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改めて、競馬は難しいと思わされた一戦だった
文/編集部(S)、写真/川井博


かつてフラワーCというレースで馬券を獲る上で大きなポイントがあったことをご存じだろうか? それは前走に中山で①着だった馬を買うというものだ。02年①着スマイルトゥモローから08年①着ブラックエンブレムまで、7年連続で前走中山①着馬が優勝を飾っていたのだ。

09年は①~③着馬がすべて前走中山①着馬ではなかったが、出走馬のうち前走中山①着馬はダ1800mを勝ち上がったダイアナバローズのみだった。そして、10年は①着オウケンサクラこそ前走が阪神のチューリップ賞だったが、②着コスモネモシン、③着サンテミリオンは前走中山①着馬だった。

このように、前走中山①着馬を狙うのはフラワーCにおいて、とても有効な戦術だったのだ。

そして、今回の出走馬の中で、前走中山①着馬はヘレナモルフォただ1頭。また、朝から降り続ける雨がヘレナモルフォを後押しするとも思われた。というのも、ヘレナモルフォの2勝はどちらも重馬場の中山芝で挙げたものだったからだ。

さらに、過去10年のうち、阪神で行われた昨年を除くと、9年中8年で4コーナー先頭の馬が馬券圏内に入っていて、07~09年では逃げ馬が3連勝もしている。データを探れば探るほど、ヘレナモルフォの好走は間違いないと確信を強めていったのだが……。

レースは予想通り、ヘレナモルフォがハナを切ったのだが、ヴュルデバンダムミヤコマンハッタンゴールデンポケットも好スタートを決めたために、7枠14番だったヘレナモルフォはハナに立つまでにだいぶ脚を使わされていた。

それはやや気になったが、その後はすべて12秒台以上の緩いラップを刻み、マイペースの逃げに持ち込んだ。先頭で直線に入り、2番手以下の馬たちが伸び悩むのを見た時には正直「これはいただいたな」と思ったのだが……。

外から他馬が止まって見えるような末脚でオメガハートランドが飛んできて、馬場の内目からメイショウスザンナが割って伸びてきてもまだ、ヘレナモルフォが粘れるものと信じていた。先行馬が粘り、②&③着に後方勢が突っ込んでくるのはフラワーCのパターンのひとつだからだ。それが、最後の最後でサンキューアスクにも交わされた時に、僕の馬券は散った

上位馬の位置取りを見ると、①着オメガハートランド11-11-11-8、②着メイショウスザンナ8-8-6-5、③着サンキューアスク15-15-14-13である。

過去のフラワーCを振り返っても、4コーナー5番手以下の馬が上位を独占したことは第1回(87年)以降で初めて。さらに、例年ならば好走の少ない前走東京出走馬がワンツーを決めることとなった。

ではなぜ、例年の傾向をすべて覆すような結果になったのだろうか?

まず例年と大きく違ったことを探すと、勝ちタイムに目が移る。今回の勝ちタイムは1分53秒3。過去10年の勝ちタイムを見ると、もっとも遅かった04年でも1分50秒9である。実に今回はそれよりも2秒4も遅いのだ。

では、タイムが遅かったことが要因なのだろうか? そこで、さらに第1回(87年)以降のフラワーCを調べてみると、1分53秒以上で決着したことが3回あった。92年は勝ちタイム1分54秒7(勝ち馬ブランドアート)、95年は勝ちタイム1分54秒2(勝ち馬イブキニュースター)、99年は1分53秒7(勝ち馬サヤカ)である。

そして、この3レースに共通しているのは不良馬場で行われていたこと。ところが、この3レースでも、後方勢が上位を占めていたかというとそんなことはなく、むしろ先行勢が上位に来ている。

それら3レースと今回のレースとどこが違うのかというと、それら3レースは、レースの後半に13秒以上のラップが2ハロン続く箇所があるのだ。つまり、先行勢もバテているが、後ろの馬たちもバテてしまって差を詰めることができないでいる状況だろう。

ところが、今回のラップを見ると、3~5F目にかけて12秒8、13秒0、12秒9とほぼ13秒前後のラップが続き、最後の3Fが12秒3、12秒3、12秒9となっている。マイペースに持ち込んだと思われたヘレナモルフォの逃げだが、後方で待機する馬にとって、脚を溜められる展開になってしまったのではないだろうか。

コース形態、雨による馬場の悪化、例年の傾向、すべてがハマったと思っても、まったく逆とも思える結果をつきつけられる。改めて、競馬は難しいと思わされた一戦だった。