現5歳世代で、抜け出てくるのは何なのだろうか?
文/編集部(M)、写真/森鷹史
「さすが池江厩舎ですね(笑)」。レース後のインタビューで、
26年連続でのJRA重賞制覇を成し遂げた
武豊騎手は、笑みを浮かべながらそう話した。
上位人気馬に差しタイプが多かったことを見越してか、早めに動く形を取って快勝した
武豊騎手の手綱捌きも、
「さすが武豊騎手」と言いたくなるものだったが、確かにその
馬体重を見ると、
「さすが池江厩舎」という感じもする。
今回は、間隔が開いて出走してきた馬が多く、
馬体重が増えて出てきた馬が過半数を占めた。上位人気馬は特に増加幅が大きく、1番人気に推された
ダークシャドウは
8kg増(516kg)、2番人気の
ウインバリアシオンは
10kg増(522kg)、3番人気の
ヒルノダムールは
16kg増(482kg)。この3頭は、それぞれの
過去最多体重での出走だった(馬体重の発表がなかったフランスのレースは除く)。
体重が増えていても好走する馬はいるし、その増減が
勝因&敗因に直結するかどうかは不明な点も多いけれど、予想ファクターとして馬体重を扱っている者とすれば、やはり
大きく変わった馬には不安を覚えるものだ。
事実、先週の
『発掘データ箱』に記されていた通り、先週までに行われた今年のJRAでの
芝重賞(12レース)のうち、プラス体重の馬がワンツーを飾ったのは1レース(
シルクロードS)しかなく、そのレースを含めても、
前走から6kg以上増えていた馬同士での①&②着独占は起こっていない。
このデータが頭の中にあったので、レース前に馬体重が発表された時は
軽い胸騒ぎを覚えたし、それは東京で行われた
共同通信杯に対しても感じていた(単勝1.4倍の
ディープブリランテが
12kg増の510kgだったため)。
京都記念で体重が6kg以上増えていない馬を探したら、それは
5頭だった。6kg減(494kg)の
リッツィースター、1kg減(494kg)の
トレイルブレイザー、4kg増(440kg)の
トーセンラー、2kg減(514kg)の
ロードオブザリング、4kg増(502kg)の
スイートマトルーフだ。結果的に、
マイナス体重で出てきた
トレイルブレイザーが2馬身差で快勝を飾ったわけで、だからこそ、
「さすが池江厩舎」と感じたのだ。
ちなみに、
共同通信杯では12kg増(510kg)だった
ディープブリランテが②着となったが、勝った
ゴールドシップは4kg増(506kg)だった。土曜日の
クイーンCは2kg減(438kg)だった
ヴィルシーナが優勝したので、今年のJRAの芝重賞で
『前走から6kg以上増えていた馬同士での①&②着独占は起こっていない』というのは、
まだ崩れていない。
今年のJRAダート重賞(2レース)においても、6kg以上増えていた馬同士でのワンツーは起こっていないので、来週の
ダイヤモンドS&
フェブラリーSにおいても、
馬体重の増減を予想の参考するのは悪くないのではないだろうか。
今回の
京都記念を終えて、
『現5歳世代はやっぱり強い』という話は多方面から出てきそうだが、では、
『5歳世代でいちばん強いのは何か?』と言われると、答えに窮する人も多いのではないだろうか。
現5歳世代で、2歳牡馬王者となったのは
ローズキングダムだが、同馬はその後、
ジャパンCでの①着こそあるものの、昨年以降は
京都大賞典しか勝利していない。
ダービーを制したのは
エイシンフラッシュだが、同馬はその後が惜しい競馬が続いているが
未勝利で、
菊花賞を制した
ビッグウィークもその後が
未勝利。
皐月賞で①&②着となった
ヴィクトワールピサと
ヒルノダムールがその後に
G1を制しているから、
皐月賞のレベルが高かった可能性もありそうだが、
ヴィクトワールピサは昨年の
ジャパンC、
有馬記念と敗れて
種牡馬入りし、
ヒルノダムールは今回
③着に敗れてしまった。
G1は制していないが、
トゥザグローリー、
ルーラーシップ、
ダークシャドウ、
ペルーサなども、ここまでに名前を挙げた馬たちと
勝ったり負けたりを繰り返しているから、実力的に大差はないのだろう。果たして、この中から、文字通り、
抜け出てくるのは何なのだろうか?京都記念でのオッズを見る限り、戦前、
トレイルブレイザーについてはひとつ割り引いて見ていた人が多かったようだ。しかし、思い返してみれば
ジャパンC(④着)では
エイシンフラッシュ、
ローズキングダム、
トゥザグローリー、
ヴィクトワールピサ、
ペルーサに先着し、⑤着だった
ウインバリアシオンも抑えている。
トレイルブレイザーは3歳クラシックでの出走が
菊花賞(⑧着)だけで、早くから活躍していたわけではないので、そのイメージが強く残っているのかもしれないが、すでに
現5歳世代の中でもトップクラスに入っていたのだろう。自分自身、その感覚が希薄だった思いがあるので、早急に改めておきたいものだ。
現5歳世代における
トレイルブレイザーは、マラソンで言えば、序盤こそ先頭集団にいなかったものの、徐々に追い上げて集団に入っている感じか。もしかしたら、
ここまでの伸びしろがいちばん大きい可能性もある。
レース後、
武豊騎手は
「この馬でドバイに行きたい」と話していた。1ヶ月半後、
トレイルブレイザーが彼の地で大仕事を成し遂げていても驚けないだろう。今年は、海外のいろいろなところで
「さすが池江厩舎」という声が聞かれても不思議ではない。