現状を打破するには自分から動くことが大事!?
文/編集部(W)、写真/米山邦雄
2月の
ダイヤモンドSでは単勝190.0倍で15番人気の
ケイアイドウソジンが逃げ切り勝ちを収め、5戦連続
ふた桁着順からガラリ一変して
単勝万馬券を演出したが、今度は
ネコパンチの番だった。
ネコパンチの近6走は
④⑥⑩⑭⑪⑮着で、近4走の着差を見ると1秒5、3秒7、5秒1、2秒1。14頭立ての12番人気、単勝167.1倍という低評価に甘んじたのもやむを得ない感じだが、
ウインバリアシオン、
ルーラーシップという人気馬2頭の追撃を振り切って3馬身半差をつけたのだから、
内容は超がつく人気薄とは思えないほどの快走である。
ケイアイドウソジンが逃げ切りを決めた
ダイヤモンドSのラップを見ると、
12.9-
12.0-
12.7-
13.0-
12.9-
13.2-
13.1-
13.9-
13.8-
13.7-
13.6-
13.2-
12.2-
11.4-
11.2-
11.5-
12.5で、中盤に
13秒台のラップが7つも刻まれていて、超スローペースによって有力馬が脚を余した格好だった。
一方、
日経賞の
ネコパンチのラップを見ると、
7.0-
11.7-
12.3-
12.0-
12.0-
12.8-
13.1-
12.9-
12.9-
12.9-
12.5-
12.3-
13.0で、中盤に
13秒台のラップはひとつしかない。重馬場の中、これだけ12秒台のラップを刻んでいるのだから、
ケイアイドウソジンの
ダイヤモンドSとは異なる形での逃げ切りだったことがわかる。
大逃げの形になったのは、
ネコパンチが暴走したわけではなく、2番手の
ケイアイドウソジン以下のペースが遅すぎただけだろう。
ネコパンチがOP初勝利を挙げたのは昨夏の
みなみ北海道S(札幌芝2600m)だったが、そのラップはというと、
12.6-
11.9-
12.8-
12.2-
11.9-
12.6-
12.8-
12.3-
12.3-
12.8-
12.4-
12.1-
13.0。この時は中団追走から早めに動いての押し切り勝ちだったが、今回の
日経賞と同じように淀みないペースで流れていた。
みなみ北海道Sと
日経賞の結果から言えば、
ネコパンチがもっとも力を発揮できる条件というのは
「道中でペースが緩まない時計と上がりのかかる芝の長距離戦」と推察できる。
上がりがかかるというのは、この
日経賞が芝45戦目だった
ネコパンチだが、メンバー中最速の上がりを一度も使ったことがないように、決め手勝負だと分が悪いから。事実、
ネコパンチが計時した上がりは
日経賞が
37秒8、
みなみ北海道Sが
37秒3とダート並みにかかっていた。
ネコパンチが決め手勝負だと分が悪いことは、騎乗経験のあった
江田照男騎手も把握していたはず。
ケイアイドウソジンがハナを切ってスローペースになってしまうと、
ダイヤモンドS(⑮着)のような結果にもなりかねない。だからこそ今回は、
ケイアイドウソジンにハナを譲らず、スタートから押してハナを主張したのではないだろうか。
ネコパンチが勝利を掴むことができたのは、2番手の
ケイアイドウソジン以下がスローペースの団子状態で動くに動けない形となり、ライバル勢のスパートが遅れたことも無関係ではないはず。
だが、時計のかかる芝で自ら得意の展開に持ち込んだからこそ、
最高の結果が得られたのだとも思う。
現状を打破するには自分から動くことが大事ということか。
江田照男騎手はゴール板を通過したあとに右手でガッツポーズをしていたが、
会心の騎乗だったのだろう。
江田照男騎手と言えば、
98年日経賞①着の
テンジンショウグン(単勝355.7倍の12番人気)や
00年スプリンターズS①着の
ダイタクヤマト(単勝257.5倍の16番人気)などがパッと思い浮かぶが、
大穴男の健在ぶりをまざまざと見せつけられた感じである。
01年有馬記念②着の
アメリカンボス(単勝116.9倍の13番人気)も
江田照男騎手が騎乗していたし、自戒の念を込めて言えば、中山芝重賞での
江田照男騎手は
5馬身増しくらいで考えておいたほうが良さそうだ。
一方、単勝1.4倍の断然1番人気に推された
ルーラーシップは勝負所で早めに動いていったが、
ネコパンチを捕え切れず、
ウインバリアシオンにも交わされて③着に敗れた。連外となった次走は
[5.0.0.1]なので、次は期待できそうだが、実力馬なのに連勝できないのが何とももどかしい。
ウインバリアシオンはメンバー中最速の上がり(35秒7)を使って追い込み②着。昨年の
青葉賞を制して以降は
勝ち星を挙げられずにいるが、休み明けをひと叩きされて8kg絞れ、さすがの脚を見せた。次走に向けて良い内容だったのではないだろうか。