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サダムパテックの勝因を仮説を立てて検証してみた
文/編集部(M)、写真/川井博


以前の京王杯SCは、テレグノシスが3年連続で馬券に絡むなど、マイラーの活躍が目立つレースだった。ただ、近年はそんなタイプが差し届かないことが多く、レースの傾向に変化が訪れたと感じていた。

4年前にスーパーホーネットが優勝した時は、レースの上がり3Fが34秒6だった。それ以前の4年も34秒6~34秒9で、それなりにかかっていたのだが、近3年は33秒8~34秒2。上がりが速くなり、マイラーよりもスピードが優ったタイプが制することが多くなっていた。

今年はどうだったかと言うと、レースの上がり3Fは34秒2だった。これを見れば近3年と同じで、②&③着には1400m以下で好走していた馬(レオプライム&インプレスウィナー)が入ったのだから、やはりマイラーよりもスピードが優ったタイプに向いたレースだったと言えそうだ。

ところがですよ。ご存知のように優勝したサダムパテックは、1400m以下の距離が初めてだった。レース前に同馬のことを「マイラーよりもスピードが優ったタイプ」と言うことは、かなり難しかったと思う。

果たして、今回の結果、そしてサダムパテックについては、どう見るのが正しいのだろうか。いくつかの仮説を立てながら、検証してみたい。

仮説1上がり3Fは速いけど、実はマイラーに向いたレースだった

実際にレースを見ていた人にとっては、レースの上がり3Fが34秒2というのは、ちょっと信じられないのではないか。差し&追い込みの競馬だったから、上がりがもっとかかっていたと感じるのが普通だろう。

優勝したサダムパテックのこれまでの戦績を考えれば、「時計以上に最後はスタミナを求められたレースだった」と言いたくなる感じがする。とすれば、実はマイラーに向いたレースだったとしても良さそうだが……。

でも、そうだとしたら、マイル重賞で活躍してきたグランプリボスオセアニアボスがもっと走れていてもいいように思う(グランプリボスは⑦着、オセアニアボスは⑬着だった)。

また、前述したように②&③着には1500m以上で好走したことのない馬が入ったのだから、やはりこの仮説を認めるのは無理があるだろう。

仮説2サダムパテックは実はマイラーよりもスピードが優ったタイプだった

サダムパテックは1400mが初めてだったから、レース前に「この距離が向く」とは言い切れなかったと思うが、その可能性を感じさせる事象がまったくないわけではなかった。そのひとつが血統だ。

サダムパテックは短距離型を多く輩出しているフジキセキの産駒で、母のサマーナイトシティエリシオの産駒ながら短距離型だった。母は中央で6連対を記録しているが、それはすべて1400m以下。母の血が強く出ていると考えれば、1400mで新味が出る可能性も……と言えたのかもしれない。

終わってからなら何とでも言える、という話ではありますが(…汗)、この仮説は正しい可能性がありそうだ。サダムパテックは、今回、たまたまハマッた、とは考えない方がいいのではないか。

仮説3西園厩舎の馬はマイル以下でこそ注目

西園厩舎の馬は、このレースの前までにJRAの平地重賞で15勝を挙げていて、そのうち12勝1600m以下だった。1800m以上では3勝がマークされているが、それらはすべて2~3歳限定戦でのもの。

シルポートコスモセンサーエーシンフォワードヘッドライナーなど、古馬になってからは特に活躍がマイル以下に寄っていく傾向が見られ、それはサダムパテックも例外ではなかったのだろう。

ちなみに、西園厩舎の馬は、芝1400m以下の重賞で前走から距離を短縮されて出走した時が[5.4.1.20](勝率16.7%、連対率30.0%、複勝率33.3%)だった。これはレース後に調べて気づいたことだったが……。マイル以下の距離に出てくる西園厩舎の馬は、しつこく追いかけていくべきだったのかもしれない。

仮説4ウィリアムズ騎手は上手すぎる

もはやこれは仮説ではなく、単なる感想という感じですが(笑)、ウィリアムズ騎手は本当に上手いですよね。

今回の京王杯SCも、日曜日に行われたヴィクトリアマイルも、どちらもスローで流れそうだから、ウィリアムズ騎手先行ポジションにいるだろうと予想を立てていた。

ヴィクトリアマイルはまさにその形でドナウブルーを②着に導いたわけだが、京王杯SCは予想に反して速いペースで流れ、それを見越してか、サダムパテック中団で流れに乗っていた。ペースを判断してあのポジションにいたのか、1400mが初めてだったからあの位置取りになったのか、定かではないけれど、結局、ゴール前では連対圏に馬を持ってきているのだから恐れ入る。

ウィリアムズ騎手は上手すぎる。おそらくこれに異論がある人はいないでしょう。

仮説の1はさておき、2と3についても間違ってはいないのだろう。2~4が上手く噛み合ったからこそ、あれだけの快勝劇を演じられたのだとも思う。

サダムパテックはこれで一躍、安田記念の有力候補に躍り出たわけだが、果たして待望のG1制覇は成るだろうか。

フジキセキ産駒だから父の血統的にはマイルG1が問題になるとは思えないが、前述したように母は1400m以下で活躍した馬だけに、それはちょっと気になると言えば気になる。

近年の安田記念勝ち馬は、前走が1600m以上のことが多く、06年以降だと距離延長馬は[0.1.1.38]となっている。京王杯SCからの臨戦で安田記念を制すれば、05年のアサクサデンエン以来となるが……。

まあただ、それもこれも、ウィリアムズ騎手が再び騎乗するのなら、すべてが関係なくなっちゃいそうでもありますけどね(笑)。次走の鞍上は未定とのことで、果たしてその背中には誰が乗っているのだろうか。