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カレンブラックヒルの今後に期待が膨らむのも無理はない
文/編集部(W)、写真/米山邦雄


出走馬16頭のうち、すでに芝OPで連対実績のあった馬はセイクレットレーヴ(2番人気)、オリービン(3番人気)、ブライトライン(4番人気)、サドンストーム(5番人気)、レオンビスティー(6番人気)、マイネルアトラクト(7番人気)。

順序良く2~7番人気で並んでいたが、その6頭を押し退けて1番人気に推されたのが、今回がキャリア3戦目にして重賞初挑戦のカレンブラックヒルだった。

最終オッズを見ても、セイクレットレーヴが5.0倍、オリービンが5.4倍、ブライトラインが6.1倍と、2~4番人気が接近していたのに対し、カレンブラックヒルは3.7倍でやや抜けた感もあった。

デビューから芝1600mでスピードを活かして2連勝。確かに底を見せていない点は魅力的に映ったものの、勝ち時計は新馬戦重馬場で1分35秒3、こぶし賞稍重で1分35秒8で、良馬場で時計が速くなった時にどこまで対応できるかは未知数だったから、少し人気になりすぎかなと思っていた。

ところが、結果はその人気にきっちりと応え、カレンブラックヒルが②着以下に2馬身半差をつけて完勝。内枠を利して好位のインに収まり、直線で逃げていたバンザイを交わして先頭に立つと、後続を突き放して先頭でゴールを駆け抜けたのである。

先行していたバンザイ(⑨着)、ヴィンテージイヤー(⑩着)、フェスティヴタロー(⑪着)、チャンピオンヤマト(⑯着)が揃って掲示板外に失速し、芝OPで連対実績があって上位人気に推されていたセイクレットレーヴ(②着)、ブライトライン(③着)、オリービン(④着)、サドンストーム(⑤着)が差し込んだ展開で、その勝ちっぷり。

勝ち時計1分33秒2は、中山芝1600mで行われるようになった00年以降、02年の1分32秒1(①着タイキリオン)、10年の1分32秒9(①着サンライズプリンス)に次ぐ3位という好時計であり、時計面の不安もまったくの杞憂にすぎなかった。

初の関東遠征や坂のあるコースをあっさりとクリアした点なども含めれば、今回のカレンブラックヒルの勝利はかなり中身の濃いものだったと言えるのではないだろうか。

ニュージーランドTの歴史を振り返ると、勝ち馬にはニッポーテイオー(86年)、オグリキャップ(88年)、シンコウラブリイ(92年)、ヒシアマゾン(94年)、ファビラスラフイン(96年)、シーキングザパール(97年)、エルコンドルパサー(98年)、エイシンプレストン(00年)などがいて、のちにG1勝ちを挙げている馬が少なくない。

ただ、今年で30回目となるその歴史を紐解いてみても、デビューから無敗でニュージーランドTを制した馬はそれほど多くなく、上記したうちのファビラスラフインエルコンドルパサーの2頭しかいないのだ。

ファビラスラフインNHKマイルCこそハイペースに巻き込まれて⑭着と大敗してしまったが、同年秋には秋華賞を制し、3歳牝馬として果敢に挑んだジャパンCで強力な外国勢に割って入り、シングスピールとハナ差の②着と健闘していた。

エルコンドルパサーNHKマイルCで5連勝を飾り、同年秋にはジャパンCを制し、翌年にはヨーロッパに長期遠征してサンクルー大賞①着、凱旋門賞②着などと好走した。日本が誇る歴史的名馬の1頭であることは、競馬ファンの間では周知の事実だろう。

カレンブラックヒルは記録上でその2頭と比肩したことになるだから、今後に期待が膨らむのも無理はない

ダイワメジャーは500kgを超える雄大な馬体で、先行押し切りの競馬を得意としていた。カレンブラックヒルは470kg前後の馬体で、父よりもずっと小柄な馬体だが、先行押し切りの形は同じ(前向きさと卓越したスピードがあるため、結果的に前で競馬をする形になってしまっている感じではあるが)。

体型は違うけど競馬の形はよく似ている2頭。東京芝1600mは、父ダイワメジャー安田記念を制した舞台だが、息子カレンブラックヒルNHKマイルC無傷の4連勝を飾れるのか。春のG1シリーズを満喫する上で、またひとつ興味が増えたことは喜ばしい限り。