番組変更によって、アンタレスSは秋に繋がるレースとなる?
文/編集部(T)、写真/森鷹史
今年から
アンタレスSと
マイラーズCは開催時期を入れ替え、阪神最終週に
アンタレスS、京都開幕週に
マイラーズCが開催されることとなった。
毎年コロコロと番組に変更を加える
JRAを批判する声もあるが、個人的にはこの変更は珍しく
ヒットではないか、と考えている。
変更の理由については、いろいろなものが想像(妄想?)できる。
まず、
京都ダ1800mの重賞が多かった(昨年は
平安S、
アンタレスS、
みやこSが開催された。また、ダ1900mでは
東海Sが開催されている)こと。
確かに、このコースの重賞を4勝した
スマートボーイなどのような活躍馬を生み出すという面はある。ただ、せっかくいろいろな競馬場やコースがあるのだから、
同じ条件の重賞が多すぎるのはもったいないとも思う。
それ以外に、それぞれ開催時期を変えた
アンタレスSと
マイラーズCの条件を見ると、ある共通点に気づく。それによって、
この2レースは秋のG1の前哨戦的な存在になるのではないか。それを見越しての開催週の交換なのではないか、とさえ思えてくる。
要するに、
阪神ダ1800mのアンタレスSはジャパンCダート、
京都芝1600mのマイラーズCはマイルCSと同じ条件となるからだ。
昨年までに16回開催された
アンタレスSの勝ち馬のうち、このレースを勝った後にG1(Jpn1)を制したのは04年の
タイムパラドックスのみと、あまり多くない。
しかし、コースが変わった今年の
アンタレスSを制した
ゴルトブリッツが、今年の
ジャパンCダートで好走する可能性は、これまでの
アンタレスS勝ち馬より高いのは間違いのないところだろう。
昨年、京都で開催された
アンタレスSを制した
ゴルトブリッツは、場所を変えての連覇となった。
2コーナーでハナに立った
アイファーソングが作ったペースは、
1000m通過が60秒5と、昨年このコースで開催された
マーチS(勝ち馬
テスタマッタ、馬場状態はこのレースと同じ
稍重)に比べて、
1秒1も速かった。
このペースによって追走に脚を使わされ、後続は直線に入っても先頭を行く
アイファーソングをなかなか捕まえられない。3コーナーで早めにマクって行った
ニホンピロアワーズも直線で失速する。
そんな中、道中は中団馬群の中でジッとしていた
ゴルトブリッツが外から一気に差を詰めて前を交わし、②着
アイファーソングを2馬身突き放して連覇のゴールを切った。
③着に入った
シルクシュナイダーの
福永騎手は、レース後に
「この展開なら、もっと直線勝負に徹すれば良かった」といった趣旨のコメントをしたと伝えられている。
そのような展開で、
勝ちに行く競馬をして差し切ったゴルトブリッツのレースぶりは、
見た目以上に強いもの(見た目も十分強かったのですが)だったといえるだろう。
ちなみに、
ゴルトブリッツは昨年以降のG1(Jpn1)には出走していないが、昨年の
アンタレスSでは②着の
ワンダーアキュートに0秒3差をつけて完勝を飾っている。
ワンダーアキュートはその後に
ジャパンCダート②着、
東京大賞典で②着と、G1(Jpn1)でも好レースをしている。これを物差しとするならば、
ゴルトブリッツも相当のレベルにあると推測できるだろう。
その血統に目を向けると、父は
スペシャルウィーク、母には
ディープインパクトの半姉
レディブロンドの名前がある。近親に芝で活躍した馬を多く持つ
ゴルトブリッツがダートで活躍するというのは、血統の面白いところか。
母
レディブロンドは脚部不安などもあって、ようやくデビューにこぎ着けたのがなんと5歳の6月。それから一気に5連勝を飾り、
スプリンターズS④着を最後に引退している
ゴルトブリッツは現在5歳なので、
母はまだデビューさえしていない時期だ。
自分は子どもの頃、先生に
「健康に生んでもらったことをお母さんに感謝しなさい」とよく言われていた。
レディブロンド母さんが
「私の分も健康で走りなさい」と言ってはいないと思うが、
ゴルトブリッツにもまだまだ成長の余地はあるはず。
現在のダート路線には、
トランセンド、
スマートファルコン、
エスポワールシチーなど、錚々たるメンバーが揃っているが、
ゴルトブリッツは、
それらG1馬に先着したことはまだない。
それら
“ダート路線のヌシ”との再対決がいつになるかはまだ分からないが、いずれ来るその時に向けて、どこまで成長できるか。母が成しえなかったG1勝ちに向けて、ポイントはそこにありそうだ。