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「前哨戦」は先行馬にとってフォローの風となるのだろう
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也


86年以降の中央競馬で1番人気の単勝オッズが6.0倍以上だったこと19回だけ。今年のマイラーズCは1番人気のリアルインパクトの単勝が6.0倍で、86年以降では20回目となる珍しいレースになった。

過去19回での1番人気馬の成績を振り返ると、①着となったのは09年ダービー卿CTタケミカヅチだけで、②着も1頭、③着は2頭。馬券に絡んだ馬は4頭しかいなかった([1.1.2.15])。

1番人気の信頼度がかなり低いことが想像でき、実際に今回のリアルインパクト最下位(⑱着)に敗れてしまったわけだが、上位人気馬のすべてが崩れたかと言えばそんなことはなく、優勝したシルポート3番人気に支持されていた。

シルポートは前日売り時点から人気を集め(前日の17時30分時点では4番人気)、同じ西園厩舎コスモセンサーも前日売り時点では3番人気だったから(最終的には7番人気)、早くから先行馬に目を付けていた人が多かったのだろう。

2ヶ月ぶりの開催となった京都競馬場の芝は状態がかなり良さそうで、土曜日から先行馬天国になっていた。稍重馬場になった日曜日はいくらか差し馬も台頭していたが、古馬のOPクラスではそうもいかず、マイラーズC先行した馬と内を回った馬の決着になった。各馬の実績よりも馬場状態や脚質を重視した人たちにとっては、さぞかし簡単な馬券だったことだろう。

優勝したシルポートは昨年に続く連覇で、競馬場が阪神から京都に変わっても、同じ8枠17番という枠順で逃げ切り勝ちを収めた。

昨年は、連続開催最終週の馬場で斤量57kgを背負って1分32秒3。今回は開幕週で、斤量56kg1分33秒2。馬場が稍重だったから、良馬場だった昨年と直接比較をすべきではないのかもしれないが、それでも、昨年より1秒近く遅い走破時計を見ると、今年の方が楽だったんだろうなあと想像してしまう。やはり「前哨戦」という立ち位置は、先行馬にとってフォローの風となるのだろう。

同じく先行したコスモセンサーが③着に入り、②着・ダノンシャーク、④着・ヤマカツハクリュウ、⑤着・レッドデイヴィスの3頭は差して掲示板に載ったが、いずれも内を突いた馬だった。

来年以降もマイラーズCが開幕週の京都競馬場で開催されるのなら、同様の形が続くのだろう。先行した馬と内を回った馬以外は出番なし。………なんだかなあ、と思うのは私だけだろうか?

安田記念で逃げた馬が押し切った例は、88年のニッポーテイオーまでさかのぼり、4角2番手から制した馬も93年のヤマニンゼファーを最後に出ていない。そもそも、マイラーズCから安田記念に転戦して優勝した馬が94年のノースフライトが最後になっていて、その年のマイラーズC中京芝1700mだったから、ほとんど直結しない間柄ではあるのだが……。京都競馬場に変更された今年、その傾向に変化は生じるだろうか?

今回のマイラーズCは特殊なレースだったと言えるだろうから、敗れた馬の中から本番の安田記念で巻き返す馬が出てきても不思議ではない。ただ、G1馬の3頭(エイシンアポロングランプリボスリアルインパクト)がいずれもふた桁着順に敗れたことは、かなり気になる。

86年以降の安田記念では、前走が⑩着以下だった馬は勝っていない。⑥着以下から巻き返して優勝した馬も04年のツルマルボーイ(前走が大阪杯⑥着)だけで、前走が⑥着以下の馬は[1.7.5.122]という成績なのだ。

安田賞という名称から安田記念に変更された1958年以降の勝ち馬も調べてみたが、前走着順がもっとも悪いのが⑨着だった。前走が⑩着以下で安田記念を制した馬は、まだ1頭もいないわけだ。一変して戴冠するのが難しいレースと言えるが、果たしてこれを覆すことはできるのだろうか。

多士済々のメンバーが集い、そのことは割れに割れた単勝オッズを見ても明らかだったが、このレース結果が安田記念へどうつながるのか。はたまた、まったくつながらないのか。来年以降への布石としても、今回の出走馬の次走以降には注目しておくべきだと思われる。