好パフォーマンスの要因は「10kg減」だと思わずにはいられない
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
偶然か必然かと聞かれれば、間違いなく偶然と答えるだろう。出走馬13頭のうち、馬体減でレースに臨んだのは6頭いて、そのうち8kg以上減っていた
ジャスタウェイ(
10kg減)、
オリービン(
8kg減)、
アルキメデス(
8kg減)が③着以内を占めたことについてである。
ただ、
ダローネガと
ジャスタウェイのどちらを
軸に取るかで迷った末、決め手となったのは
「10kg減」だった。
『メインレースの考え方』で書かれていたように、
ダローネガと
ジャスタウェイは
軸候補として浮上した一方、それぞれ
「過去10年で②着止まりが多い休み明け」(
ダローネガ)、
「過去10年で連対がない距離短縮での臨戦」(
ジャスタウェイ)という不安材料も抱えていた。
当初は
「2戦2勝の阪神芝外回りなら休み明けに目をつむってもいいか」と考え、
ダローネガを
軸にする方向に気持ちが傾いていたが、馬体重を見て
ジャスタウェイにスイッチしたのである。
休み明けで4kg増の
ダローネガよりも、休み明けをひと叩きされて
10kg減の
ジャスタウェイのほうが
仕上がり度で上だと判断し、あくまで個人的な感覚ではあるが、
ジャスタウェイの
10kg減に対し、
「なんとしてもここは好結果を出したい」という
厩舎サイドの
“意気込み”が感じられたから。
後方から伸び切れず⑨着に敗れた
ダローネガは休み明けに加え、道中で行きたがっていたことも響いたと思われるが、結果的には
ジャスタウェイが豪快な追い込みを炸裂させて
重賞初制覇を飾ることとなった。
チャンピオンヤマトが牽引したペースは1000m通過61秒1で、雨の影響が残る良馬場としてもスローだろう。その流れの中、終始、好位のインで立ち回り、直線でも外に出さず、
チャンピオンヤマトと
ヴィンテージイヤーの間を突いて抜け出した
オリービン(②着)は実にそつのないレース運びで、完全に勝ちパターンだったと思う。
かたや
ジャスタウェイは大外枠で内に入れられず、折り合いを重視した影響か最後方の外目を追走する形。開幕週や少頭数でペースアップが望みにくい状況などを勘案しても、このポジショニングは
福永騎手にとっても本意ではなかったはず。
レースにおいても、直線に向いても後方から思ったほど上がってこない
ジャスタウェイを見ていて、
「これは厳しいか…」と一瞬諦めムードになったが、ジワジワと前との差を詰め、残り100mあたりからの伸び脚が別次元。内の各馬をあっという間に交わし去り、ゴール寸前で内から抜け出した
オリービンを捕えてみせた。
ジャスタウェイが計時した上がりは
メンバー中最速となる34秒2で、
オリービン、
アルキメデスが計時したメンバー中2位の上がり(35秒0)を0秒8も上回るものだから、まさしく
1頭だけ違う脚色だったことが数字にも表れている。
豪脚を繰り出し、スローペースを最後方一気で突き抜けるレース内容から、終わってみれば、ここでは
ジャスタウェイの力が一枚上だったという感じだが、
好パフォーマンスを演じることができたのも「10kg減」が要因であるとは思わずにはいられない。
ジャスタウェイはいずれも休み明けとはいえ、馬券圏外となったのは芝1800mであり、芝1600mはメンバー中最速の上がりを計時して
[2.1.0.0]と連対を外していない。半姉
スカイノダンは
北九州記念で②着に好走するなど、芝1200m路線で活躍していて、近親には
トーヨーレインボー(
マイルCS③着)などがいる。
ハーツクライ産駒では、
ウインバリアシオンや
ギュスターヴクライが父と同じように芝の中・長距離で活躍していて、牝馬からも
秋華賞②着の
キョウワジャンヌが出ているが、
ジャスタウェイは母系の影響が強そうで、現状ではマイル路線が合っているのかもしれない。
父のハーツクライは東京芝で
[0.2.0.3](②着は
ダービーと
ジャパンC)と勝ち切れずに現役を引退したが、
ジャスタウェイは直線距離の長い芝1600mがピッタリという印象を受けるだけに、
NHKマイルC(5月6日、東京芝1600m)で楽しみな存在となってきた。