兄たちと同じく、5歳を迎えて本格化したソリタリーキング
文/編集部(T)、写真/森鷹史
今年の
東海Sを制したのは
ソリタリーキング。半兄に
サカラート(父アフリート、
東海Sなど重賞4勝)、
ヴァーミリアン(父エルコンドルパサー、
ジャパンCダートなど重賞13勝)、
キングスエンブレム(父ウォーエンブレム、
シリウスSの重賞1勝)を持つ良血馬(本馬の父はキングカメハメハ)で、これで兄3頭に続いての重賞勝ち馬となった。
競走馬はもちろん、人間の世界でも、兄弟(姉妹も含む)2人で大活躍したスポーツ選手はそれなりにいる。パッと思いつくところでは
マラソンの宗兄弟、
サッカーの三浦兄弟、
相撲の若貴兄弟、競馬なら
武兄弟、
藤岡兄弟や
デムーロ兄弟などだ(たとえが古いものもありますが)。
しかし、3兄弟となると少ない。ゴルフの
尾崎三兄弟や
宮里三兄妹、最近ならボクシングの
亀田三兄弟が思いつく程度だろうか。
スポーツは純粋な
実力の世界なので、兄弟が揃って大活躍することは非常に難しい。その母親が脚光を浴びることはあまりないが、自分は
「兄弟もそうだけど、その母親は本当に偉大だなあ」と思う。
一方、競走馬の世界では兄弟が人間に比べて多いということはあるが、
3頭以上が重賞勝ちとなると、やはり少ない。
さらに兄弟4頭JRA重賞勝ちとなると、90年以降では
母ビワハイジ(父サンデーサイレンスの
アドマイヤジャパン、父アグネスタキオンの
アドマイヤオーラ、父スペシャルウィークの
ブエナビスタ、父ディープインパクトの
ジョワドヴィーヴル)、
母ダンシングキイ(父トニービンの
エアダブリン、父サンデーサイレンスの
ダンスパートナー、
ダンスインザダーク、
ダンスインザムード)しかいない。
今回の
東海Sで、
ソリタリーキング兄弟の
母スカーレットレディも、そんな
“グレイト・マザー”の仲間入りを果たしたことになる。
競馬はブラッドスポーツということで、血統がクローズアップされやすいという面はあるが、人間と違って
父親が変わる可能性が高い(人間でもないわけではありませんが……)ので、特に父親が違っても活躍馬を出している母の偉大さが際立ってくる。
前述した
スカーレットレディ産駒や
ビワハイジ産駒の場合、重賞を勝った4兄弟ですべて父親が違う。
スカーレットレディ産駒はすべて
ミスプロ系、
ビワハイジ産駒は
サンデー系と、ある程度の共通点はあるが、それでも凄いことだと思う。
以前、
ダイワメジャーと
ダイワスカーレット兄妹が大活躍した07年に
「その母のスカーレットブーケを年度代表馬に」という意見が冗談交じりに語られたことがあった。
年度代表馬はともかく、JRAが
「繁殖牝馬の殿堂」を制定し、このように顕著な成績を残した繁殖牝馬を表彰してもいいのではないだろうか。
競馬はブラッドスポーツと言うからには、そういう施策があってもいい、と個人的には思う。
さて、
ソリタリーキング自身に話を移そう。前走の
ブリリアントSで初めてのOP勝ちを飾った同馬は、勢いに乗って次走のここで
初めての重賞勝ちを飾った。
ソリタリーキングは今年で5歳。以前なら
「キャリアとしてはそろそろ下り坂」と思われてもいい年齢だが、この兄弟には
それはまったく当てはまらない。
その証拠に、
スカーレットレディ産駒で重賞勝ちを果たした4頭の、
「2~4歳」、
「5歳以降」の重賞における成績を見ると、以下のようになる。
| 馬名 |
2~4歳 |
5歳~ |
| サカラート |
0.0.0.3 |
4.2.6.18 |
| ヴァーミリアン |
4.1.0.7 |
9.2.1.6 |
| キングスエンブレム |
0.0.0.1 |
1.2.0.6 |
| ソリタリーキング |
0.0.0.2 |
1.0.0.1 |
これを見ると、
この兄弟は5歳を迎えると強くなる傾向があることがわかる。
ヴァーミリアンのみ4歳以前から活躍しているように見えるが、同馬の初めてのG1(Jpn1)制覇は5歳1月の
川崎記念で、それからG1(Jpn1)9勝を積み上げており、やはり
本格化は5歳だったと言っても良さそう。
これを踏まえると、
ソリタリーキングはそろそろ本格化、全盛期はこれから、と予測できるだろう。
今回は
スマートファルコン、
トランセンド、
エスポワールシチーなどのG1馬は不在だったが、そろそろダート界も
世代交代があっておかしくない。
それら6~7歳の“王者”と、
ソリタリーキングや、熱発のために
東海Sは回避したが、今年の
アンタレスSを制した
ゴルトブリッツをはじめとする5歳勢との対決を、今から楽しみにしたい。