが、スローペースのため、後続で
掛かり気味になる馬が目立つ中、出して行って2番手で折り合うあたりが
センスの良さ、
能力の高さなのだろう。
残り2Fを過ぎたあたりから
岩田騎手が満を持して追い出し、背後から
イチオクノホシが迫ってきたものの、馬体が並ぶ場面もなく、リードを保ったまま押し切り。
ヴィルシーナは自己ベストの上がり33秒6を計時して後続の追撃を封じ込めてみせた。
ヴィルシーナのオーナーは元メジャーリーガーの
佐々木主浩氏。現役時代は速球と落差のあるフォークボールを武器に三振の山を築いた名投手だったが、
ヴィルシーナのレースぶりと
佐々木主浩氏のフォークボールがなんとなくイメージとして重なる。
2番手からあの脚を使われては、2ストライクに追い込まれてからあのフォークボールを投げられては、
どちらも相手は為す術なし。おまけに、自分の馬券は
オメガハートランド(⑨着)から当てにいって
空振りに終わるという……いろんな意味で
完封です(笑)。
ヴィルシーナはこの後、
桜花賞(阪神芝1600m、4月8日)に直行する可能性もあるとのこと。4戦3勝③着1回という
パーフェクトに近いキャリアであり、
桜花賞でも上位人気に推されることは間違いないだろう。
だが、マイルは今回出走したとはいえ、速い流れを経験していないことは
桜花賞において
不安要素になるはず。また、90年以降、
クイーンCの勝ち馬は
桜花賞で
[0.2.2.15]と勝ち切れていないというデータも存在する。
その一方、90年以降では、
ウメノファイバー(99年)、
ダイワエルシエーロ(04年)が
クイーンC勝ち馬として
オークスを制している。
ヴィルシーナは牡馬相手に阪神芝2000mの
エリカ賞を勝っている馬でもあり、
樫の舞台がよく似合うと思うのだが、どうなるだろうか。
そうは言いながらも、今年のディープインパクト産駒の勢いは凄まじく、同産駒が芝1600mのG1で
[3.2.2.7](勝率21.4%、連対率35.7%、複勝率50.0%)という成績を見てしまうと、
ジョワドヴィーヴル、
ジェンティルドンナという強敵がいるとはいえ、当然、
ヴィルシーナは
桜花賞でも軽くは扱えないか。
なお、
「ジェンティルドンナ、ジョワドヴィーヴル、ヴィルシーナ」は、牝馬にはまだ先着を許していないディープインパクト産駒で、かなり
強力なクリーンナップという感じ。まるで
「バース、掛布、岡田」、いや
「秋山、清原、デストラーデ」か。どちらにせよ、例えが古くてスミマセン(笑)。
いずれにしても、特殊なペースの
クイーンCを制した
ヴィルシーナが、この後の
桜花賞、
オークスでどんな結果を残すのかは非常に興味深い。
ヴィルシーナとはロシア語で
「頂点」という意味らしいが、その名のごとく、
桜花賞で一気に
世代トップにまで上り詰めるのか、それとも!?