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中盤でこんなにペースが落ちたダイヤモンドSは過去に例がない
文/編集部(M)、写真/川井博


重賞で超人気薄の馬が勝つと、ついテンジンショウグン(98年日経賞)を思い出してしまう。あの時は12頭立ての最低人気で、その単勝配当は3万5570円だった。今回のダイヤモンドSでのケイアイドウソジンは単勝配当が1万9000円だったから、テンジンショウグンに比べれば衝撃は小さかったのかもしれない。

ただ、86年以降のJRA平地重賞を調べてみたら、今回の1万9000円を超える単勝配当が出たのは、3レースしかなかった。89年エリザベス女王杯サンドピアリス(単勝4万3060円)、前述のテンジンショウグン、そして、00年スプリンターズSダイタクヤマト(2万5750円)だ。これらを見れば、今回のダイヤモンドSではかなりの珍事が起こったことが理解できるだろう。

個人的に驚いたのは、ケイアイドウソジン一変ぶりだった。同馬はこれまでに連勝をしたことがなく、逆に、前走で⑩着以下に負けていながら勝利したことが3度あったので、一変実績はあったと言える。でも、5戦連続でふた桁着順に負けていながらここまで一変するとは……さすがに想像できなかった。

こんなに大敗が続いていた馬が重賞で勝利したことなんてあるのか? レースが終わってすぐにそんなことを思ったので、これも調べてみたら(86年以降のJRA平地重賞を対象)、⑩着以下を4戦以上続けて勝利した馬1頭だけいた。何だか分かりますか?

正解は、00年ダイヤモンドSでのユーセイトップランで、同馬はそれまでの前7戦が⑫⑬⑪⑩⑮⑬⑬着だった。これだけを見ると、「よくぞ一変した!」と言いたくなるが、同馬は7番人気で、単勝配当は1660円しかついていない。ユーセイトップランは2年前にもダイヤモンドSを制していて、重賞2勝の実績があったからだろう。

これに対してケイアイドウソジンは重賞での好走歴(③着以内)がなく、2500m以上での実績もなかった。単勝配当が2万円近くなったのも、無理のないことだろう。

ひとつ言えることは、冬場の古馬G3くらいなら、大敗を続けている馬でも調子と展開が合致すれば一変することも可能、ということか。まあ、そんなことを言い出したらキリがないという話もあるでしょうが…。

逃げ馬の穴というのは、でもダートでもよく起こることだが、個人的にはダートの方が当てづらい印象を持っている。それはどうしてか。

でもダートでも、人気薄の逃げ馬を狙う際は、過去に逃げたことのある馬を指名するケースが多いが、ダートの時ほど楽に逃げさせてもらえない印象があるからだ。

騎手も何が逃げるかについてはレース前にチェックしていて、当然、過去に逃げたことのある馬は頭の中に入っているのだろう。ただ、はそれでも自分の末脚を温存するケースが目立ち、ダートの方が早めに潰しに来られることが多い。ダートの方が差を詰めるのに時間がかかる、という面も影響しているのかもしれない。

それでも、ダートでも逃げの穴は起こるわけで、それはどんな時かというと、それまでに逃げたことのない馬が突如ハナを奪った時が多い気がしている。「え!? お前が逃げるのかよ!?」というケースだ。

だから、個人的には、ダート逃げ穴騎手による面が大きいと思っている(もしくは陣営の指示)。言ってみれば「逃げ宣言のない逃げ」を打った時に起こることが多い気がしているから、ダートの方が当てづらいと思っているのだ。

ダイヤモンドSのレースだから、何が逃げるかはある程度予測が付けられたのかもしれない。ケイアイドウソジンも過去に逃げて勝ったことがあったから、逃げ候補の1頭ではあったのだろう。そういう意味ではチェックしておくべき馬だった。いや、チェックしても、「さすがに粘り込むのは難しい」と判断してしまっていたと思われるが…。

今回の決着タイムは3分36秒8で、これは芝3400m戦になってから一番遅いものだった。過去の8回は3分29秒4~3分33秒6で、もっとも遅かった08年よりも3秒以上遅かったことになる。

長距離戦はペースが緩みやすいとはいえ、今回は6F目から7ハロン連続で13秒台のラップが刻まれている。過去のダイヤモンドSを振り返ってみても、中盤でこんなにペースが落ちたことはない。先週のクイーンCも超スローで上がりだけの競馬になったので、それに寂しい思いをした人は「またか…」という感想を持ったのではないだろうか。

直線距離が長いコースは、「長い直線を使っての叩き合いが見られる」と思いがちだが、「脚を温存するだけ温存する」ケースも多く、圧倒的に単調なレースが増えた。リニューアル開催間近の中京競馬場も直線距離が長くなるので、「単調なレースが増えなきゃいいが…」と危惧しているのは、私だけだろうか?