“平常心で”レースをすることの大切さを示したショウナンマイティの勝利
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也
この日の未明、自分は記事を作りながらドバイ国際競走のすべてのレースを見ていたが、今年の日本馬は残念な結果に終わってしまった。
改めて言うまでもないことだが、
慣れない環境でレースをするということは、馬にとっても
大きな負担となる。ある調教師の方に聞いたが、騎手や調教師などの陣営にとって、海外遠征でもっとも重要な仕事は、
いかに日本と同じ状態で“平常心で”レースをさせるか、とのことだった。
人間でも大舞台で平常心を失わずに結果を残す、いわゆる
プレッシャーに強い人間がいる一方で、なかなか結果を残せない、
プレッシャーに弱い人間もいる。人間でさえそうなのだから、ものを言わない馬を
“平常心に”保つことがいかに難しいか、想像できるだろう。
今年の
大阪杯は
12頭立ての少頭数で、
確たる逃げ馬も不在といえる状況だった。普段のレースとは違う面が多い状況だったといえる。
実際、レースでは2番人気の
トーセンジョーダンが1コーナーを回るところでまさかの逃げを打ち、
1000m通過が1分5秒2と、
稍重の馬場を考えてもかなり
スローペースとなった。
そんなペースの中、
ショウナンマイティはいつも通り
“平常心で”最後方に位置して、4コーナーを回る時は
12番手のシンガリにいた。そこから馬場の良い大外を通って11頭を交わし、鞍上の
浜中騎手が早くもガッツポーズをする中でゴールし、
初重賞制覇を飾った。
これだけのスローペースだったのだから、
浜中騎手も当然気づいていたと思われる。それでも
ショウナンマイティの末脚を信じて直線に入るまでジッとしていた、同騎手の
ファインプレーだったといえるのではないだろうか。
一般的に、
多頭数の方がレースのペースが速くなると言われている。追い込み一手の
ショウナンマイティも当然
多頭数が得意かと思いきや、まったく逆で、
新馬戦こそ16頭立てで①着だったが、それ以降で
馬券圏内に入ったレースはすべて13頭立て以下。
少頭数でこそ結果を残している。
自分などは、
「少頭数で結果を残しているので気にはなるが、スローが予想される今回は、追い込み一手で重賞を勝っていない馬が勝ち切るまではいかないだろう」と考えてしまい、WIN5の買い目でも外してしまった。
個人的には、今後スローペースが予想されるときや、少頭数となったレースに
ショウナンマイティが出走したら、常に
“平常心で”ショウナンマイティを信頼できるかが問われることになりそうな気がしています(苦笑)。
②着に入った
フェデラリストも、馬場の差もあってか勝ち馬の末脚には抵抗できなかったが、好位から
“平常心の”競馬をしたといえる。今回は錚々たるG1馬たちに先着しており、今後はG1戦線で活躍が期待できる1頭といえるだろう。
“平常心で”レースができなかったのは③着の
トーセンジョーダン。これまで好位~中団からの競馬で結果を残してきた馬で、いつもと違うレースを強いられてしまう形となった。
それでも、直線で一旦は道中で2番手にいた
コスモファントムに交わされながら、そこから差し返したあたりで、G1馬の力は示した。
天皇賞秋春連覇に向けて、なかなかの内容だったといえる。
芝2000mで開催される
大阪杯は、
天皇賞・春のステップとしてだけでなく、
安田記念や
宝塚記念を目標とする馬も出走してきて、近年は特に
レベルが高くなる傾向にある。
その証拠に、06年以降の
大阪杯勝ち馬6頭のうち、5頭(06年
カンパニー、07年
メイショウサムソン、08年
ダイワスカーレット、09年
ドリームジャーニー、11年
ヒルノダムール)はこのレースの後にG1を制している。
また、この5頭のその後の戦績を見ると、
マイルCSを勝った
カンパニーから、
天皇賞・春を制した
ヒルノダムールまで、
多彩な距離で活躍していることも分かる。
ショウナンマイティが今後どんな路線を歩むかはまだ分からないが、今回と同じ阪神芝の
宝塚記念も面白そうだし、父は
マンハッタンカフェということを考えると、
天皇賞・春も悪くなさそう。
いずれにしても、
大阪杯を制したことで、賞金面も含めて
ショウナンマイティの前途が大きく開けたことは間違いのないところだろう。
フェデラリスト、
トーセンジョーダンを含め、今回の上位馬の今後に注目したい。