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念願のG1制覇を果たした最大のポイントは横山典弘騎手の好騎乗
文/石田敏徳

2009年のウオッカ、2010年のブエナビスタ、そして昨年のアパパネと、最近は3年連続でG1牝馬が勝利を飾っているヴィクトリアマイル

今年の出走馬18頭のうち、G1ウイナーは2頭しか見当たらず、先の伝からすると勝つのはアパパネマルセリーナのどちらかということになるが、そこで「だけどなあ」と考え込んでしまった人は少なくなかったと思う。

三冠牝馬にして昨年の覇者、実績的には断然の存在といえるアパパネは、昨年のヴィクトリアマイル以降の着順が⑥⑭⑬⑦着「休み明けをひと叩きされるとガラリ一変するの法則」の通り、府中牝馬S⑭着大敗から鮮やかな変わり身をみせた昨年のエリザベス女王杯③着が唯一の好走で、母の父ソルトレイク(早熟タイプの種牡馬として有名)の血が徐々に表面化してきたような印象を拭えなかった。

一方のマルセリーナは昨年の桜花賞を最後に勝利の女神から見放されることすでに1年余り。牡馬相手の阪神Cで④着、今季の始動戦となった阪神牝馬Sでは②着に追い込み、一応の復調ムードは示していたものの、その阪神牝馬Sでは重賞未勝利のクィーンズバーンの逃げをつかまえきれなかったのだから、大威張りできるほどの上げ潮ムードではない。そもそもマルセリーナの場合、最近3年間の優勝馬に比べると“格下感”を否めないG1ウイナーだしなあ……。

というわけで結論を下しかねたまま、まずはパドックを見に行ったところ、2頭のG1ウイナーはともに「可もなく不可もなく」といった感じの気配。一番よく見えたのはビッシリと追い切られながら馬体を大幅に増やしてきた(プラス12キロ)ドナウブルーで、対して、人気上位馬のなかで「良く見えない」と映ったのは無茶苦茶イレ込んでいたオールザットジャズ(余りにもイレ込みが激しかったため、角居勝彦調教師厩務員さんと2人で手綱を曳いてパドックを周回、懸命に馬をなだめようとしていた)だった。

そんな見た目も踏まえて、最終的にはドナウブルーの頭固定の馬単で手広く流すという馬券を買ってみたら……裏! 大痛恨の裏目!! くそ~、55.1倍もついたんだから、馬連も押さえておくんだった。だけどG1の舞台では“ひと押し足りない”レースを繰り返してきたあのホエールキャプチャが、頭で来るイメージはどうしても湧かなかったんだよなあ~。

頂点の舞台で重ねてきた惜敗の連鎖に終止符を打ち、名うての善戦牝馬が念願のG1制覇を果たした最大のポイントは横山典弘騎手の好騎乗だった。

「デビュー当初に乗せてもらった頃(新馬、未勝利で騎乗)はスタートが遅い印象があった」というだが、この日は五分のスタートを決めて3番手のインという絶好のポジションを確保。平均ペースを刻んで逃げたクィーンズバーン、この2番手につけたドナウブルーを見遣りながら、スムーズな折り合いで流れに乗った。

そして直線、半ばからはドナウブルーホエールキャプチャの叩き合いとなるかと思いきや、初経験の左回りコースが影響したのか、ドナウブルーは大きく外に斜行(横山典弘騎手によると「相手はあの馬だな、と思ったら、ドンドン外に行ってしまったのでどうしたのかと思った」とのこと)。

それでも渋太く伸びてマルセリーナ以下の追撃は抑え込んだのだからポテンシャルの高さは示したといえるものの、ざっと見積もって直線の半ばでは内から4、5頭目のあたりを走っていたのが、ゴール地点では10数頭以上外にまでヨレてしまったのだから、勝利に手が届くはずもない。

対して、鞍上のゴーサインに応えてハミを取り、まっすぐに伸びたホエールキャプチャは、遠く外へ離れていったドナウブルーを横目に、念願のG1のVゴールへ飛び込んだ。

一方、G1ウイナーの2頭は「本当はもう一列前で流れに乗りたかったんだけど、最内がボコボコしていてつんのめるようなスタートになってしまったのが……。直線ではうまく前も開いて、よく伸びてくれたんですけどね」マルセリーナ(③着)の田辺騎手

また、⑤着に終わったアパパネ蛯名正義騎手は、「(序盤から中盤にかけて)ずっと馬群の中で揉まれこんでしまったからね。ただ、いい頃に比べるとトモの踏ん張りが今ひとつ物足りない。決して早熟とか、終わったとかいうわけじゃないよ」と、完調の回復を条件に巻き返しを予告していた。

それらに対し、「休み明けをひと叩きしてから、気配がグンと上向いていた」(田中清隆調教師)うえ、一番スムーズにレースを運んだホエールキャプチャに勝利の女神が微笑んだ今年のヴィクトリアマイル。しかしそれだけに、“傑出した力の違いを示した勝利”とまではいえないことも確かで、古牝馬戦線はしばらく、混戦模様に包まれて推移していくことになりそうだ。