逆転の可能性を感じさせる、ヒストリカルの“ありえない”末脚
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
毎日杯はトライアルではないが、
皐月賞前に開催される最後の重賞ということもあって、
“東上最終便”などといわれ、春の3歳G1に向けて重要な位置を占めている。
実際、90年以降では
タイキフォーチュン、
テイエムオペラオー、
クロフネ、
キングカメハメハ、1800mになってからは
ディープスカイ、
ダノンシャンティがこのレースを制して東へ向かう
最終切符をゲットし、後のG1勝ちに繋げている。
そんな理由もあって、今年の
毎日杯は個人的にかなり注目していたが、オッズを見て少し驚いた。2歳時に
野路菊S①着、
デイリー杯2歳S②着の実績を残し、前走の
アーリントンCで1番人気(⑨着)に推された
ダローネガが、6番人気にとどまっていたからだ。
今年のクラシックの前哨戦は、2歳時の活躍馬が苦戦するケースがしばしば見受けられるが、このレースも例外ではなく、
ダローネガは⑧着に敗れた。勝ったのは1番人気で、2歳時には
新馬戦①着、
エリカ賞⑤着と、平凡な成績にとどまっていた
ヒストリカルだった。
レースでは、
ヒストリカルはスタートから少し仕掛けて中団やや後方につけたが、直線入り口で完全に前が壁になり、先に抜け出した
マウントシャスタに大きく差をつけられる。しかし、大外に持ち出してから弾けるように伸びて、ゴール寸前で前を一気に交わした。
ヒストリカルは09年の
天皇賞・秋、
マイルCSを連勝した
カンパニーの半弟。古馬になってからは先行策をとることもあった
カンパニーも、3歳春の時点では鋭い末脚を武器に
ベンジャミンS①着、
ラジオたんぱ賞②着などの実績を残しており、現時点では
兄譲りの末脚を発揮しての初重賞制覇だったといえそうだ。
本来なら
きさらぎ賞の時点で書いておくべきだった(
きさらぎ賞の速攻レースインプレッションを書いたのも自分でした)のだが、今回の
毎日杯を制した
ヒストリカルが、
きさらぎ賞で見せた
上がり32秒8という末脚は、3歳としては
“ありえない”ものだった。
というのも、90年以降、3歳春(1~6月)に開催された芝重賞で、32秒台の上がりを記録したのは延べ3頭のみ。
きさらぎ賞の
ヒストリカルと、10年の
ダービーでワンツーした2頭(①着
エイシンフラッシュが32秒7、②着
ローズキングダムが32秒9)で、
G1を除くとヒストリカルのみだった。
今回の
ヒストリカルは、
重馬場ながら上がりは
メンバー1位の35秒4を記録している。前述したように決してスムーズなレースではなかっただけに、スムーズだったらもっと楽に突き放していた可能性はあるだろう。
一方、②着の
マウントシャスタも賞金を加算し、最終切符を得た1頭。全兄の
ボレアスはこのレースで⑫着に敗れ、後にダート路線で活躍している。今回は時計のかかる馬場が味方した可能性はあるが、それだけに今の中山は合う可能性があるのではないだろうか。
さて、このレースが終わり、皐月賞出走馬があらかた見えてきたが、今年は
ワールドエース、
グランデッツァなどの
トライアル勝ち馬が中心になる感じだろうか。
今回
ヒストリカルが重賞を制したことで、同時にそれを
きさらぎ賞で寄せつけずに②着に下した(1馬身半差)
ワールドエースの評価も上がったことは間違いないだろう。
毎日杯は
“東上最終便”とは言われているが、90年以降で
毎日杯→
皐月賞を連勝したのは
テイエムオペラオーのみ。芝1800mに短縮されて以降も、2頭の
NHKマイルC勝ち馬を出しており、
ヒストリカルの末脚を見ても、東京でこそ、という印象も受ける。
ただ、前述したように、
ヒストリカルは3歳になってから台頭してきた馬で、この
成長力は侮れないものがある。もし
ヒストリカルが
皐月賞に向かうとしたら、ペースや馬場など、不確定要素の多い中山なだけに、
逆転の可能性も十分に残されているのではないだろうか?