今年もまた重賞未勝利馬が優勝した
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
阪神牝馬Sが
ヴィクトリアマイルの前哨戦的位置付けとして、
春の芝1400m戦になったのは06年から。その最初の年こそG1馬の
ラインクラフトが制したが、翌年以降は
重賞未勝利馬が勝つケースが目立っている。
07&08年は昇級戦だった
ジョリーダンスと
エイジアンウインズが制し、09年は再び
ジョリーダンスが優勝したものの、10年、11年は重賞未勝利だった
アイアムカミノマゴと
カレンチャンが初タイトルを手に入れている。重賞を勝ったことがなかった馬が6年中4年で優勝していたということだ。
「このレースはトライアルなんだ。G1馬のアパパネやマルセリーナ、フミノイマージンやレディアルバローザなどは、ヴィクトリアマイルが最大目標だろうから、その実績に惑わされちゃいけないんだ」。自分自身で洗脳されないように、レース前はそんなことを念仏のように唱えていた。
そして、①着でゴールしたのが
重賞未勝利馬だったから、その考えはあながち間違っていなかったのだろうが………正解が
クィーンズバーンだったとは恐れ入りました。
クィーンズバーンについては、レース前、一応は検討していた。
京都牝馬Sでは穴ぐさ💨になっていて⑤着と踏ん張っていたし、芝ではあまり大崩れをしていない先行型だったからだ。気にはなっていたのだが、その戦績を丹念に調べたことで、
ドツボにハマッてしまった。
クィーンズバーンは
京都牝馬Sの後、自己条件の
うずしおS(阪神芝1400m)に出走した。そこでは逃げた
カトルズリップスを捕まえきれずに③着に敗れている。その
カトルズリップスが今回の
阪神牝馬Sに出走していた。
カトルズリップスは悪くないんじゃないか?と思ったわけだが、同馬は①着の次走成績が良くなかった(⑤⑧⑥着)。2戦続けての③着以内を記録したのも前走が初めてだったから、
連続好走を継続できるのか、気になったのだ。
そこで他の馬を検討したら、
カトルズリップスが②着となった2走前の
初音S(東京芝1600m)を制していたのが
チャームポットだった。
チャームポットは
カトルズリップスとは対照的に
連続好走が多く、これまでに2戦連続での③着以内を7回も記録していた。
タマモホットプレイや
タマモナイスプレイの全妹だから、重賞で好戦できる力もあるんじゃないか?と考えたわけだ。
結果的に
チャームポットは⑥着だった。0秒3差という着差を考えれば悪くなかったと思われるが、
三段論法で前にいるとは思っていなかった
クィーンズバーンが①着になったのだから、理詰めで攻めたのが間違いだったということだろう。
「気分良く行けた時に最大限に力を発揮する馬がいる」ということも再認識させられた。
勝ち時計の
1分21秒9は、阪神芝1400mで行われた過去6年と比べて
いちばん遅い。過去6年での最速タイムは10年の
1分20秒2で、いちばん遅かったのは08年と09年の
1分21秒4だった。このタイムで逃げ切り勝ちを収めたのだから、鞍上の
藤岡佑騎手が
絶妙のペースを作り出したとも言えるだろう。
藤岡佑騎手は、デビュー8年目だった昨年がJRA重賞未勝利だった。2年目の05年から毎年重賞を勝っていたから「どうしたんだろう?」と思っていたが、今年は一転して奮起している。
平安S(
ヒラボクキング)、
オーシャンS(
ワンカラット)とすでに重賞2勝を挙げ、その他にも
オールザットジャズに騎乗して
中山牝馬Sで②着、
ダービー卿CTでも
オセアニアボスを②着に導いていた。
ここまでのレース名と馬名を見て気づいた人もいると思うが、いずれも
人気薄の馬だ。
ヒラボクキングは
10番人気、
ワンカラットは
9番人気、
オールザットジャズは
7番人気、
オセアニアボスは
10番人気。そして、今回の
クィーンズバーンは
11番人気だった。
好走例だけを思い出したからかもしれないが、今年は実に
思い切りが良いように感じる。今回のレースにしても、
クィーンズバーン自身が逃げた時に持ち味が出やすいタイプだったようだが、外枠から迷いなく逃げの手に出ていた。
気合い勝ちの面もあったように思う。
今回の勝利で、
藤岡佑騎手はJRA重賞が
21勝目となった。この調子でいけば
G1タイトルも近いだろうと思わせられる。芝でもダートでも、牡馬でも牝馬でも、差なくタイトルを獲っているジョッキーだから、今春の
G1戦線においても、常に見逃せない存在となってくるのではないだろうか。
G1馬の
マルセリーナと
アパパネは②着と⑦着という結果で明暗が分かれてしまったが、その馬体重は、
アパパネが
自己最多の504kgだったのに対して、
マルセリーナは
12kg減の446kgで、これは自己最少体重だった。果たして、1ヶ月後の
ヴィクトリアマイルにはどんな体重で出てくるだろうか。
今年の
桜花賞の結果を見ても、
前哨戦でどんな負け方をするのが本当に良い負け方なのか、
見分けることの難しさを実感したので、古牝馬たちの戦いについても、レース内容などをよく吟味した上で本番に臨みたいものだ。